狗賓童子の島
飯嶋和一著
小学館文庫
2021.12.15読了
☆☆☆☆
大塩平八郎の乱に加担した罪で、隠岐に流された主人公の20年余りにわたる流人生活と、その間の隠岐をとりまく情勢を綴った歴史小説。大塩の乱が物語の起点になってはいるが、焦点は藩政の拙さと幕末に向かう世の中の混乱で、そのような中でも実直に生きる主人公を好意的に描いてます。しかしいつも思うのだが、著者の歴史小説は、その情報の膨大さと緻密さで、小説の域を超越し「優れた歴史書」とさえいえる。ただその分執筆に時間がかかり、ゆえに作品が少ないのが残念なところ。