副題 黴との対話 その3
「この“それ”こそがあんたらが誇って来た医学の根本を揺るがす一点じゃよ。
汚物を汚物で固めることで病気が解決したと思い込んだことさのう~~。それがまず勘違いの第一歩。
そして、そのことによってわしらが活躍する場ができたということじゃ。
その後、おまえたちの科学の進歩とやらがわしらの発見を機に、病気の正体のほとんどをわしら“ばい菌”に見た。ということは、大自然の摂理をまことに理解できていない浅知恵から出発したためじゃ。
(浅知恵、浅知恵って、よくもこうも人間をばかにして!・・)
オレは怒り出そうという思いをやっとの思いでがまんしていた。
「ホッホッホホ~・・あんまり、怒りなさんな。これもすべて神のおぼしめし。おまえさんたちにあまり早く病気の正体を見つけられたら、すべて水の泡じゃい・・
「え?なんで、なにが水の泡なんですか?」
(オレはばい菌の親分の言うことの意味が分からなかった。)
「それについての話はまた別の時に・・・。とにかく、わしらは汚名を晴らせればそれでいいんじゃからな。めんどうな問答はしておれんわい。それにわしも早く役目を果たして消えたいわい。」
ばい菌は話をはぐらかしてしまったので、オレはその後のことは聞けなかった。
「え~っと、どこまで行ったかいな?
お、そうそう、病気の正体を教えるとこじゃったわい。で、浅知恵のため、勘違いしたお前たちはその病気を止めようとしたんじゃな。自然が掃除しようとするのを押さえ付けようとしたんじゃ。薬と呼ぶ毒を使ってじゃな。」
「だってそうでしょう。苦しみを早くとってしまわないと・・」
「おまえたちにとって、病気という掃除は苦しいからのう~。
はやく苦しみを取ってやらなきゃ・・はやくしないと死んでしまう・・
そりゃあもう、不安だらけじゃな、そこにあるのは。
早く、はやく、ハヤク・・・これが、おまえたちの合言葉じゃあないのかい?」
「そうですよ。早期発見早期治療・・これが一番に大切な事なんじゃないですか?」
ばい菌はそれには答えず、話しを続けた。
「自然は汚れを掃除しようとする。そして、あんたがたが病気と呼ぶ浄化作用が始まる。すると、おまえさんたち人間は、苦しいから、それを止めようとする。
そこにおおきな問題があったわけじゃ。」
「問題って?それに苦しいのを止めるのはあたりまえじゃないですか?
なにが問題なんですか?」
ばい菌はチョイチョイと人差し指を振って、(あれ?ばい菌に五本指なんてあったかな?)いかにもチガウという振りを見せた。
「問題はふたつある。
一つは、からだの中の汚物が出ないままで居る。
したがってその汚物は何かの障害を与え続ける。結果は将来にわたって人類の子孫は存続できないほど身体の中はメチクチャになってしまうだろう。
この事は、最近おまえたちの間でも話題沸騰している環境ホルモンとか言う問題で分かって来たじゃろうがな。人間様はよくもこうおもしろい名称をつけるのがうまいんだろう。頭がよいからのう~。
けどな、あタマにキズは、かたいイシ(意志)にありそうかな、うん、イシあたまというじゃろ。ひゃっひゃっひゃ~。」
(・・・こいつう~馬鹿にしている)
「もう一つは、汚物を出さないようにするため、汚物を使った。」
「汚物を使った?」
「そうじゃ。それをさっき言ったんじゃろうがな。自然界から取り入れた物を薬とやらと言って、それで病気を治すと信じてしまったんじゃ。
それが“薬毒”じゃよ。そして身体のなかで汚物となる」
「薬がですか?え~~~!病気を治す、あの薬ですかあ~~~??」
オレはなんともあきれたてて聞いた。
「そう驚くな・・・・どうじゃ!カタイ頭がわれそうじゃろう。ふふふふ~~。」
「薬がなんで汚物になるんです?」
「なんのなんの、おまえたちが薬と呼んでいるのは、いろんな性質をもった毒だからのう。それが身体のなかで、いつかは本来の性質の毒素に戻ってしまうんじゃ。
その毒素は時間とともに変化して、いろんな汚物となって溜まりこんでしまうから、身体の“自然良能力”はいつか排除作用を起こす。
それで、いつかまた“病気よこんにちわ”となるわけじゃのう。
これではキリがないのう、病気を止めるだけでも汚物が出ないのに、これでは汚物を増やすばかりじゃからのう。」
オレはばい菌の言うことを信じられなかった。
「でも薬で病気が治るなら、毒でも仕方がないじゃないですか。そのためにもキチンと使用法を守って・・・」
オレは食い下がっていった。
「そ
う、たしかに薬で病気が治る・・様にも見える。しかし、それは症状が一時的に抑えられただけのことじゃ。なぜなら、病気の原因は体の中に溜まった毒素だか
らだ。その毒素の浄化作用が起きると苦痛がともなう。つまり、毒素の排泄作用が病気の本筋で、苦痛はそれに伴って起きる従属した症状じゃ。
“従”の症状を抑えてつけたところで、“主”の排泄作用が解決するわけではない。
だから、医学は対症療法だと言うであろう。
それじゃあ、なぜ薬でその症状が抑えられるかというと、汚物毒素排除の浄化作用を起こすのは人間の生命力、活力である。その力を弱めるならば、浄化は止まってしまう。
生命力を弱めるのには、毒が一番効くんじゃ。
つまし、毒を入れると浄化力が弱まり、それに伴う苦痛症状も弱まる。
これが薬と呼ばれて来たものの正体じゃ。
そりゃあ、『薬』ったって、いろいろな働きがあって、いまの様な単純な説明では不満じゃろうが、根本はそういうことじゃな。
だから、薬という汚物を入れて人間のからだを健康にしようってんだから、わしらは笑ってよいものやら、哀れんでよいのやら・・
これじゃあ、いつまでたっても病気は減るどころか増えるというもんじゃなあ。
病気を治すという薬そのものが、病気の発生の元となる汚物なんじゃからのう~~。」
ながい説明を聞いていたオレはなおも食い下がって聞いた。
「う~~ん。それじゃあ、ばい菌が出す毒素という説はどうなるんですか?」
その4につづく