奈良ロイヤルホテルの大浴場
「天平の湯」にはサウナがあり、
その入口に貼ってあるポスターをみて、
僕は違和感を覚えた。

 

「熱波ロウリュ」

 

熱波師と呼ばれるパフォーマーが
勇ましくバスタオルを振り回し、
利用客に熱を浴びせる姿が描かれている。

 

 

 

ロイヤルの称号を掲げる

高級ホテルにあって、
この大衆的なイベントの

開催に踏み切った支配人の英断に、

僕は目を細めた。

 

プレミアムVIPサウナ

「アーユルヴェーダ」

みたいな感じのやつよりも、
祭のような力強さと
そこはかとない哀愁を感じさせる

こちらのイベントの方が
ずっと面白いに決まっている。

 

ただ残念ながらこの日は開催されておらず、
「僕もサウナのダンスみたかった」

とロウリュの趣旨を誤解する息子がとても悔しがった。

 

 

 

 

しかし、だ。

 

 

 

 

僕がほんとうに

がっかりしたのは
ロウリュではなく、
「朝食バイキング」だ。

 

 

 

 

 

親子で一番楽しみにしていた
「ステーキらしきもの」

いくら探しても、

どこにもなかったのだ。

 

ポスターをよく見ると
とても小さな文字で
『仕入れ状況により、

予告なくメニューの一部が

変更となる場合がございます』

書いてある…。

 

この誇大広告まがいのポスターから、
僕は「昭和の残り香」
胸いっぱい吸い込む一方で、
格安料金での立派なホテルの経営が
いかに苦しいかをあらためて知った。

 

 

 

とどのつまり、

いろいろあったが、

奈良ロイヤルホテルと

その一帯で過ごした一日を

僕は心から満足しているのだ。

 

ガードマンの方から受けた親切も、
ポークが抜き取られたおにぎりの味も、
写真とは異なるバイキングの意外な旨さも、
損得勘定からはみえてこない人生の妙味があった。


小学4年生の息子にとってもこの旅は、
夏休みの最後を飾るにふさわしい
キラキラした記憶になるはずだ。

 

 

 

山籠もりから一転し、
ひょんなことから空手の特訓の舞台になった
「奈良ロイヤルホテル」だが、
このおかしな武者修行の旅は、
僕ら親子にとっての

かけがえのない財産になった。

 

この先息子が大きくなっても

親子の絆が固く

温かであり続けるよう願いを込めて

2人の思い出をこのブログに刻む――。

 

夏休み最終週、息子と武者修行の旅に出た結果【完】

 

 

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