マダム・バタフライは、時間通り6時半に開幕。
もっと遅れて開演するのかと思っていたが、これは意外だった(マッシモ劇場は、チケットの問い合わせにもすぐに返事をくれた)。
開幕と同時に大きな拍手が。
待ってました、という感じ。
と、ここで私は天井部分に吊り下げられた、たくさんの提灯に書かれた勘亭流の文字に、目が釘付けになった。
まず目に飛び込んできたのは
『八方美人』
の四文字。
思わず「えっ?!」と思った。
いやいや、せっかく本場のオペラを観に来ているのに、そんな些末に気を取られていてはダメ!!!
ピンカートンが、朗々と素晴らしい歌声を聞かせ初めてくれているではないか。オペラに集中しよう。
と思いつつも、他の4文字が気になって仕方ない。
私は、この日のために、結構性能のよいVixenの双眼鏡(バードウォッチング用)を持参していることを思い出した。
そろそろと音がしないようにバッグからVixenを取り出し、隣のマダムに迷惑にならないように、その提灯の字を確認し始めた。
提灯の真ん中には、左三つ巴の家紋も描かれているのも確認できた。
私、こんなたくさんの4文字熟語、憶えられない・・・。
これって、まるで認知症のテストの最初にでてくる即時記憶の、ウサギとか救急車とか、後で言わせるのと同じじゃない。
またもや、そろそろとペンと紙を出して、暗闇の中でその4文字熟語を書きなぐる私であった。
その甲斐あって、ようやく憶えた残りの8種類。
『大願成就』
『春夏秋冬』
『永久不変』
『山紫水明』
『黄金時代』
『古今東西』
『花鳥風月』
『喜怒哀楽』
Vixenを通して覗く27個の提灯は、4文字熟語の世界で溢れていた。
すべてを書き写した私は、これ以後、心おきなくオペラに集中できたのだった。
オペラ『蝶々さん』は、ストーリーも日本人にはわかりやすく、とても素晴らしかった。
マッシモ劇場のサイトから拝借した画像。
Cast
Cio-cio-san Maria Agresta
Suzuki Silvia Beltrami
Kate Emanuela Sgarlata
B. F. Pinkerton Jonathan Tetelman
さて、上演中、前に座ったカイゼル髭の紳士は『ある晴れた日に』のアリアが始まると、スマホを取り出し撮影。
隣のマダム(彼女が通路を通る際に私たちが立ち上がってやっても、お礼も言わず無視して通り過ぎた)は、何度もスマホでラインみたいな物をやっていた。あなたのスマホ、明るく光ってるって。
まあこんな具合に、いろいろ日本と違うこともあったけれど、自由にふるまう観客たちにも結構シンパシーを感じ、私たちは本場のオペラを楽しむことができた。
とてもすばらしかった。
アンコールは撮影可。子役がとてもかわいらしかった。Vixenでばっちり見ましたよ。
ボックス席から拍手する観客たち。
劇場内で、鏡を利用して撮影。
入り口のスケールの大きさがわかる。
この後、昼間と同じレストランに向かった。
生ハムメロン。
ソーセージ。
ラザーニャ。
これだけでも、お腹いっぱい。
劇場横に待機しているタクシーでホテルまで帰った。
が、このタクシー、最後にメーターを操作して、一気に13€から20€に値上げ(行きのタクシーは迎車料金込みで15€だった)。
さらに50€札を渡しても、お釣りを20€しかくれず。
あと10€は? と言ったら、しぶしぶ残り10€を渡してきた。
あれまあ。これは、シチリアで出会った珍しく嫌なことだった。
さて、私の買ったコッポラ帽。きどって、鼻の穴を膨らませて、かぶってみました。
長い一日が終わった。
『マッシモ劇場でオペラを観る』という目標を自力で達成できて、充実感いっぱいの私であった。












