私は、人生の中で、
かなり、コンサートに行っていると思う。
その中で、
「最初の1音か、2音」で
感極まって、
涙腺が緩んでしまう。
という経験を
何度か、したことがある。
コンサートが始まって、
最初の1音、2音
と言うことは、
「音楽」による感動ではない。
「音色」による
圧倒的な心の揺さぶりだ。
神々(こうごう)しく、
威圧感があり、
圧倒され、
こんな音の世界があるのかと
気絶しそうなほど、
胸が締め付けられた。
その
「音色のみの心の揺さぶり」を
ピアノで感じたことがない。
ピアノの良い演奏は聴いたことがある。
ピアノの美しい音色を
聴いたこともある。
「ピアノ曲」という
「曲目」になれば、
心がぎゅっとなる感動を
味わったこともある。
だけど、それは、
「作曲家+演奏テクニック」による
感動であって、
「楽器特有の音色」ではない。
私は、ピアノの音が
本当は好きではないのだろうか?
レッスン中に、
「この編曲作品は、
減衰楽器では
私の望むようになんて
仕上がるわけないよな。」
と考え、
聴いていることが
けだるく、
何を言っても
無意味に思った。
ちなみに、
最初の1音の音色だけで
胸が締め付けられて
涙腺が緩む経験をしたのは、
ヴァイオリンとか、
バンドネオンとか、
クロマチックハーモニカが、
すぐに思い出せる。
どこの会場で、
誰の演奏だったかも
すごく良く覚えている。
最近、
クラシックでも、
タンゴでも、
管弦楽器やバンドネオンなどが
やるべきパートを
ピアノソロ用に編曲された
楽譜を持って来る人が多いが、
正直言って、
私は、どんな編曲であろうと、
物足りない。
減衰楽器で、
この曲の良いところなど出るわけない。
そう思ってしまう。
犬に、ネコの鳴きまねを
してみろと
言っても仕方がない。
楽器には、特性があり、
むかない楽曲と言うものがある。
減衰楽器にも情緒はあるが、
色気はない。
他の楽器からは、
喘(あえ)いだり、
悶(もだ)えたり、
金切声(かなきりごえ)が
聞こえるが、
ピアノから、
そんな音を出せる人を
見たことがない。
もし出せる人がいたら、
ただ、
ピアノが壊れているだけだろう。