イタリアで引っ越すという事 | チキンなワイフ、イタリアの日々

チキンなワイフ、イタリアの日々

南国生活5年を経て、今度はイタリアで暮らすことになりました。
駐妻初級編から中級編へ。
色々比較しながら日々の事を綴ります。

先日、半年ほど住んだ家を引っ越した。

 

実家の近所で一人暮らしを始めた時以来の、自力での引越しとなった。

夜な夜な自家用車で20往復以上して引っ越したが、誰も驚かなかった。

なぜなら、こういう事が「割とよくある」らしいのだ。

そんなイタリアでの引っ越しの話。

 

イタリアは賃貸物件が少ない。特に、不動産業者を介してまで賃貸に出そうというオーナーが少ない。

一般的な契約期間は4年。もし契約期間中に賃借人やその同居家族が病気になって支払いが滞っても、家主は追い出す事ができないそうだ。

だから、人づてという多少の担保を得て貸す方がいい。イタリアでは、良い情報は人づてでもたらされる。

 

しかし、アウェイの駐在員は良い情報を得られない。だからインターネットの賃貸情報サイトで探す。

ただでさえ少ない候補。良さそうな物件が見つかったら「英語で」問い合わせるなんてチャレンジはせず、イタリア人のスタッフに入ってもらう。彼のペースは日本人のそれとは異なるが、そこは尊重するしかない。

 

こうして3ヶ月アタックし続けて、内覧までたどり着いたのは1件だけだった。

内覧できなかった理由は色々あるだろう。内覧順番待ちや人づてで決まってしまった以外にも、知りたくない理由もあるかもしれない。

知り得た理由の中で興味深かったのは

・物件の1部が子供名義になっているから、借りた後で子供が異議を唱えてきたら非常に面倒な事になる

・法人契約の場合は家賃が掲載価格の3割り増しになるから、予算オーバーになる

の2つだ。

 

2つ目は本当に困るが、珍しいことではない。

賃借人と直接契約すれば税金を誤魔化せるが、法人の場合はそれができないから、という事らしい。

 

そもそもうちが引っ越す事になったのも、これが大きな要因だ。

賃貸価格がこの半年でも高騰し、若い社員の予算に合う家が見つからない状況に陥ってしまった。

この不便な新天地で、治安以外にも色々妥協しろというのは・・・酷だ。

 

幸い我が家ならば彼らの予算に合う。

スタッフに「あなた方の予算ならまだ家を見つけられるだろう」と言われ、覚悟を決めた。

内覧できた1件も、家賃は3割増しに変更。対象は我々になった。

そして時間との戦いは始まっていた為、即決した。

 

イタリアの家は、引き渡し前のクリーニングが入らないのが一般的らしい。内覧のためにオーナーがある程度掃除した後の事は、借主がする。

掃除は平日の日中に自転車で「通勤」して行ったのだが、所どころホラーな箇所があった。

イタリア人は家の中をピカピカにするというが、「見えるところは」という注釈が必要かもしれない。

 

契約後すぐに引っ越し業者の手配も始めたが、これは時間との戦いに負けた感がある。

この街の高い相場を提示してくる業者が1つ見つかっただけだったので、自分達で運べる物は運ぶ事になった。

幸い、衣装ケースはそのまま運べるし、スーツケースもある。

海外転居用の丈夫な段ボールや梱包材を少し残してあるし、会社から普通の段ボールや台車を借りる事もできた。

 

大きな家具や重い物は業者にお願いする話にはなっていたが、薄っすら予想していた通り、それはイタリア人スタッフがサラッと手伝ってくれて引越しは完了した。

 

こんな風に「自分達でやった方が早いし安上がり」というのがイタリアあるある。

20往復もしていればご近所さんにも知られるわけだが、「どこに引っ越すんだ?」「せっかく顔見知りになったのに残念だ」はあっても「大変だなぁ」という同情の声は一切なかったように思う。

 

ちなみに、不動産業者の仕事は仲介までだ。

契約が成立したら、後はオーナーと直接やりとりする事になる。

不具合が起きても、故障や破損以外は報告無用だ。

 

転居して数日後に壁の隙間から羽蟻が群れで侵入してきた。

私には恐怖の大事件だが、この程度の事はオーナーに対応依頼するものではない。勝手に隙間充填材で対処すべし。

その充填材を自分で買えない私は、スタッフが用意してくれるのを待っている。

「自分でやった方が早い」はこの場合にも当てはまる。

侵入した羽蟻に殺虫剤を浴びせた後、もう殺戮しなくて済むように隙間はダクトテープで塞いだ。

(しかし、そろそろスタッフにリマインドしようと思う)

 

カネなしコネなしスキルなし、な気持ちにさせられるイタリアでの引っ越し体験。

カネとコネに変化はないが、最終的には納期までに何とかしてしまうイタリア人の底力というスキルが、私にも少々身についた気がする。