『正義の行方』 NHKのドキュメンタリーは素晴らしい! | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

 

悪食 70点
今年 51本目

監督 木寺一孝

2022年4月にNHK BSで放送され、2022年度文化庁芸術祭、テレビドキュメンタリー部門大賞を受賞した「正義の行方 飯塚事件30年後の迷宮」の劇場版。
渋谷ユーロスペースへ。

鑑賞結果、飯塚事件の犯人として死刑になった久間三千年。冤罪だったのか?それを警察、検察側と弁護士側の両立場で描いたのは面白い。

ここからネタバレ満載でいきますからご注意を⁉️



1992年、福岡県飯塚市で2人の女児が行方不明となり、甘木市(現、朝倉市)の山中で遺体で発見された。


2人の女児は犯された後、殺された。


鬼畜の所業である。


この事件は飯塚事件と言われた。
1994年に容疑者として逮捕された久間三千年は、一貫して犯行を否認。
しかし目撃証言と、当時行われ始めたDNA鑑定で犯人と特定され死刑判決が言い渡された。
1998年に異例とも言われる速さで死刑は執行された。
しかし翌年には冤罪を訴える再審請求が行われた。
この映画はこの事件をめぐり、当時この事件に関係した、警察官や刑事、新聞記者そして弁護士がそれぞれの立場から語られる「真実」と「正義」をもとにこの事件の全貌を描いている。そしてその中から日本の国の司法の姿を浮き彫りにしている。



1992年、通学途中の女児2人が突然行方不明となった。
そしてしばらくすると30km離れた甘木市の山中で死体となって発見された。
遺体には犯された跡があり、体内からは犯人のものと思われる体液が採取された。
その体液のDAN型と、当時、目撃された紺色のダブルタイヤのワンボックスカーを持っていた久間三千年が犯人と目され逮捕された。
しかし久間は一貫して犯行を否認。
しかし証拠によって有罪とされ死刑判決が言い渡された。
弁護士は控訴をしたが棄却。そして次なる手を考えていた1998年に、久間は異例の速さで死刑が執行された。
納得出来ない弁護士はボランティアの弁護団を結成し、翌年、久間が死刑に処されたにもかかわらず、再審請求を裁判所に提出した。



ここに至るまでの話を当時担当していた警察官、検察官、新聞記者、弁護士、果ては目撃者や遺族に至るまで、話を聞き、ドキュメンタリーにまとめたのがNHKであり、それを主軸にこの映画は作られた。

この映画の中でも犯人が久間三千年だったかどうかの判断はされていない。
分からないのだ。
逮捕され、勾留されてからも久間は何も語っていない。
坦々と、双方の立場からの話を聞いてまとめているだけなのだ。
問題になったのが、当時のDNA鑑定。今では精度が悪過ぎて採用されない鑑定法だったが、当時は最新式の鑑定法として脚光を浴びていた。
そのDNA鑑定に証拠能力が無いとされても、久間が犯人とされるべき目撃証拠などがあると最高裁までもが棄却した。
日本は起訴されれば、99%有罪とされるそうだ。
冤罪はほぼあり得ないと。
しかし冤罪は起きている。
しかし受刑囚の死刑が執行されてしまった裁判に関しては、再審すら認められない。それは冤罪だった時の司法に対する風当たりを避けたいからなのか?と勘繰ってしまうほど。
「推定無罪」
「疑わしきは罰せず」
「疑わしきは被告人の利益に」
これらの言葉は意味を持っているのだろうか?
そんな司法のあり方は置いておいて、この映画の中立性が良かった。こういう映画が出来ると、多分にどちらかに肩入れしている描き方になりがちですが、この映画はそれが全くありません。
双方の主張をあくまでニュートラルに捉えて映し出しているだけです。
映画の中の主張も実際犯人かどうかは分からない。犯人かもしれないし、犯人でないかもしれない。だからこその「疑わしきは罰せず」が司法であるべきなのですが。

なかなか面白いドキュメンタリーです。
一つの事件の深掘りがメインなのですが、その裏には日本の司法に対するメッセージが込められています。
見応えのあるドキュメンタリーです。

興味のある方は是非、劇場へ。