その日に思いを馳せると、必ず心に満ちる二つの光景。
一つは
太陽の光を受けて眩しいばかりに輝く2本の美しい柱。
もう再び戻ることのないワールドトレードセンターの雄姿。
そしてもう一つが、
ワシントンスクエアで見上げた夕暮れの濃さを増していく空。
見事な秋晴れの朝でした
。
明け方までハロウィンの夜をたっぷり楽しんで、
夢すら見ないで久しぶりにどっぷりとした眠りに。
目覚めて翌日、
「そうか、私、ニューヨークにいるんだ」
と再確認しました。
この日も1日、先輩をガイド役兼カメラマンとして
マンハッタンの街を南下することに。
眼にする全てが
キラキラ
と輝いて見えたことをしっかり憶えています。
「自由の女神をタダで見よう」という提案に
「何だ?ソレ??」と興味深々で後をついていきました。
ロウアーマンハッタンからスタテン島までフェリーが出ているのだそうで、
ニューヨーカーにとっては大切な通勤の足なのだとか
。
少し冷たい海の風にあたりながら、
右手に見えてきた自由の女神に大興奮。
乗客の方が場所を譲ってくれ「Enjoy!」と声をかけてくれたり。
暖かかったなぁ、みんな。
そのとき、「こっちも絶景だぞ」と言われて
視線を移した先に広がっていたのが
波打つ水面の向こうに、
まるで浮かんでいるようなマンハッタン島でした。
その島を従えるようにしてそびえ立っていたのが、
ワールドトレードセンター。
太陽の光を全身に浴びた、
その輝きと共にあったあの姿が、
私が「彼ら」を見た最後になるとは思いもせず…
。
スタテン島から戻り、
少し遅めのランチをとったのがチャイナタウン。
タクシーをつかまえて運転手にストリートを告げるものの、
どうも遠回りして運賃を稼ごうとしている様子。
先輩ときたら「Hey!Mr!」って…。
いくらなんでもそれ…「おい、おっさん!」と一緒ですから
。
少しずつ食欲が戻っていたので、飲茶を食べてお茶をいただいて。
訪れたことのないソーホー地区などダウンタウンエリアを歩く歩く
。
足も疲れてきたのでワシントンスクエアで一休み。
さすが11月さしかかる頃、夕暮れは早くなっていましたが、
週末のこの日、スクエアには
大道芸人やパフォーマーがまだたくさん残っていました
。
賑わいをみせる眼前の風景とは別に、
私の心は、翌日の帰国を控えて少しずつ暗がりに
。
黙ってぼんやりとする私に先輩の言葉が続きます。
「お前の話を聞いてて、まともに解釈できるのはお前の言い分や。
ということは一方のは狂ってるということや。そいつら狂ってる。
そんな奴ら放っておけ。」
そして、
「見てみろ、こいつら何にも考えてへん。
なんで逆立ちして一輪車乗らなあかん?
でも、こんなんでも楽しそうやろ。
それでええねん。あんまり思い詰めるな。」と。
それからしばらくただ空を見上げていたでしょうか。
そして5番街のアパートメントの窓が明かりで満ち始める頃、
ようやく私たちはヴィレッジにと出発していきました
。



