新宿中央署には、大掛かりな帳場が立てられていた。

新宿中央署、検挙率No.の、たたき上げのデカ、田所は、皆に聞こえる大声をあげていた。

「なんで、つかまらないんだ?」
「どこに消えたって言うんだ?」
「なんで、センサーに映らないんだ?」
「何が、どうなっていると言うんだ?」
「わけがわからん!」

この時代、国籍のある、戸籍に登録している人間は、すべて体内にチップか埋め込めれており、事件があっても、直ちに、誰の犯行か特定ができるようになっていた。

ところが、今回の犯人は、このチップが反応しないため、犯人の特定ができずにいた。

そもそも、銀行に入ったのも、出て行ったのも、記録に残っていないのだ。

データ上は、ただ忽然と現金が消え、消えた現金は一枚も使用された形跡が無いという事だった。

仮に、チップを取り出したとしても、その時点でチップのエラー情報は上がって来るし、直ちに関係機関から新しいチップが、体に挿入される仕組みになっている。

その上、銀行から出て来た犯人は、街中の監視カメラのどれにも写っていないと来たから、捜査本部も混乱する訳である。

どうやって姿を消したのか、科学捜査チームは頭を抱えていた。

「本当に銀行強盗が有ったのか?」

科学捜査チームの山中は、街中のカメラ映像を見ながらつぶやいた。

これまで6件の銀行でそれぞれ約1億円の使用済み、番号スキャン済み、帯封無しの現金が強奪された。

犯人はそれぞれ3人、目撃者の証言による体型、身長まで瓜二つなのだ。

銀行内での映像には、犯人はちゃんと写っているのだが、非常口から出た瞬間から犯人の姿は消えていた。