近大マグロの奇跡
林宏樹著
新潮文庫
2014.2.21読了
ボクたちが食べている野菜や穀物、食肉の類はそのほぼ全てが人工的に栽培、飼育されたものであるのに対し、魚は獲ってきたものがまだまだ主流である。“天然物”と言えば聞こえはいいが、それは品質が安定せず当たりはずれがあるということで、消費者にとって必ずしもメリットとは言えない。
本書は、不可能と言われたクロマグロの完全養殖を成功させるまでの、関係者たちの30年以上にわたる苦難に満ちた研究のドキュメントである。近大水産研究所はクロマグロの他にも、多くの魚の完全養殖に成功し、商業ベースに乗せている。このような完全養殖は天然資源の負荷軽減だけでなく、高品質の魚を安定供給できる、トレサビリティがはっきりしているので安全性が担保されるなどのメリットが多く、将来成長するビジネス分野であることはまちがいない。
魚沼産コシヒカリや松阪牛のように、“近大産クロマグロ”などの養殖魚が一流ブランドとして認知されるのも、そう遠くないような気がする。