本日3月14日は、『リトル・マーメイド 』『美女と野獣』『アラジン』で作詞等をを手掛けたハワード・アシュマンの35回目の命日です。
作曲家のアラン・メンケンとともディズニーのミュージカルアニメーションを作り上げた彼は、作詞のみならず制作全体に深く関わり、「第二黄金期」「ディズニールネサンス」と呼ばれる時代を築いた立役者の1人。
そして、当時アメリカで猛威を振るっていたエイズによって、『美女と野獣』や『アラジン』の完成を見ることなく、40歳で命を落としました。
人生の最期まで創作に情熱を注いだ彼の生涯は、ディズニープラスのドキュメンタリー『ハワードーディズニー音楽に込めた物語ー』にて語られています。
長年アラン・メンケンの大ファンを自称している私ですが、最近は同じぐらいハワード・アシュマンの大ファンと名乗りたいぐらい、私にとって彼の作品とその情熱的な生涯は大きな存在になっています。
今回こちらのブログでは①でハワードの功績と私が感じたことを語り、②で彼の遺した楽曲《シェリダン・スクエア》の紹介と演奏動画を掲載したいと思います。
日本にいると吹替やインストでディズニー音楽に触れることも多いため、作曲家は知っていても、「作詞家」はあまり意識していないという方も多いかと思います。
正直なところ、私もその1人でした。
しかし、ミュージカルにとって歌の歌詞とは脚本の一部、それも特に重要なシーンで台詞の代わりとなる大きな要素。
さらにハワードの場合、作詞に留まらず作品の様々な部分を形作っていった人物であり、みんな大好きなアラン・メンケンのキャリアにとっても欠かせない存在なのです。
ハワードの生涯については先述のディズニープラスをご覧いただければと思いますが…
1989年の『リトル・マーメイド』でディズニーアニメーションの世界に飛び込んだ2人は、音楽で登場人物の心の動きを描き物語を動かすミュージカルの手法をアニメーションと融合させていきました。
特に、《パート・オブ・ユア・ワールド》のように主人公の願い・動機を示す"I Wantソング"や、《哀れな人々》のようなヴィランズソングは、彼らが確立させたディズニー音楽のスタイルともいえるでしょう。
また、「関わった作品の全ての登場人物を演じられる」というほど作品を深く理解し関わる人であったハワードは、ストーリーラインやキャスティング、歌唱・演技指導等にも携わり、「ウォルト・ディズニーのような存在」とも言われています。
「Howard Sings Ashman」というアルバムにはハワードが歌ったデモ音源が収録されているのですが、完成した映画の音源そのままの歌い方の曲も多いので、ぜひ聴いてみてください。
(Apple Musicなどにも入っています!)
https://music.apple.com/jp/album/howard-sings-ashman/917095156
ハワードの歌詞は、賑やかな曲でもそうでない曲でも韻が効いていてとてもリズミカル。
《アンダー・ザ・シー》や《フレンド・ライク・ミー》のような楽しい曲では、言葉遊びやユーモアが光ります。
また、登場人物に深く共感する彼だからこそ生まれる、キャラクターの見ている世界や心情が分かる、感情移入できる歌詞も大きな魅力です。
『リトル・マーメイド』ではトリトン王の「娘がいなくなるととても寂しい」等の重要な台詞を足し、『美女と野獣』では2人が恋に落ちる様子を表現するために《愛の芽生え》を追加した彼は、心情描写に必要な言葉をよく理解していたのではないでしょうか。
(無言の映像で心情を表現することも多い映像作品に対し、舞台演劇出身のハワードは台詞や歌による表現を重視していたのかなとも推測しています)
彼が、当時まだよく分からない病気であり同性愛者への偏見とも結びついていたエイズに感染していたことは、特に『美女と野獣』の《夜襲の歌》と関連付けられることもあります。
ドキュメンタリー内で妹さんが話していたように、単純に「野獣vs村人=エイズ患者vs当時の偏見」というような作品作りをしていたとは、私も思いません。
ただ、病や差別に苦しんだ経験は、彼の創作の引き出しとして、より登場人物に共感し深みを出す役に立っていたのではないかと考えています。
またその一方で、病で視力や声、"人間の力"を失っていく中で人間の暮らしの美しさとそれを取り戻す希望を描いた《人間に戻りたい》を書いた彼の心境を想像すると涙が出てきます。
映画のプロモーションでウォルトディズニーワールドに行き『リトル・マーメイド』のパレードを見た際、既にエイズの診断を受けていたハワードは「自分の死後も作品は生き続ける」と涙を流したというエピソードが残っています。
死の間際まで曲を書き、映画に携わり続けたハワード。
ディズニーで活動していた期間は決して長くはないもの、関わった3つの映画はディズニー屈指の人気作となり、舞台化・実写化もしました。
『美女と野獣』の《人間に戻りたい》や『アラジン』の《自慢の息子》のように舞台化で復活した楽曲もあり、アランはハワードの死後もキャリアが上がり続けていると感じたそうです。
また、東京ディズニーリゾートではご存じの通り3つの映画が全てテーマエリア化されており、ショーやパレードでもひっぱりだこ!
死後35年経った今、海の向こうの日本でも、作品を通じて貴方が生き続けているということに、1ファンとしてハワードに伝えられたらいいのに…と思います。
次回のブログでは、ハワードとアランの楽曲《シェリダン・スクエア》をご紹介するとともに、サックスで演奏した動画を掲載します。
