ハッケヨイノコッタ! | 続・阿蘇の国のアリス
黒川温泉の旅が終わると、
冬の原野の
しみいるような静けさに
包まれていました。


ママとパパは、
ダウンを着込み、
毛糸の帽子を
深くかぶり直しました。

一月の南阿蘇を
吹き抜ける風は
切るように冷たいのです。


ハッ、ハッ、ハッ...。
新雪の上に、
獣の足跡を見つけました。


ウサギでしょうか。


そして、
それを追いかける
キツネの足跡。


逃げ出す山鳥の足跡も...。


あわただしい、
人間の日々の営みと並行して、
もうひとつの時間が
流れていることを
知らされた瞬間でした。

「ハッケヨイノコッタ!」


パパと相撲をとりましたが、
また負けてしまいました...。


いつか、
パパに勝ちたいと思います。


その夜、
阿蘇五岳は、
ゆっくりと銀世界へと
変わっていきました。