本日は、ディズニー映画『ノートルダムの鐘』のスクリーンデビュー30周年!
来月には劇団四季のミュージカル版も大阪で上演予定ということで、タイムリーな作品です。
ディズニー映画の中でも特に社会的なテーマを扱った今作は、私の中では観るのに気合いがいる作品ではあるのですが…その心に訴えかけるメッセージと美しい絵、何よりもアラン・メンケンによる重厚な音楽が素晴らしく、大好きな作品の1つです。
“I Want”ソングである《僕の願い》やヴィランズソングの《罪の炎》等、好きな曲はたくさんあるのですが、昨今の世界を鑑みて、今回はこの曲をアルトサックスで演奏しました。
『ノートルダムの鐘』より
ゴッド・ヘルプ
God Help the Outcasts
(アラン・メンケン作曲、
スティーブン・シュワルツ作詞)
https://youtu.be/UWhxmwE7cMY?si=IPTrad3fnJsnAOo7
※「ジプシー」は現在では差別用語とされておりますが、映画に合わせて本ブログでは使用します。
ヒロインであるジプシーのエスメラルダがノートルダム大聖堂で祈るこの曲。
同じシーンの候補曲として2年前に演奏した《サムデイ》も作られていましたが、厳かな大聖堂の雰囲気に合わせ、より静かな曲調のこの曲が採用されました。
作詞を担当したのは、後に『ウィキッド』を作ることになるスティーヴン・シュワルツ。
『ウィキッド』や『ポカホンタス』同様、この映画でも鋭く深いメッセージのこもった歌詞を多数残しています。
正義の名の下にジプシーの迫害を推し進めるフロローが、さらにカジモドに対する街の人々の乱暴も止めなかったことに意を唱えたエスメラルダ。
キリスト教徒ではない彼女が、フロローから逃れるために入ったノートルダム大聖堂で初めて神に祈るのがこの曲です。
神が本当に祈りを聞けるのかも、そこにいるのかも分からない。
ジプシーである自分の祈りは聞き入れられるものではないのかもしれない。
でも、貴方(キリスト)も自分と同じように、かつては迫害された者だったのでは?
と語りかける冒頭からは、彼女の聡明さと謙虚さを感じます。
そして、貧しく虐げられた者たちを救ってほしいという祈りの部分。
慈悲など無いようなこの世で、仲間たちを救えるのは貴方だけ。
虐げられた者たちも皆神の子、どうかお救いください。
悲惨な社会でも弱者に目を向け、希望を求め続ける切実な訴えに胸を打たれます。
この曲で取りわけ鮮やかなのが、大聖堂に集う信者たちとエスメラルダの対比です。
自らの富や栄光を求めて祈り、天に向けて手を伸ばす信者たち。
対するエスメラルダは俯きがちに「あたしは何も求めなません。でもあたしより不幸な大勢の人たちをお救いください」と歌います。
シュワルツが意識していたかは分かりませんが、この対比は新約聖書の「『ファリサイ派の人と徴税人』のたとえ」(ルカによる福音書18.9-14)を思い起こします。
※戒律を厳格に守っている人の「自分は他の人より正しい」という驕りのある祈りよりも、世間から罪人とされる人の謙虚な祈りの方が尊い、というような内容。
宗教に限った話ではありませんが、人間は正しいとされる方に属していると、いつの間にかそうではない人を見下し否定してしまうもの。
流されやすい民衆の恐ろしさや信仰・正義の名の下に他者を糾弾する危うさを描いた今作らしく、この曲も単なる祈りではなく「自分と違う人」を否定することへの警鐘でもあるように感じます。
人権を軽視するような動きが増えてきている今だからこそ、この作品の伝える「驕りを捨てて他者を受け入れること」や「虐げられる人を無くすために声を上げ続けること」といったメッセージを心に刻んでいきたいですね。
