その後のレンゲ畑 | 続・阿蘇の国のアリス
その日、
車の中で目を覚ましたわたしは、
いつものようにフンをしました。

しかし、そのフンは、
バナナのようなフンではなく、
モンキーバナナのようなフンでした。

パパがわたしのごはんを忘れたからです。


それから、
おうちの周りを一周して、
旅に出るために
ふたたび車に戻ろうとした時...


それは起こりました。


若い雄ジカが
罠に掛かっていたのです。


クヤシカの亡骸があった、
あの美しいレンゲ畑でです。


「今からパパにいって、
罠をはずしてもらうから、
待ってて!」


「ボクはもうダメだ。
足が2本折れているんだ...」

「そんなこといわないで!」


気がつくとわたしは
おうちへと全力で走っていました。


やがてパパと一緒に戻ってくると...


雄ジカの姿は忽然と消えていました。


あるのは、
雄ジカがきのうまで
食べていたであろう、
一本の木だけでした。

パパはその木を、
その日から、
「証(あかし)の木」と名付けました。


次の日、
レンゲ畑に行くと、
そのレンゲ畑さえも
なくなっていました。

わたしはただ、
ヒバリの声に聞き入るだけでした。