失意の底に沈んだ娘の目がふたたび光を宿し、
「昼夜兼用おにぎり」の効果が切れた
夕暮れ時のUSJ――。
我が家の一大イベントが終幕に近づくなかで、
息子が恐ろしいことをいいだした。
「僕もあの骨付き肉が食べたい」
この日の予算として、
財布に3万円以上お金を入れてきたのだが、
すでに4000円ほどしか残っていない。
子どもというのは割としたたかで、
親が財布のひもを緩めているのを
きちんとみているものだ。
あのとき
魔法の杖を買ったのが
いけなかった。
しっかり者の娘は「我慢しなよ」と弟をたしなめるものの、
周囲をチラ見する彼女もきっとまた、
骨付き肉の存在が気になって仕方がなかったのだ。
思えば僕は会社を辞めて以来、
子供たちの聞き分けのよさに甘え、
ふたりにずっと我慢を
強(し)いてきたのではないか。
きょうは、
1300円の骨付き肉ぐらいで深刻にならず、
「初めての経験」をたくさん楽しんでもらおう――。
普段ではありえない
この発想が
最高の結果を生んだ。
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退職の経緯などをまとめた
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