『アイアンクロー』 家族の呪縛かプロレスラーの性か!? | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

 

悪食 80点
今年 30本目

監督、脚本 ショーン・ダーキン
出演    ザック・エフロン
    ジェレミー・アレン・ホワイト
      ハリス・ディキンソン
      スタンリー・シモンズ
      ホルト・マッキャラニー
      モーラ・ティアニー
      リリー・ジェームズ


アイアンクロー(鉄の爪)を得意技としたアメリカの伝説的なプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックの兄弟がプロレスラーを目指した実話。
渋谷TOHOシネマズへ。

鑑賞結果、家族の呪縛なのか?それともプロレスの呪いなのか?こんな家族だったのかと驚愕な想いで観る130分間。

ここからネタバレ満載でいきますからご注意を⁉️



1980年代、元AWA世界ヘビー級チャンピオンのフリッツ・フォン・エリック(ホルト・マッキャラニー)には4人の息子がいた。
ケビン(ザック・エフロン)、デビッド(ハリス・ディキンソン)、ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)、マイク(スタンリー・シモンズ)は父の教えに従いプロレスラーとしてデビューし、頂点を目指していた。


実直なケビンは実力はあるが華が無く人気はデビッドの方が上だった。


そしてチャンピオンベルトをかけたタイトルマッチの挑戦権はデビッドが指名された。タイトルマッチまでを巡業に回らなくてはならず、デビッドは1人日本にまで巡業に行っていた。しかしデビッドは無理がたたって日本で亡くなってしまう。内臓破裂だった。
そこからフォン・エリック家には悲劇が訪れるようになる。
デビッドに与えられていたチャンピオンの挑戦権はケビンが引き継ぐはずだったが、ケリーが名乗りを上げた。そしてコイントスでケリーが挑戦権を引き継いだ。


ケリーはチャンピオンになった。
しかしバイク好きのケリーはチャンピオンになって直ぐにバイクの事故で片足の足首から先を失ってしまうのである。
悲劇は続いていたのである。
そしてマイクは試合中に肩を脱臼したのだが、その治療中に高熱が発生し、昏睡状態に陥ってしまった。昏睡から覚めたマイクはとてもプロレスができる状態ではなかった。
精神的に病んでしまったマイクは自殺を図り亡くなってしまった。
ケリーは義足をつけてでもプロレスに復帰しようと練習を続けた。そしてなんと復帰したのだ。他の団体に移り、タッグチャンピオンにもなった。しかしそれ以降のオファーが無く、巡業の仕事しかなかった。精神的に追い詰められていたケリーは父親にプレゼントした拳銃で自殺してしまった。
ケビンは父親を責めた。何故、手を差し伸べないのかと。

ケビン(ザック・エフロン)はフォン・エリックという姓を変えた。呪われた名前を捨てたのだ。
その後、ケビンは4人の子供と13人の孫に囲まれて幸せな人生を終えた。
エンド。

という映画だ。
フリッツ・フォン・エリックというアイアンクローという技が握力だけというプロレスにそれは通じるのかと思うような技を引っ提げて頂点に上り詰めたプロレスラーだ。
その息子たちが同じプロレスラーの道に進み、6人タッグという変則試合では兄弟のチームプレー活かした無敵の兄弟と言われていたことは知っていた。
しかしその後、ケビンを残して全て亡くなっていたのは知らなかった。
呪われた一族と言っても過言ではないが、映画の中で描かれているフリッツはプロレスラー信者とも言えるプロレス教を愛する男であり、母親は敬虔なるカトリック教信者だった。
子供達は二つの宗教に縛られていたと解釈できないでもない。
悪食に言わせれば家族の呪縛と一言で片付けかねないが。
そんな家族の呪縛の中、1人残されたケビンはよくそわその呪縛から解放されたものだ。しかし裏を返せば、兄弟3人の命を対価にその呪縛から逃れたとも言える。

悲しい一族の話ではあるのだが、ただそれだけの実話という映画にだけに見えなかったのがこの映画の凄いところ。
プロレスを通して家族という世界を描き、家族という世界からプロレスを表した。
物悲しい映画ではあるのだが、どこか心を打つ。
特に1人生き残ったケビンは兄弟の中では一番長男らしいという弟思いの控えめな男だ。兄弟仲も言い方を悪くすれば気持ち悪いほど仲がいい。しかしそんな兄弟を1人また1人と亡くし、残ったのは自分1人。
フォン・エリックという姓が呪われているかどうか分からないが、亡くなった弟の分まで生を全うしたケビンが神々しくも見えた。
余韻が残るいい映画でした。

是非、劇場で。