僕らはロボットをちゃんとプログラムできるのだろうか?アシモフのロボット工学の三原則を知ろう! | チャンクロブックスー教養人への冒険

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今AIブームでロボットの議論は盛んだが、ロボットに関する原理的な考察でこのSFの古典ほど人に読ませる力をもったものはあまりないのではないかと思う。

ロボット技術に対してすばらしい未来を期待すると同時にロボットは人間の存在を潜在的に脅かす危険があるのではないかと何となく僕らは不安に思っている。

では、その不安を取り除くために何ができるんだろうと思うわけだが、著者アイザック・アシモフは有名なロボット工学の三原則を提示する。
 

アイザック・アシモフ

Isaac.Asimov01.jpg

 

*ロボット工学の三原則

第一条「ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。」

第二条「ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。」

第三条「ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。」


まあ、とりあえずロボット三原則を守ったロボットなら安全でしょうという設定なのだが、ことはそう単純でない。

魅力的なロボットのストーリーを追っかけていると、三原則を守ろうとしても論理的な矛盾がどんどん出てきて、安全、安心なロボットは原理的に作れるのか、仮に作れたとしたら、人間とロボットの違いは何なのか、という疑問が頭の中に不協和音として響いてくる。

 

その不協和音が頭の中で鳴り響いたものはロボットに対し感情的なレベルで反発するのでなく、ロボットを通して哲学的考察を実践し、不穏な音を鎮めようと努めないといけなくなる。

 

*どんなに素晴らしい規則を作っても、矛盾が生じる事態は、クリプキの『ヴィトゲンシュタインのパラドックス』を思い出します。

 

 

「『探究』の第二〇一節において、ウィトゲンシュタインは次のように言っている、「我々のパラドックスはこうであった。即ち、規則は行為の仕方を決定できない、なぜなら、いかなる行為の仕方もその規則と一致させられうるから。」(ソール・A・クリプキ『ヴィトゲンシュタインのパラドックスー規則・私的言語・他人の心』産業図書、p.11。)

 

麦わら帽子がお似合いのクリプキ

 

クリプキが言及しているヴィトゲンシュタイン

 

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ヴィトゲンシュタインは以前『論理哲学論考』について書きましたね。

https://ameblo.jp/akushiroreshi/entry-12554762882.html

 

 

 

 

「規則は行為の仕方を決定できない」はかの有名なクワス算の問題に関係してきます。68+57の答えが5になるという、初めて見ると何が何やら訳の分からん話ですが、論理的には筋が通っている話です。

もし、x,y<57ならばx y = x+y

そうでなければx y =5

によって定義される。誰が一体、これは私が以前に「+」によって意味していた関数でない、と言うのだろう。」(ソール・A・クリプキ『ヴィトゲンシュタインのパラドックスー規則・私的言語・他人の心』産業図書、pp.13-14)

 

クリプキの入門書としてはこちらを紹介したことがあります。

https://www.instagram.com/p/BpeP2VInjrc/

 

 

 

*また、矛盾を含まない完全な公理系などないと証明したゲーデルの議論も完全なロボットを作ることができるのかどうか考える上で重要になってくると思います。

 

 

 

話が大幅に脱線したので元に戻そう。

 

人間が作ったものが人間に反逆するのではないかという恐怖(フランケンシュタイン・コンプレックスと本書でアシモフが名付けたので有名)に対し、SFの傑作は冷静に向き合わしてくれる。けど、読み物として面白く読者の想像力を掻き立てることを忘れない。

アシモフの精緻な創造物ここにありです。 

 

*フランケンシュタインについてはこちらの記事を参照

https://ameblo.jp/akushiroreshi/entry-12543315300.html

https://ameblo.jp/akushiroreshi/entry-12543757133.html

 

 

*A.Iに関しては新井先生の本をぜひ一読して、AIがどのような仕組みで動いているのか理解するのがいいかと。

先生によれば、AIは論理、確率、統計に基づいて動いているため数学的限界があるそうです。AIは決して意味を理解して何かを処理しているわけではないそうです。

https://www.instagram.com/p/BmH5RsjnF3R/

 

 

*本作を原案にしたウィル・スミス主演のアクション映画。
アシモフの作品の魅力はアクションではないと思うんですがねぶー

 

*こちらは『われはロボット』の姉妹編短編。

 

 

*ロボットに関する映画としては以下の作品はおすすめです!

 

性的な欲望をロボットで満たすのはどうなんでしょうね?

 

これもアシモフ原作ですね。

 

 

さすがスピルバーク監督といった作品ですね。

 

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*それにしても、西洋の文脈ではロボットに対する不安(フランケンシュタイン・コンプレックス)があるのに、日本人はあまりロボットに対して抵抗感がないように思います。アラレちゃんもドラえもんも僕らの日常に普通に溶け込んでいます。

 

 

 

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