会社に退職願を提出するとき、
その理由を正直に伝える人は、
ごく一握りに過ぎない。
辞める会社がどんなに好きでも嫌いでも、
本音を明かすのは基本NGになり、
場合によってはマナー違反になるためだ。
とくに40代の退職理由は大義名分こそが肝といえる。
逆にもし僕が上司に退職願を提出するときに、
ほんとうの理由を明かしていたら、
どうなっていただろうか。
僕の退職理由とはつまり、
要約すればこういうことだ。
きっと正気を疑われ、
気の毒がられていたに違いない。
仮に僕が上司側の立場だったら、
全力で引きとめていただろう。
もちろん、実際に僕が伝えた退職理由は
「建前上のもの」だった。
だけど唯一、
妻以外に真実を明かしてしまった相手がいる。
それは義理の父だ。
あの頃の僕はきっと、
どうかしていたのだ。