『岸辺露伴 ルーブルへ行く』 このスピンオフ映画は面白い! | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

 

悪食 75点
今年 66本目

監督 渡辺一貴
原作 荒木飛呂彦
脚本 小林靖子
出演 高橋一生
   飯豊まりえ

   安藤政信
   木村文乃

荒木飛呂彦原作のコミック「ジョジョの不思議な冒険」のスピンオフ作品でNHKで放送された「岸辺露伴は動かない」の劇場版。
渋谷シネクイントへ。

鑑賞結果、黒色をモチーフに岸辺露伴が忘れていた過去に引き戻されていくストーリーは面白い。このシリーズは岸辺のキャラクターと謎解きが魅力だ。

ここからネタバレ満載でいきますからご注意を⁉️



ある日の午後、岸辺露伴(高橋一生)は微睡の中で忘れていた何かを思い出していた。


黒髪の謎の女性。その女性は露伴がまだ漫画家になりたての頃、叔母の下宿に世話になっていた時に同じ下宿にいた奈々瀬(木村文乃)という女性だった。露伴は彼女に対して恋心のような想いを持っていたが奈々瀬はある日、忽然と姿を消した。露伴はそれを思い出すこともなかった。


しかしその奈々瀬を思い出したことから、彼女の漆黒の髪の色から黒色というものに興味を惹きつけられていった。
全く光を反射させないという黒色で描かれた絵があると聞いて、露伴はモリス・ルグランの描いたその絵が出品されるというオークションに参加することにした。
オークションでは人気のない画家の絵だと思っていたが思わぬライバルが現れたが、露伴は絵を競り落とした。
しかし競り負けた相手はその絵を狙って露伴の家に押し入ってきた。絵は盗まれてしまったが、彼等の目的はその絵ではなく、その絵に隠されていたはずのもう一枚の絵だった。
露伴もまた目的の黒色が使われている絵だと思ったが、そうではなかった。
しかしその絵の裏には「ルーブルで見た黒 後悔」という文字が書かれていた。
こうして露伴は編集の泉(飯豊まりえ)と共にフランスのルーブル美術館へと向かった。



ルーブル美術館は、岸辺露伴(高橋一生)が著名な漫画家だと知っていて協力的だった。


またルーブルの東洋絵画のキュレーターである辰巳(安藤政信)も協力して探してくれることになった。
露伴は日本の絵師、山村仁左衛門についてを調べたかったのだが、ルーブルでも山村仁左衛門の絵は無いとのことだったがモリス・ルグランについても調べていたところ、どうやらZ-13倉庫に保管されていた様だという情報を得た。



ルーブルでは地下倉庫に行く場合には消防士の同伴が義務付けられていた。それは地下倉庫が迷路になっていたこともあるが、火事になった時に収蔵物を守る為だった。

Z-13倉庫にあったのは未発見のフェルメールだった。
しかしキュレーターの辰巳(安藤政信)は偽物だから処分する様にと消防士に渡した。
それをみた露伴(高橋一生)が言った。
「これは本物だ。それを大して調べもせず、偽物だとして処分する様に言ったのはおかしい。辰巳さんはここでモリスに贋作を作らせていたのか」と。


モリスは模写画家としても有名だった。
この倉庫は窃盗団のアジトだったのだ。
モリスにここで贋作を作らせ、所蔵庫の本物と贋作を入れ替え、本物はモリスの販売用の絵の中に隠し、それをオークションとして出させた後で自分達でその絵を落札し、闇ルートに載せて売り捌いていたのだ。
ここを取り仕切る消防士とキュレーターが仲間なら簡単に出来ると。
その時、壁の奥の暗闇に絵があることに誰もが気付いた。モリスが見た山村仁左衛門の「この世で最も邪悪な絵」最も黒い絵だ。
その絵を見ると誰もが自分の弱さや後悔が幻想となって襲ってくる。そして幻想は現実となってその人を殺すのだ。
そこにいた消防士と辰巳は死んだ。露伴も死にかけたが、寸前で自分のスタンド能力「ヘブンズドア」を使い自分の記憶を消すという方法をとって助かった。



「ヘブンズドア」
岸辺露伴が持つスタンド能力。人の顔を本の様にして記憶を読むことが出来る。そしてそこに書き込んだことは必ず実行される。


山村仁左衛門は御用絵師の長男であったが、芸術を極めていく上で、様々な絵の技法を取り入れた。しかし御用絵師にはそれは許されなかった。家を勘当された仁左衛門は妻奈々瀬(木村文乃)と幸せに暮らしていたのだが、体の弱い奈々瀬の薬代を得る為に実家に戻った。
日本画に没頭する中、奈々瀬の黒髪の色が出せないと苦悶していた。
そんなある日、奈々瀬が御神木の樹液が黒いのを見て仁左衛門に渡したのだ。
これこそが求めていた黒色だと仁左衛門が御神木から樹液を取っていた。
仁左衛門の弟は兄が出て行ったことで家督が継げると思っていたら戻ってきて、その権利を失ったことを恨みに思って御公儀に密告をした。
取り調べの中で奈々瀬に暴力を振るったことを許せず、仁左衛門は役人達を皆殺しにしてしまった。
そして気がふれたように奈々瀬の黒髪と怨念を絵に書き込んだのだ。絵を書き上げると仁左衛門も亡くなった。
その絵こそが最も黒く「この世で最も邪悪な絵」となった。
奈々瀬は山村家をでて実家の岸辺家に戻った。
その末裔に岸辺露伴(高橋一生)がいた。
奈々瀬が露伴にこの怨念を討ち払ってと願ったかのように。
エンド。

という話なのですが、出だしの岸辺露伴が「あなたは最も黒い色というのを知っているか?」という問いかけから始まる。
露伴は微睡の中で見た夢とも現実とも思えない黒髪の女性を思い出したことから、黒色にこだわっていく。
この掴みは何か神秘的でそれでもって黒という色が醸し出す闇というものが感じられてゾクゾクっとさせてくれる。
そしてルーブルに行くという展開になるのは映画っぽくて良いのでは。
そこで見つけ出す「最も黒く最も邪悪な絵」。そこからのこやの絵にまつわる悲しい歴史。それは露伴の祖先の話でもあった。というところが露伴が関わった根本的な繋がりそれはDNAに刻まれていたなんていうのが、この事件の本質でスタンド使いとしての資質がそれを呼び起こしたとも言える。
「ジョジョの不思議な冒険」は派手なスタンド使いの殺し合いの話が多いが、ことこの岸辺露伴のスタンドは相手の記憶を読み取るという攻撃的な能力では無い点がいい。
だからこそのスピンオフと言えるのだ。
NHKドラマは1時間弱という長さが丁度良かった。
映画版は2時間となるので少し長いという印象は拭えなかったが、全体的には良く出来たサスペンスに仕上がっている。
是非、劇場で。