『コンクリート・ユートピア』 | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

 

悪食 80点
今年 1本目

監督、脚本 オム・テファ
出演    イ・ビョンホン
      パク・ソジュン
      パク・ポヨン
      キム・ソニョン
      パク・ジフ

大災害で荒廃した韓国ソウルを舞台に崩落を免れたマンションに集まった生存者によるパニックスリラー。
豊洲ユナイテッドシネマへ。

鑑賞結果、ゾンビの出てこないウォーキングデッドです。究極の選択を迫られた人間の本性が描かれている。

ここからネタバレ満載でいきますからご注意を⁉️



世界中で大震災が発生し、韓国、ソウルも未曽有の大災害にみまわれた。地面は隆起し、亀裂が走り、建物という建物を破壊して行った。


その中で唯一、倒壊を免れたのがファングンアパート。被災者が押し寄せ、問題を起こす中、ファングンアパートはオーナー以外の立ち入りを禁止するという方針を決めた。


住民代表になったのは、902号室に住むヨンタク(イ・ビョンホン)。ヨンタクは住民を守る為に自警団を結成し、食糧を確保する為に荒廃した街に捜索隊を率いた。


ヨンタクは権力者として君臨していくうちに徐々に狂気を露わにしていく。
住民の為には他者から奪い取ることも暴力を振るうことも罪悪感を感じないようになっていった。



とまあこんな感じで話は進行していくのですが、世紀末的な映画としては「マッドマックス」が挙げられますが、あれは世紀末からかなり世界がまとまりかけてきている状況を描いていますが、これはディザスターの末に人間が取るべき行動は?という基本の話。それは言わば「ウォーキングデッド」のゾンビのいない版というところでしょうか。
食べ物や住処を求めて力を合わせようとする者とそれを奪い取ろうとする者の戦い。そしてその末に見えてくるのは、生き残りをかけた戦い。その中には割り切った者。それでも人間を信じる者。コミュニティを守りたい者。生き残る為には手段を選ばない者と主義主張の違いが明確に出てくる。


それはディザスター状況に置き換えているだけで、今の現代社会の問題と何ら変わらない。縮図と言うべき世界です。
そして最終的に問われるのは、人間はどう生きるべきなのかという根本的問。
そんな映画です。

映画としては面白さを出す為に住民代表となったヨンソク(イ・ビョンホン)が実は住民ではなく、なりすましていたというどんでん返しがあったりします。


本物のヨンソクは既に殺されていたりするのですが、その理由も詐欺被害にあってこのアパートに住めなくなった男が詐欺師を突き止めて家に乗り込むのだが、話し合いが拗れた末に殺してしまったという理由があったりする。そしてその男は実はやはり家族思いの優しい父親だったが、大震災で愛する家族を全て亡くしていた。その家族の代わりにアパートの住人達を守っていたのがどんどんエスカレートしていく哀しい男であったりもする。
しかしその身分をバラされた時には、バラした女子高生を殺してしまうという怪物に変わってしまっているのだから、権力と究極の中での選択というものは、人間をここまで変えてしまうものかという人間の怖さを描いています。

韓国映画の良さで言えば、ここからさらに地獄のような人間の愚かさの末の世界の崩壊が描かれていくというお先真っ暗な悪食大好物のエンディングに向かうと期待したのですが、ここから何と邦画のような一筋の光みたいなエンディングへと向かっていきます。
もちろんそれに対しての犠牲というか哀しい結果を伴いながらなのですが。
しかし一般的にはこんな終わり方の方が受けるのでしょう。特に日本では。
悪食はその甘さがあまり好きではないのですが、2024年の元旦に能登で大地震が起き、それによって沢山の人達が亡くなり、被災されたことを考えると光は必要だなと思います。
この2024年がいい年になるかどうかはこれからの我らの行いにかかっているのですから。
今この映画を観に行くのは厳しいものがあると思いますが、それでも人間を見つめるという点で、是非、劇場で観てもらいたいものです。