鷲田清一『ちぐはぐな身体-ファッションって何?』筑摩書房。
https://note.mu/kurohon96/n/n11294eddfb98
を紹介しました!ノートでは本書の軽い紹介だったので、こちらでは真面目な紹介をしようかと。
服って何で着るんだろう?何でファッションを楽しむんだろうってことを考えるきっかけになるかと。
僕らは自分の身体全体をちゃんと見れているわけではない。だから、身体のことをちゃんと見て気にかけているわけではない。
例えば、背中が実際どう見えるのか分からない。あと、顔。僕らは鏡に映った顔は分かるけど、他人が見ている自分の顔は本当のところ分からない。
まあ、僕らは自分の身体をちゃんと見ることはできないけど、人からこんな風に見られているんだろうなと想像をして、ファッションを楽しんでいる。
他人に自分の身体をこう見てもらいたいって思って、服を着こなすことで、色とりどり、形とりどりに自分の身体を変えていく。
こんなことが可能なのって、人から自分がどう見られているんだろうかって意識している身体がすごくイメージに依存したものだからなんだよね。
どうも僕らの身体は物理的に客観的に存在しているっていうよりも、物理的な身体にイメージをまとって「ちぐはぐ」にあるみたい。
この「ちぐはぐ」にある身体にまとう服は、人に何かしらのイメージを付与することでアイデンティーを与えて、安心させることもあるけど、ときにすごく抑圧的に働くこともある。
それは制服を考えればよく分かるかと。
制服を着ることで、自分が組織に受け入れられていると思えることもあるけど、逆に制服によって型にはめられるのは嫌っていうときもあるはずだ。
別に制服じゃなくてもいいけど、なんか決まったパターンの服って同じような事態に陥っているもの。
ああいうファッションをするのは、清楚系だよね、スポーツ系だよね、オタクだよね、と服で人をラベリングするみたいなことはしているもの。
こういうラベルに意識的に染まって気が楽になることもあるけど、これに対して抗いたいときっていうのもある。
この抗いをファッションの前衛派は実践する。そんな日本人が何人か本書では紹介されている。三宅一生、川久保玲、山本耀司とか。
ファッションという身近なことを題材に軽やかな語り口に思想を展開していく手際は見事というしかない。
思想に興味はあるけど、難しそうっていう人にはいい入り口かと。受験現代文の勉強にもおすすめ。