あるアリの物語。第四回
職場へと向かうジャックは道すがら、
背中を丸め、いかにも疲れた表情で歩いてくる
娘のナンシーに気づきました。
父親と同じクロアリなのに、
ナンシーは触覚を茶色に染め、
ジャラジャラとした蛍光色の飾りものを、
引きずるように首からぶら下げています。
「ナンシー、今ごろご帰宅かい?
いったい朝までどこにいたん だい?」
ジャックが声をかけましたが、
ナンシーはうつむいた顔を
ジャックに向けることもせず、
ちらりの片目でみやっただけで、
すれ違って行ってしまいました。
「朝ごはん、父さんが作って
テーブルの上に置いておいたから、
ちゃんと食べるんだよ!」
遠ざかるナンシーの背中に、
ジャックの声は届いたのでしょうか。
(つづく)