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第九章 研究を名目としたマーケティングの偽装
開発した薬をどうしたら大ヒット薬にできるか。
方法は二つ。
一つは承認された疾患以外について臨床試験をして承認を受けること。
もう一つは、適用外使用を推進することだ。
医師はいかなる薬でも合法的に処方できるからだ。
そこで、臨床上の問題に対して偽の研究で偽の結論を出す。
その情報を偽の教育で医師に流布し、医師たちが偽の情報に基づいてたくさんの処方を書くように仕向ける。賄賂やリベートが事を円滑に進める。
製薬会社が教えてくれることは、なんでもかんでも薬を使うことに結びつくことばかりだ。
それに加えて、医師はマネージドケアのせいで限られた時間内で患者を治さなくてはならなくなり、いきおい薬物療法に頼りがちだ。
結果として、病気を治すためにはもっと良い方法があるにも関わらず、患者はたくさんの薬を飲まされることとなる。
NIHがスポンサーとなって行われた成人発症糖尿病のハイリスク群に対する発症予防の大規模臨床試験の結果をみれば明らかだ。
3年間プラセボを投与した群の29%が糖尿病になった。メトフォルミン(大ヒット薬であるブリストルマイヤーズスクイブのグルコファージのジェネリック)を投与した群では22%だった。
だが、適度な食事療法と運動プログラムを行った群ではわずか14%に過ぎなかったのだ。
第十章 パテント・ゲーム 独占権の引き伸ばし
製薬会社の仕事の中で、大ヒット薬の独占権の引き伸ばしほど儲かる仕事は無い。(特許商標局から与えられる特許と、FDAから与えられる排他的販売権の二つがある)
過去20年間に製薬会社に甘い数多くの法律や規制ができた結果、独占権の期間は異常なほど引き延ばされてしまった。
ブランド薬のメーカーがジェネリックのメーカーを訴えると、内容が何であるかにかかわらずFDAによるジェネリックの承認は自動的に30ヶ月先送りされる。
第十一章 支配力を買う 製薬業界はやりたい放題
ビッグファーマの圧力は政府のあらゆる層に及ぶ。
その力の大きさは2003年に処方薬給付をメディケアに盛り込んだことに如実に表されている。
1965年にメディケアが作られたときは、このような形で外来患者の処方薬への給付は必要なかった。いまほど大量の処方薬を飲んでいなかったし、薬価も安かったのだ。
しかし今では高齢者などは毎年自腹で何千ドルもの金を払っているのだ。
だが、議会はメディケアが購買力を行使して薬価を値切るのを禁止する法律を作った。メディケアは製薬会社がつけてくる売値に文句を言えない。この仕組みがビッグファーマにとって何と都合がいいことか。
購買力で言えば最大の組織であるはずなのに、メディケアには値引き交渉ができないのだ。
無論メディケアには薬剤給付が必要だ。
だが、それはメディケアプログラム自身が行うべきだし、そうすれば他の巨大な購買組織のように価格交渉ができるようになる。
では議会はなぜそうしないのか。
製薬業界は2002年の時点で675人のロビイストと9100万ドルの費用を使った。
また製薬会社の業界団体も97年から02年までの間にロビイングに4億7800万ドルを使った。
夥しい額の政治献金もしている。99年から2000年の間の選挙期間中に2000万ドルもの献金を行い、さらに規制を受けない献金で6500万ドルを出したのだ。
そして連邦議会の最大の贈り物は、製薬会社の支援を受けた民間会社が、メディケイドで適用外処方として処方された薬を償還するかどうか決めていいとしたことだ。
例えばトムソン社は参加に医学教育コミュニケーション会社と処方リストを作る会社の双方を持っている。そしてこの会社は、他の2つの組織(非営利団体)よりも2倍もの適用外処方を認めているのだ。
政府最大の医療保険プログラムであるメディケイドにおける適用外処方は全処方の半分になるのだ。
また、連邦議会はFDAが製薬業界から金を受け取るようにさせた。製薬会社はFDAに審査料を払うことになったのだ(一品目あたり31万ドル)。つまりこれによってFDAは規制しているはずの製薬業界に依存するようになってしまったのだ。
さらにFDAは医薬品承認に関する18個の常設委員会を通じて製薬業界から圧力を受ける。
これらの委員会の委員の多くは製薬会社との間に金銭的な関係がある。
むろんそういうことを禁ずるルールはあるが、FDAはそうした人物からのアドバイスが不可欠としてルールの適用を避けている。
92%の委員会では少なくとも一人の委員に金銭的な利益相反があり、55%の委員会では半数以上の委員に利益相反があったとされている。
第十二章 宴のあと
先進国の中で薬価規制が無いのはアメリカだけだ。だから大体三分の二の値段で同じ薬が売られるカナダに多くのアメリカ人は買い出しに出かける。
だが、実はこれは違法なのだ。
表向きにはアメリカ人を偽造薬から守るということだが、本音はカナダとの価格競争から守るためだ。
それでも2003年にはカナダでアメリカ人が購入した薬は11億ドルにもなったという。
そこでビッグファーマはカナダへの出荷を制限し始めたのだが、これによりカナダ国内の薬も不足し始め、皮肉なことに規制を受けていない薬が市場を形成すると言う、規制の目的とは逆の結果が生まれたのだ。
この数年、製薬業界は連邦検察官、州司法長官、内部告発者、消費者グループ、個人などによる多くの訴訟に見舞われている。
これらは薬価の不当吊り上げによってメディケアやメディケイドから不当に金を騙し取っているという話や、医療機関にも不法を勧めているというものだ。(医療機関は製薬会社から安く仕入れ、メディケアやメディケイドには定価を請求する)
そしてビッグファーマにとって最悪の問題は新薬の開発が先細りだということだ。しかしこれは製薬会社の運が悪いからではない。リスクの高い研究はよそ任せにし、自分たちはゾロ新薬を作ることだけに専念していた報いなのだ。
2002年には上位10社の画期的新薬はついにゼロとなった。(2003年には3つ)。
これだけ生産性が乏しいのに、どこを向いて「アメリカの製薬業界には創造力がある」「薬価を押さえたら大切な命を救う薬が作れなくなります」といえるのか?
第十三章 製薬業界を救え 活きた金を使おう
改革の理想像として「新薬は必ず既存の薬と比較するようにする」というのは政治的意思があれば一夜にして実現可能だろう。
「特許法の改正」「統一価格制の導入」などはその波及範囲は広汎である。
この問題点は著者が本書で示した以下の7つの問題に対する方策である。
?製薬会社が作り出しているのはゾロ薬ばかりで、画期的新薬は少ししかない。
?FDA(アメリカ食品医薬品局)は本来規制する対象であるはずの製薬業界に隷属してしまっている。
?製薬会社が自社の製品が関係する臨床研究に干渉しすぎること。
?特許や排他的販売権の期間が不必要に長く、いかようにも延長できること。
?製薬会社が自社の製品について、医師の教育に干渉しすぎること。
?研究開発、広告宣伝、薬価算定に関する情報が公開されていないこと。
?薬価が高すぎること、不安定なこと。
■ゾロ新薬から画期的新薬へ
特許庁の審査官はいくら特許審査の数をこなしても、報酬は特許を与えた物件の数に従う。これが故にどんどんと特許を与える傾向にある。労働時間に応じて給料は支払われるべきである。
また、FDAはプラセボとの比較ではなく、既存の薬との比較データの提出を求めるべきだ。
■FDAの立場を強めよ
FDAは製薬業界に依存しすぎており、独立性を高める必要がある。
まず処方薬審査料法を廃止すべきだ。薬の審査ごとに支払われる金がFDA職員の給料に化けているのだ。FDAが審査する薬の数が多ければ多いほどFDAが潤うというのは利益相反だ。
そしてFDAに対する国の予算を増額すべきだ。
■臨床試験を検査する機関を作れ
製薬会社が主体となった臨床試験は、製薬会社に有利な結果が出やすいことがはっきりとしている。
そこで、製薬会社に収益の一部を拠出させ、NIH内に処方薬の臨床検査を管理させてはどうか。
■独占販売権を制限せよ
排他的販売権の有効期間は長すぎるし、あまりにも簡単に延長できすぎる。これが処方薬の値段が高くなる原因だし、ビッグ・ファーマが節操無く設けられる元になっている。ジェネリックの参入をこれほど長く妨げてよいという法的な根拠はどこにもない。
現在は登録されてから20年だが、これを例えば薬が市販されてから6年といった具合に変えるのだ。こうすれば臨床試験で時間がかかってしまい、独占販売できる期間が短くなると言うことも無くなる。
■ビッグ・ファーマを医師の教育から叩き出せ
製薬会社は医学部や教育病院に金をつぎ込み、ほとんどの医師生涯教育コースを後援し、多くの学会に補助金を出している。
これが教育内容に影響を与えないはずがない。
医師は偏った情報を与えられるだけでなく、薬物療法中心の医療を勉強することになる。(そして、新しい薬が常に古い薬よりも優れていると思い込まされる)
■ブラックボックスを開けよ
薬価は公正であるべきなのは勿論、あらゆる買い手に対してできる限り適正かつ全国共通のものでなければならない。薬の利益はまだまだ大きいのだから、マーケティング費を削れば思い切った値下げをしても十分に利益がでるはずだ。
製薬業界は、ギリギリの線でどうにかこうにかやっているのではなく、近年はフォーチュン500に掲載されている他の会社の利益の3~6倍も儲けているのだ。
■最後に
皆さんが命じなければ、議員が製薬業界に立ち向かうことはない。本書は読者を事実で武装するために記された。
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