『身代わり忠臣蔵』 役者陣が素晴らしい! | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

 

悪食 75点
今年 9本目

監督    河合勇人
原作、脚本 土橋章弘
出演    ムロツヨシ
      永山瑛太

      
川口春奈
      林遣都
      
北村一輝
      菅一郎
      
森崎ウィン
      柄本明

「忠臣蔵」をベースに身代わりという設定を入れた土橋章弘の小説の映画化。
平和島サンシャインシネマへ。

鑑賞結果、身代わりという設定は面白い。ムロツヨシの独壇場という映画ではあるが役者陣が頑張り、まあ面白い。

ここからネタバレ満載でいきますからご注意を⁉️


      
お布施を募る坊主が1人。しかしその出立は貧乏坊主どころか、乞食と変わらない。その正体は吉良家の三男坊、吉良孝証(ムロツヨシ)だ。

吉良家の三男として生まれた孝証は家督を継ぐことは出来ず、出家して坊主となったのだが、修業に嫌気を出してすぐに飛び出し、それ以来放浪するも困ると吉良家に無心に来ていた。
今回も無心に来るのだが、兄の上野介(ムロツヨシ)からは邪険にされ、追い返されるのであった。
上野介の家臣、斎藤宮内(林遣都)は馬小屋なら貸してやると言って、上野介と同じ様に邪険に扱った。



そのころ、江戸城では赤穂藩城主、浅野内匠頭が接待指南役の吉良上野介(ムロツヨシ)から陰湿ないじめに遭っていた。
上野介は、内匠頭を田舎者と馬鹿にして恥をかかせようとしていた。度重なる嫌がらせに堪忍袋の尾を切らした内匠頭は筆頭家老の大石内蔵助(永山瑛太)の忠告も聞かずに、あろうことか城内で刀を抜き上野介に斬りかかったのだ。額と逃げる背中に刀傷を負わせるも上野介を殺害するには至らなかった。


どんな理由があろうと城内で刀を抜けば切腹とされていた為、浅野内匠頭はすぐさま切腹を命じられた。
一方、吉良上野介は逃げ傷が元で瀕死の状態。しかし逃げ傷が元で死んだとなれば、武士の恥、お家劣り潰しにもなりかねない。慌てた家臣の斎藤(林遣都)は、孝証(ムロツヨシ)を身代わりにして幕府を出し抜こうと前代未聞の作戦が実行されることになった。



というとんでもない設定でかの有名な「忠臣蔵」が描かれていくのです。

一方、収まらないのはお取り潰しになった赤穂藩。喧嘩両成敗なら吉良家にも咎があってしかるべきと幕府に何度も書状をしたため、お家再興を願い出ていた。
血気盛んな赤穂藩を抑えながら大石(永山瑛太)はじっと機会を伺っていた。



そんな時に吉原で知り合ったのが、和尚に変装して屋敷を抜け出して遊びに来た孝証(ムロツヨシ)と大石(永山瑛太)。朝まで飲み明かすという仲になった。
孝証は大石の正体を早々に知るのだが、大石は孝証の正体は知らなかった。


そんな中で、孝証は赤穂浪士の言い分は理にかなっていると思っていた。
しかし吉良藩の家臣達も悪者であるわけではなく、家を守らなければならないと思っていた。



幕府はどうしたのかというと、世間の声を無視することも出来ず苦慮していたが、とうとう吉良家の江戸屋敷を江戸の外れに移すというお達しを出した。


これは暗に赤穂浪人に吉良上野介(ムロツヨシ)を討ちたければ討てと言っている様なものだった。
これで討ち入りは決まったようなもの。
しかしまともに戦えば双方にかなりの犠牲者が出ると考えた孝証は大石(永山瑛太)に正体を明かして、一つの提案をしたのだ。
それは赤穂家は吉良上野介を討てればいい。ならば、自分が手筈を整えるから自分だけを討ちに来いと。
孝証は自分の首を自ら差し出して両家の存続を願ったのだ。
大石は驚いたが、孝証の覚悟を知るとその計画に乗ることを決めた。


そして討ち入りの日、孝証(ムロツヨシ)の手筈で吉良家の者達は抵抗出来ないようになっていた。
孝証は自ら名乗り出て、打ち取られて終わるはずだったが邪魔が入った。


孝証は逃げるふりをして大石(永山瑛太)に自分の隠れ場所を悟らせる。
孝証が逃げたのは納屋だった。そこで大石に首を取らせようとしたが、大石は孝証の首を切ることは出来ず、塩俵を切った。
すると中から塩漬けになった吉良上野介が出てきたのだ。
斎藤宮内(林遣都)が身代わりを作ってしまったから葬式が出来ない。あまりに不憫だと思い隠していたのだ。
大石はその塩漬けの吉良上野介の首を刎ね意気揚々と吉良家を去った。



とこれで終わればいいところをなぜかこの映画はここからを面白くしようとしています。
何と吉良上野介の首をラグビーボールに見せかけた争奪戦です。
果たしてこのくだりは必要だったのでしょうか?
蛇足という言葉がぴったりな気がします。


大石内蔵助(永山瑛太)以下赤穂浪士は切腹という名誉が与えられ亡くなります。
孝証(ムロツヨシ)は家督を譲って静かに江戸屋敷を出るのです。
大石を亡くした喪失感がありながらも前を向いて生きるというところで終わります。

こんな映画なのですが、面白いのは何と言っても吉良上野介が刃傷沙汰の傷が元で亡くなっていて、それを隠す為に身代わりを据えるも討ち入りは起こるという設定が面白い。
そこに至るまでの孝証(ムロツヨシ)の気持ちの変化がもう少し深掘りできていたらいいなとは思いますが。家臣を家族と思うというのは悪くはないですが、少し安易な設定かも。
そこはムロツヨシが持ち前のキャラクターと演技力で補っているのは確かですが。
しかし、ムロツヨシと永山瑛太におんぶに抱っこかと思えばそうでもないのです。
吉良家家臣の斎藤宮内役の林遣都、清水一学役の寛一郎は素晴らしかった。林遣都のムロツヨシに負けないオーバーな演技。そして唯一と言っていいほど、キャラクター変化を見せない寛一郎。2人とも演技は見事でした。
内容はお気楽な忠臣蔵なのですが、そこそこ面白くしてくれたのはこの役者陣でしょう。
是非、劇場で観てやって下さい。