去年、以前働いていた薬局の同僚から、知らせがあった。

 

 

その薬局では、独自に『子ども薬剤師体験』というイベントを何回かやっていた。

 

小学生・中学生を対象に、実際に軟膏を練ったり分包機を使ったり、クイズをしたり、ある時は寸劇もして、薬剤師・薬局を初めとする医療全体に興味を持ってもらおうという企画だった。

 

今考えると、実に楽しく、いい企画だったと思う。

参加した子供たちも、子供用の白衣を着て、うれしそうだった。

 

同僚からの知らせは、その『こども薬剤師体験』に参加したお子さんのひとりが、私の母校の静岡県立大学・薬学部に入学したという知らせだったのだ。

 

そのお子さんは『子ども薬剤師体験』がきっかけで薬剤師に興味を持ち、私が県立大学のオープンキャンパスを勧めて、それに参加したとのこと。その後、無事に合格して、薬剤師をめざしているそうだ。

 

お母さまから「○○さん(私)に報告したかった、よろしくお伝えください」と伝言を頼まれたとその同僚は言った。

 

私の何年も前のアドバイスを憶えていてくれたことに驚いたと同時に、少しは私も役に立つことがあったんだな、と思った。

 

 

 

さて、3月24日。

もうひとつのうれしい知らせが届いた。

 

それは、同じ薬局で私が担当した患者さん・Kちゃんからの、看護師国家試験の合格の知らせだった。

 

そんなに何回も服薬指導をしたわけでもないのに、なぜか私のことを憶えていてくれて、その薬局を辞めてからも、Kちゃんやお母さまとのLINEのやり取りは細々と続いていた。

 

大学受験の時、私を見て薬剤師になりたいと、Kちゃんは思ってくれたそうだ。

高校に提出する志望動機の文には、私のことを「こういう薬剤師になりたいと思う」と書いてくれた。

お母さまから、その文章のコピーをもらって、とてもうれしかったのを憶えている。

 

結局、同じ医療者の道を目指し、Kちゃんは看護学部に入った。

 

そろそろ、卒業かな?と思っていた所に、国家試験合格の報告が届いたのだった。

 

 

49年間、薬剤師として働いてきたけれど、正直な所、大した仕事はしてこなかったと思う。

調剤過誤なしで薬剤師人生を終われたことだけは、自分でも誇れると思う。

 

しかし「薬剤師として何をしたか?」と自問しても、本当に何も思いつくことがないのである。

 

そんな私に、ありがたいことを言ってくれる人がいる。

 

二人の少女が、医療者への道を目指すことになった、ほんの一端だけれども、私が関われたこと。

それだけでも、私は薬剤師になってよかった、と思えたのだった。

 

Kちゃんの「ほんとうにかっこいいし尊敬です。背中追いかけたいです」という言葉は、私にとって最高の餞の言葉になった。

 

 

4月初め、京都に行った。宿泊は智積院会館。

ここでは、朝のお勤めにも参加できる。

心を見直すことができ、とてもよい経験だった。

 

案内役の僧侶の方の後に続いて、本堂へと向かう。

 

 

智積院の桜。

これから医療に携わる、フレッシュな少女たちのような、初々しい桜。

がんばってほしい。