1952年製プジョーPC40への道/第3章-2 | 社会不適合オヤジⅡ

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好奇心、いよいよ旺盛なもので・・・

さてさてようやく組み上がったプジョーPC40を連れだそうではありませんか。

午前中は雑用で乗り出せず、試乗は午後からになりました。

近所の公園の梅もきれいに咲いて、澄み切った冬の青空を背景に輝いています。

では完成の図。

これももうおなじみになりましたが、1952年のカタログモデルとの比較。

もちろんオリジナルとは色々異なるパーツで組みあげざるを得ませんでした。

これを組もうと決めた時、できるだけ手持ちのパーツで組み上げようと決めてましたからね。

まぁ全体の雰囲気がそれらしく出来ていれば良しとしようかと。

トランスミッションはストロングライトのクランクにサンプレックスの3アームアダプターを付けてます。ネジばかりたくさんあるっていうのもレトロ感横溢でしょ?(笑)

チェーンカバーはプジョーオリジナルが入手できず、同時代のALU-DURを合わせました。

マルチフリーはATOMの4速で歯数は15t~24t、リヤディレイラーはサンプレックス・チャンピオン・デュ・モンド・モノブロック46、チェーンは高性能なシマノ・CN-HG71です。

3/32の薄歯チェーンですから、モノブロック46はきちんと4速に対応しています。

このモノブロック46ですが、変速具合が想像以上に好ましかったです。

まず節度のある動き、その動きもスムーズでレスポンスも中々良好。レバーを何にするかで変わるのでしょうが、引きも軽くて心地良い、小気味良い変速を提供してくれます。

なにしろ製造は1946年ですからね。昭和21年ですよ、第二次世界大戦が終わった翌年に作られた変速機ですもの、あんまり期待していなかった分、いい意味で期待を裏切られました。

ただしジャッキプーリーがスライドシャフトに直結で、且つショートケージなのでキャパシティは大したことありません。今回はフロントがシングルなので十分でしたが、もしダブルにするのなら当時に倣って49t×46tなどといった組み合わせでないと対応できなさそうです。

歴史的にはこの後一斉を風靡したTour De Franceが生み出され、Juy543~Juy60と続くサンプレックスのスライドシャフトディレイラー全盛期の礎とも呼べるメカでしょうね。

前回お伝えしたホイール脱着の問題点も、このディレイラーならばなんの問題もありません。

ボディ本体が前方へ出ていますから、プーリー位置とマルチフリーとのクリアランスも十分です。

やはりこのフレームはサンプレックス装着を前提に作られているのでしょうね。

一番心配だったのはブレーキでした。

ところがあに図らんや、ブレーキがこれまた素晴らしい効き方でした。ブレーキレバーを軽く握ればじんわり効いて、レバーを締め込むほどに制動力が増す感じ。

オリジナルはフォリス・べボラックスですが、私はJEAY社製タイプMを装着。

リヤはこんなふう。

このテンションスプリングのバネ定数が見事なほどに良好な動作になるよう、しつらえて有ります。

ブレーキ操作はバネの反発を感じながらも、レバーを離せばパシッ!とレバーが戻ってブレーキ操作はストレスフリーです

フロントは以前もアップした通りです。

ブレーキシューは制動力を考慮して、クールストップのサーモンレッドにしました。このシューの効果ももちろんあるのでしょうが、少なくともマファック・クリテリウムよりも遥かに安心感があります。

そうそう今回の撮影はいつものSONY NEX-5Rですが、レンズはフォクトレンダーのノクトン・クラシック40mmです。

このレンズは発色が銀塩風で、この手の自転車にはこのレンズのほうがお似合いかなと付けてきました。

モノブロック46を操作するシングルレバーはユーレー・アルビーの初期型です。例の甲羅が付く前のパンタ構造が丸見えのアルビーとセットされていたヤツ。相性は悪くなさそうです。

ブレーキレバーは名称不明のフランス製。すべて鉄製のフラットレバー。握りやすくてレバー比も適度に取れています。また、ストロークが大きく取れるようにフレアーが大きくついているところが時代を感じさせてくれます。

ステムは他のパーツと比べると少し時代が下がって70年代~80年代のBFステム。ハンドルバーがBelleriをコピーしたバーですので、ステムも同じBFで合わせるのも納得のところ。

材質はアルミですが鉄製だった頃のデザインのまま作られているところが好き。

 

レンズと言えばせっかくなのでヘリオスの44ミリも持ってきました。

リングボケがきれいなロシア製レンズです。リヤ周りを撮影してみました。

地面に落ちた枯れ葉がきれいにリングボケしています。主体を引き立ててくれる効果があって、使い方に依っては面白いレンズです。この画像をトリミングするともう少し整理できてわかりやすくなります。

開放で撮影したので被写界深度が浅いです。テールレンズの突端だけピントが来ていて、リフレクター部分のピントは既に崩れ始めてます。

全体像もヘリオスで撮影しました。じつは2枚目の画像はヘリオスでの撮影画像です。

午後2時ころですが、お日様の光が斜光線で前側から強めに当たっていたため、絞りは最小絞りF16での撮影です。

距離もありましたし、絞りを目いっぱいに絞ったのでまぁまぁ被写界深度は深くなってます。

若草色のフレームカラーとホワイトタイヤ、グリップとサドルのブラウンとサイドバッグがリフレインして、カラーリングは正しくできたかなぁと自己満足。

ちなみにワイヤー類のアウターはNISSENの新色、くるみ色です。

こっちは2段絞ってF4での撮影。レンズ周辺まで光が当たると発色が良くなります。

ヘリオスも好きなレンズです。

試乗した印象を書かなくてはと思うのですが、とても不思議な乗り味でした。

まずはとても軽いのです。もちろん古い時代の自転車です。車重は決して軽くありません。

それでも漕ぎ出しが軽くてしかもスイスイと踏めていけるのです。

スーパチャンピオンのリムにパリモトのタイヤですから、ホイールの慣性重量は決して多くはありません。

つまりはずみ車効果は余り期待できないはずなのですが、ちょっと早めのペダリングピッチで踏んでいっても疲労が溜まりません。ブルックスのサドルはコイルスプリングがついてますが、革が新しいのでそれほど柔らかくは感じません。コイルの存在を感じるのは悪路です。アスファルトの凹凸を連続して通過したりすると、体は上下にフワンフワンと跳ねます。

走行中はほとんど無音のライディング。古いパーツはどことなく異音を発することもあるんですけどね。

シマノのチェーンが優秀なのか、ATOMフリーとの噛み合いもモノブロック46のプーリーとの擦過音もありません。もしかすると、チェンに塗布したベルハンマーのyamanaka specialが良い仕事してくれているのかもしれません。

帰路はわずかに登りが続くのですが、ギヤを落とさずに49t×17tで快適に走ってこれました。

ハンドルバーが端に向けてわずかに下がっているので、ライディングフォームはやや前かがみ。

これにより前後の重量配分が偶然にも乗りやすい比率になっているのかもしれません。

単純比較はできませんが、サンノーのポタリング車よりも快適な感じがします。

こっちはグランボアの36Bですのでプジョーのタイヤのほうが太いんですが、軽快感はプジョーのほうが上ですね。やはりルネエルスの言うように、タイヤはある程度の太さを持っている方が軽やかなのかもしれません。

ともかく町中を散策するにはウキウキしながら乗れる自転車です。

このあと別な公園に立ち寄って、なんとなく雰囲気だけの写真を撮影してみました。

レンズはヘリオス、絞りはF16です。

今日の撮影は凡そ130カットほど。帰宅してから撮影した画像をすべてチェックしたんですが、この写真が今日の”感じ”を一番良く表しているかなぁって思いました。

 

ようやくPC40の再生が完了しました。

オリジナルを尊重しながらも、手持ちのパーツを極力使って雰囲気を壊さないようにするのは難しかったです。

インナーはお飾りですがダブルのチェーンホイールですので、クランクシャフトはストロングライトの118ミリ。

4速フリーってチェーンラインどこで合わせれば良いんだろうって思いましたが、組んでみちゃえばセカンドギアでどんぴしゃり。

モノブロック46の調整もね、4速すべてギヤ鳴りしないで架けかえる調整は2時間ほど掛かったし。

チェーンカバーも汎用品といえど、固定用の穴を使っての装着は少しばかり工夫が必要でした。

ギヤ板は49tですが、もしかするとこのチェーンカバーはもう少し小径のリングを使うことを想定しているかもしれません。

変速機の調整を終えて、最後の最後にチェーンカバーのクリアランス調整を行ったのですが、どこにも触れずに無音のままチェンリングが回転できたときは本当にホッとしました(笑)

 

まぁもともとが古いパーツで組み上げるのって難題が多いものなんです。

こうして試走できたことは稀に見るほど幸運だったのかもしれません。