僕はナツ
夏に産まれたからナツ
僕には3歳下の妹フユがいる
もちろん 冬産まれなんだ

うちの親って 名前の付け方がかなり安易なんだよねえー

そんなことは おいといて……


妹のフユは オトナが言うにはまだ6ヶ月らしい……(6ヶ月ってどのくらい?)
とってもかわいいんだ
頬っぺたがとっても柔らかくてプニプニしてて 目もクリクリしてて 髪の毛も柔らかくてふさふさで 時々「ア~ア~」とかなんとかしゃべっていたりするんだ
とにかくかわいいんだ

フユが産まれたばかりの時に おじいちゃんとおばあちゃんに連れられて病院に行ったんだ
フユはおかあさんの横に寝ていたんだけどさ なんかやでさ おばあちゃんに「もうかえろう」って言って おばあちゃん達を困らせちゃったんだ

フユをみせられてさ「あなたの妹よ」なんて言われたってさ 顔はまっかっかだし かみのけも少ないし さるみたいでさ ちっともかわいくなかったんだよね

なのにさ みんな 僕のことよりも さるみたいなチビの事ばっかり気にしてさ おかあさんも「かわいいでしょう?」なんて言ったけど「ふん!」っていう感じだった

何日かして おじいちゃんとおばあちゃんの家に おかあさんとフユがきたんだ
僕は おかあさんが病院にいるときからずっと おじいちゃんの家にいたんだ
しばらく一緒にいるんだって
おかあさんもフユも寝てばっかり
そのかわり おかあさんの弟のケンおじちゃんが遊んでくれたんだ爆笑

ケンおじちゃんはすごいんだよ!
ちからもちだから 肩車もたくさんしてくれるんだ
おうまさんもしてくれるんだよ
それから……え~と……なんだっけ?
そうだ かみで動物をつくったり 本とかいうものについてくるものも あっという間につくっちゃうんだ
もちろん それで一緒に遊んでくれるんだ

おばあちゃんはね ごはんがおいしいの照れ
おやつもね つくってくれるんだ


そうだ フユの話だ

おじいちゃんの家にきたばっかりのころは どんなやつかようすをみていたんだ
だって びぃびぃよくなくんだえー
うるさくてやんなっちゃった
それに おかあさんの事ひとりじめしてさ ちっともかわいくないんだもんえー

でもさ ある日 僕がそ~っとよっていったら じぃ~っと僕の顔をみているんだ
すごくきれいな目だったの
だから 僕もじぃ~っとみていたら はじめてみた時と顔がかわってきているのに気がついたんだ
ほっぺたをさわったら プニプニになっていたんだ
フユが僕の指をギュってにぎったときはビックリしたなぁびっくり
だって おもっていたよりもずっとちからがあったんだから
いやじゃなかったから しばらくそのままでいたんだ
それからかなぁ~
フユがかわいいって思い始めたのは……

僕が使っていたベビーカー(…というらしいのりもの)フユにあげるんだ
だって フユがかわいいんだもん
きっと 僕が一番フユの事が大好きだよ

おかあさんがフユをだっこして リュックしょって出かける時は 僕も自分のリュックをしょって おかあさんとフユに変な人がよってこないようによく回りを見回して歩いているんだ
だって 僕は男の子だからね
お兄ちゃんだからね
フユは僕が守るんだ!

このあいださ ベビーカーにはじめてフユをのせて出かけたんだ
知らない女の人がよってきて フユをみて おかあさんになんかいったんだ 
僕はフユが連れていかれないように ジィ~っとみていたんだ
これからも フユを連れて出かける時はきをつけなくっちゃ!
僕の大事なフユだからね
変な人がきたら あんパンチでやっつけるんだ!


フユといえばさ おじいちゃんの家に行くと 寝かされる場所が決まっているんだ
みんなでいる部屋の隣の部屋
ふすまっていう戸がついているけど 開けっぱなしにしてある
おかあさん達の話では 僕も赤ちゃんの時には同じ場所に寝かされていたらしい

フユがさ そこに寝かされると 時々 なんか言っているんだ
ふすまっていう戸の方にむかって
でも 誰もいないんだよ
ほんとうだよ
僕 みにいったもん
すっごくニコニコして なんか「ウ~ウ~」言っているんだ

そういえば……僕にもかすかなきおくがある
だれだろう?
おかあさん達と違う服を着た女の子?
男の子? どっちだったんだろう?
あの……ふすまっていう戸の前にいて……話をしたような………
あれは……だれだったんだろう?

今 フユがはなしている
あれは……僕くらいのこどものかげ?
フユにはみえているの?
僕にははっきりみえないよ

おとうさんにもおかあさんにも おじいちゃんにもおばあちゃんにも おじちゃんにも 見えないみたい


そのオトナ達には見えない子は『座敷わらし』ってよばれているらしい