関東労災病院の松平浩先生の一般向けの腰痛本です。
「腰痛持ち」をやめる本 ー切り札はたった3秒の習慣ー
マキノ出版
「腰痛持ち」をやめる本 (切り札はたった3秒の習慣)
posted with amazlet at 13.02.21
松平 浩
マキノ出版
売り上げランキング: 800
マキノ出版
売り上げランキング: 800
以前にも松平先生の小冊子や専門家向けの著書を紹介していました。
http://ameblo.jp/alexlesson/entry-11395522523.html
http://ameblo.jp/alexlesson/entry-11288267440.html
今回のは一般の方向けの著書で、以前のものよりもわかりやすくまとめられています。
腰痛を患う方々が手に取って、すぐに活用できるようになっているものです。
腰痛でお悩みの方はぜひ一読した方がいいでしょう。絶対に参考になると思っています。
・最新のエビデンスを基に、原因や対策法が考えられていること。腰痛はその原因の特定が難しい(非特異的腰痛)こともあって、様々なことが言われていたが、それが最新の知見を基に、何が正しくて何が正しくなかったかが、整理されています。
・精神的なストレスによる「脳の不具合」による腰痛の状態悪化についても説明されています。そして、それを緩和するためのそのストレスへの対処法も。
・そして、身体的な要因になる姿勢や動きについても改善方法である「これだけ体操」「パワーポジション」「B-ポジション」という、シンプルな方法が提案されていて、読んだだけでも実践していけそうなものをわかりやすく伝えています。
・「自分の「考え方」と「行動」を変えていく」ことを推奨されていて、医者やセラピストに任せきりではなく、セルフケアの大切さを伝えています。そのために、認知行動療法やアレクサンダー・テクニークのレッスン、ヨガや呼吸法も勧めている。
私自身もとても勉強になりました。
・先生の仮説ですが、椎間板の中にある「髄核」のずれによって、外側の線維輪が傷つき痛みが起こる可能性があること。これはよくある椎間板ヘルニアの程度の事前症状のようなものにあたりますが、ヘルニアのように実際には飛び出していない中で起こることのため、MRIなどの画像診断ができない。
・Functional Somatic Syndrome(FSS) 機能性身体症候群というものがあり、(引用)「画像や検査数値には出づらいけれど、自律神経の乱れといった体の機能面が問題を起こしている状態を指します。(中略)具体的には、線維筋痛症や慢性疲労症候群、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などが挙げらる」そうです。緊張型頭痛もFSSの一つだそうです。こうした精神的ストレスを関係がある症状は最近よく言われるようになりましたが、こういう名称としてのくくりがあったのかと。そして、慢性腰背部痛と慢性むち打ち症もFSSに含まれると整形外科では指摘されているそうです。
・「炎症が強い大きく飛び出したヘルニアでは、体の免疫機構がヘルニアを異物としてとらえ、マクロファージという細胞がヘルニアを食べて、自然に消えてなくなることもある」
そして、下記のことを読んだときに、先生はとても謙虚に腰痛と、そして腰痛の患者さんと接してこられたことがよくわかりました。
(引用)「私が熱心になればなるほど、患者さんが私に強く依存するというジレンマにも陥りました。腰痛を改善するどころか、「腰痛持ち」から卒業できないように、私が手を貸していることに気づいたのです。いいかえれば、患者さん自身の「自分で治そうとする力」を奪っていたということです」
前回の著書でも触れていただきましたが、今回の著書でも「腰痛持ち」をやめるよりよい姿勢を実現できるものとしてアレクサンダー・テクニークにも触れて推奨してくださっています。
(引用)「私が「いい姿勢」の参考にしているのが、「アレクサンダー・テクニーク(AT)」です。ひと言でいうと、心身のむだな緊張に気づき、取り除く健康法です。日本でATの指導と普及に努めている青木紀和氏によると、過剰な筋肉の緊張や無理な姿勢に気づき、これを正す「体の使い方」だといいます。まさに、B-ポジションの探求です」
こうしたドクターの一般向けの腰痛対策本でアレクサンダー・テクニークが掲載されたのは日本では初めてのことだと思います。これはAT界にいるものとしては画期的なことです。先生の期待に応えられるよう、そして患う方々のためにも、身を引き締めてこれからもこうした方々のセルフケアに貢献していきたいと思いました。
ちなみに、先生の個人的なストレス対策の一押しは、山下達郎の"RIDE ON TIME"とのこと。(早速、ITUNESで調達したくなってしまいました。。)そんなプライベートな一面もみせている親しみやすい本でもあります。
わかりやすい、おすすめの一冊です。