家具屋さん | 私が西荻で暮らした日々

私が西荻で暮らした日々

懐かしき西荻の日々を記憶の整理を兼ねて書いていこうか。

 伏見通りをもう少し進むと有名な西荻ロフトが入っていたビルがあり、其の先の角に家具屋さんがあった。進学のため上京し、アパートの家具を買いに母とここの家具屋さんに行って買った記憶がある。

 店主が私のことをあなた歌舞伎役者みたいだねと言っていたが今から考えると適当なお世辞だったのだろう。特定の歌舞伎役者に似ているならともかく、歌舞伎役者っぽい顔だったと言うことしか褒める要素がなかったということだ。

 家具屋さんの反対側には、ちょっと戻ったところに西荻ではかなり大きな本屋さんがあった。店に入ると多分社長さんと思われるが恰幅の良い笑顔満開の男性がいつも店頭に出ていた。結構繁盛していた記憶がある。平成になって一度其の界隈を歩いてみたがもうちょっと駅側に転居していた。

 連日戴いた過去の市街図を見ながら色々と記憶を呼び起こしているが断片的な記憶と中々整合せず、迷路に入り込んだようだ。でも面白い。

 人間は現在を実像として見ながら生きているわけだが其の実像と思っていた物もあっという間に過去の物となり、残像として記憶の海に飲み込まれ、いつしか忘却の彼方に消え去ってしまう。

 だが、この地図のような手がかりがあると其の彼方の記憶も身近な物となって忘却の彼方から引き寄せられてくる。

 ただ、それが一体何になるの?と聞かれたとき自分はどう答えようかな。今思うのは過去を当時の思考で捉えて様々な感情を追体験することもさることながら、人生経験を経て今に至った思考の中で過去の出来事を別の角度から捉えて見ることが出来れば新たな人生経験になるのかな、そんなことを思ってみた。