極北をワタリドリと走る。


北極海というゴールまであと少し。


ゴールが近づき


達成感が湧いてくる。


それと同時に


この冒険が終わってほしくない。


そんな寂しさも感じる。


ワタリドリたちは何を想っているだろうか?


そして君たちはどこから来たのか?


僕は日本から来た。


アイムフロムジャパーーーーン

wwwwwwww


※ワタリドリは写真に撮れなかった。

何度かワタリドリと一緒に走る自分を

撮影しようと試みたが、

あいつら僕が止まると

なぜかどこかに行く。


ゴールへ走り続けるかっこいい人。


そんな人にしか

興味がわかないのだろうか?w


 北壁、ブルックスを越えろ!!!


 アラスカはノーススロープエリアに突入し森林限界をも超えた僕は、この地方の名前の由来ともなっているブルックス山脈越えを行っている真っ最中であった。




 標高を上げるにつれ、雪が降り出した。


トレーラーの運転手からは忠告を受けた。


「吹雪くから今日越えるのはやめたほうがいいよ。この辺にテント張っておけ。」


 だがしかし、行かなければならなかった。


 デドホースへの到着時刻のリミットは残り3日のみ。


 前半の泥地獄で進めなかった遅れを取り戻さないといけなかった。


 トレーラーの運転手には悪いが、忠告は参考程度に留め、ブルックス越えを続けた。


 まるで北上を阻止するかのような激しく冷たい向かい風。




 激坂を吹き下ろしてくる風は強烈だった。


 顔面に叩きつける小さな雪も何気に痛かった。


自転車を押すこと2〜3時間くらいだろうか?


 ダルトンハイウェイ最高地点(約1400メートル)の

アディガン峠へ辿り着いた。


 普通なら喜び写真でも撮るが、手は悴み、鼻水も垂れ流しそんな状態ではない。


 少しでも標高を下げたかった。


 アティガン峠にはものの1分もいなかったと思う。


 

 吹雪の自転車修理


 2019年8月20日、最も苦戦したのが前輪ブレーキの修理。


 吹雪いている中、この作業は気が遠くなった。


 結論として、元々不器用な僕はブレーキに絡まった紐状の飛来物を解くことはできなかった。


 勿論工夫はした。


 股間に手を突っ込んで、手を温めるとか。


 その間にどう絡まってるのか目視で確認とか。


 でも無理だった。


 強風ゆえにあっという間に手は悴むのだ。


 デドホースへの予定到着時刻も迫っているのに、ここでまた今日も進まなかったらやばすぎる!!!


 その焦りがさらに細かい作業を雑にする。


 くっそぉぉっ!!!!!!!!!


 不器用すぎんだろ!!!!落ち着け!!!


などと叫んでいたのを今でも覚えている。


 こういう時こそ冷静に。


 このままでは体力がまずい。


 そう考え、テントを張って体力回復に努めることにした。


 テントを張るのもまた一苦労。


 風が強いためテントを張るのも至難の業だ。(当時の僕にはね。)


 どうにかテントを貼り、強風対策に倒した自転車を重りとして、ドロップハンドルとサドルにフライシートの紐を引っ掛けた。更にカメラ三脚も重しの代わりとしてフライシートを安定させた。


 さすがにアラスカで何泊もしてきただけある。


 我ながら成長していた。


 ちなみに地面が硬くてペグは全く通用しなかった。


 工夫して安定させたテントだが、吹雪で悲鳴をあげそうなくらい揺れていた。


 大丈夫かな?


 と心配する体力もなくこの日は眠りに落ちた。


 この日の写真はほとんどない。そんな余裕などなかった。


 吹雪のその後。青と白と緑の世界。



 隠れているけど、フライシートを安定させる自転車や三脚はテントの反対側にある。



 吹雪が止んだあと、こんな世界が待っていた。


 青と白とツンドラの緑のみである。


 青と白と緑…。


 そう、ファミリーマートのようであった。



 ここまでの道のりを振り返ると、

 エリオットハイウェイから始まる激坂のアップダウンの繰り返し、

 ユーコン川周辺の泥で進まなく自転車を押し続けた区間、

 グリズリーベアとの遭遇(さすがに写真撮る余裕はない)、

 ブルックス越えでの吹雪、

 色々なことを乗り越えて、今ここにいる。

 そう思った時、もうそりゃ笑みが込み上げてたまらない。

 とにかく自由を感じた。



 パイプラインはどこまでも続く。



 パンプステーションという工場地帯。

一般人立入禁止。



 これやばいでしょ?

 夏色の緑のツンドラ、赤色の赤や黄色のツンドラ。

 雪化粧をしたブルックスの山々。

 青空。

 北極オールスターズって感じ。



 久しぶりにやってきたぬかるみ地獄坂。

 ここ本当に大変だった。写真じゃ伝わらないだろうけど、ずっとうんこの上歩いてるみたいな感覚。



 それでも最高の自由を楽しんだ。



  この時思っていたことがある。


 目の前に壁が立ち塞がった時、


 その壁を乗り越えることができなかった時、


 その壁の向こうの世界を知ることはできない。


 それは自分の可能性を制限されて不自由だと思う。


 しかしその壁の向こう側に行けたら?


 更なる可能性に満ち溢れた自由な世界がある。


 北壁ブルックスを越えたから、あの世界を走ることができた。


 今振り返っても、自分の人生で最も自由だったかもしれない。


 最高だった。


 時には自転車なんてエンジンもついてないししんどくて仕方ない。そう思ったこともある。


 でも僕が気持ちを切らさず、ペダルを回し続ける限り、僕の望む世界へ確実に連れていってくれる。


 なんて素直な乗り物なのだろうか?


 感謝しながら走る。


 

 ラストディスタンス230km


 8月22日。この日で残り230kmを走り切らないと、北極海を見るためにプルドーベイ油田に入ることができない。


 実はダルトンハイウェイの終着点である街デドホースは北極海に面していない。


 油田をもつプルドーベイに入らないと、北極海は見ることができない。


 そのため必ずフェアバンクスの観光局で予約をしてから行く必要があるのだ。


 その予約を「10日で走りきる!」という自分へのプレッシャーをかけるため8月23日に行ってしまったのだ。


 なのに残り距離は230kmもある。


 絶望的な距離。


 しかも朝の天気はこれ。

 このテントは同じ場所でキャンプをしていた方々のもの。ノースフェイスのジオドームかっけぇなぁ!


 まぁ雪降ってるし、ホワイトアウトしてるし、絶望的だよね。


 これで230kmを1日で走れだと?


 しかも大半がダートだぞ?アスファルトじゃないんだぞ?


 10日で走り切るぞ!


 と決めたのにそれを守れないかもしれない。


 冒険家になる体力なんてねぇかもなぁ…


とまた弱気になっていた。


 しかし諦めず、最後まで走った。


 時間に余裕がないので写真は一切撮っていない。


やがて雪は雨になった。


 北極での雨は冷たかった。


 ひたすら走り続けるうちに生まれて初めて地平線を見た。


 写真に撮るかも迷ったが、


 時間もないのと、


 雨が降っていてカメラを出すのが面倒だったのと、


 目に焼き付けようと思ったのと、


 この素晴らしいサドルの上での時間を止めたくない。


そんな色んな思いがあって、写真は撮らず走り続けた。


気づけばワタリドリの群れが僕と並走して走っていた。


 いや、彼らは僕の真上を飛んでいるわけだから、横並びではないんだよな。


 縦に並んでいるから、縦走か?


 いや、登山かよ!!!


 僕の記憶をもとに友達に絵で再現してもらった。


 絵うまスギィ!!!!


 まじでこんな世界だった。


 特に紫色に染まる夕陽に浮かぶ鳥たちのシルエットは本当あの素敵な時間が思い出される。


 長かった旅も終わりを迎える。


 色んな感情が巡っていた。


 あの日なにを思っていたかな?


 今となっては、あの日の感情を全て思い出すことはできない。


 しかしだからこそ、儚いものだからこそ、旅や冒険は美しい。


 北極海


 疲労でフラフラの中、大半がダートにも関わらず、1日230kmを走り抜き、北極海のそばの町、Deadhorse(デドホース)に至った。


 遂に見た最北の海…。


 えぇ!?


 写真15枚使ってしまったらしい。


 まぁ仕方ない。


 アメブロの写真枚数制限は鬱陶しいなぁ。


 記事を分けます。


 次回、すごく短いけど、北極海の写真だけ見に来てね〜。


 今回も読んでくれてありがとうございます!


 また見てね。


 前の話↓

『アラスカ ダルトンハイウェイ 北極海への道のり。』僕は北極を走ってきた。(2019年8月14日〜23日)アラスカ縦断前半アラスカ南部の800km走行はこちらから『冒険家になんてなれなかった。』「俺、冒険家に…リンクameblo.jp

 北極海の写真(次回の話)↓

『北極海(アラスカ、デドホース、プルドーベイ)』遂に北極海へ着いた。時間にもなんとか間に合ったのだ。ダルトンハイウェイを走り切った自転車は泥だらけだった。北極海周辺の街、デドホースプルドーベイの油田エリア…リンクameblo.jp