『花束みたいな恋をした』 大評判みたいな映画に騙された | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

 

悪食 60点
今年 1本目

監督 土井裕泰
脚本 坂本裕二
主演 菅田将暉
   有村架純

評判がめちゃ良いんですよ。苦いけど、共感が得られる恋愛映画だとか。
恋愛映画は苦手なジャンルなのですが。
コロナ禍でこんな映画を今年1本目に選んでみました。

鑑賞結果、大失敗でした。只のガキの恋愛映画です。
何が良いのか悪食には全く分かりませんでした。こんなんで共感?何を?よくある話でしょ。

 

ここからネタバレ満載で行きますからご注意を!


喫茶店でカップルがスマホの音楽を一つのイヤホンを片chづつ分け合って聴いているのを見かけた男(菅田将暉)がおもむろに一緒に来ていた彼女と思われる女性に熱弁を奮います。
「音楽がステレオである場合、右chと左chでは音が違っている。
だから片chづつ聞いているのは同じ音楽とはいえない。
しかも音楽制作には作曲家や演奏家、ミキサーに至るまで全身全霊を注ぎ込んでいる。
そんなことも分からないで音楽を聞くのは音楽にとっての冒涜だ。
ちょっと、俺彼等に注意してくる」と言って席を立つ男。
またある席では同じ様なことを彼氏に話している女(有村架純)。
彼女も同じ様に彼等にちょっと注意してくると席を立ちます。
そしてそのカップルに向かおうとして同じ様に動く相手に気付いて顔を見合わせる二人。
気まずそうに席に戻ります。

というファーストカットで先ず悪食は引っかかりました。
音楽を片chづつ聞くカップルは音楽を冒涜しているのか?
は⁉️
このお節介な男と女は何言ってるの?
カップルは同じ行為を一つのイヤホンというものを通して一緒にやりたいがための行為であって、音楽を冒涜するとか、制作者に対する配慮が足らないとか、そんなことはつゆと考えていないことも分からないバカなのか?
それとも何かの比喩なのか?
はぁ⁉️と思いながらこの映画は始まりました。
この映画、ヤバいかも。


このファーストカットは現在であり、映画は過去に戻って描き始めます。

大学生の麦くん(菅田将暉)と絹さん(有村架純)は、ひょんなことから終電を乗り過ごし、駅前で乗り過ごした他の乗客と4人で居酒屋で時間潰し。
何となくお互いの趣味が似ているなぁと思うも進展することもなく、解散することに。
意気投合した社会人の男女はタクシーでどこへやら。
取り残された二人は気を取り直してファミレスに。


そこで色々と話すうちに、お互いの趣味が非常に似ていることに意気投合する二人。
ファミレスで話し込んでから麦くんの部屋へ。
麦くんが作ったという3時間にも及ぶガスタンク自主映画を観ながら途中寝ながらも、朝まで話し込む二人。
次に会う約束をしたのが唯一の成果。
部屋まで連れ込んでおいて何もしない男と知らない男の部屋にノコノコついていく女。
何だかよく分からない二人です。



それからの二人は趣味思考の合う二人としてどんどん惹かれあっていく。
そして付き合うことに。


若い二人がセックスをする仲になれば、何日も部屋を出ないセックス三昧。
サルですなぁ。仕方ありませんが。可愛いものです。


まっ、そんなサルカップルが4年後どうなっているかの伏線でもあるのですが。



同棲を始めた彼等は幸せ真っ只中。


就職戦線の中、なかなか決まらなかった絹ちゃん(有村架純)の就職は決まった。
麦くん(菅田将暉)といえば、イラストで生計を立てたいと知り合いのツテで何とか安いイラストバイトを見つける。


しかしそんなことで生活が成り立つわけでもなく、絹ちゃんの両親からは就職しなさいと言われるし、自分の親からは田舎に戻れと。戻らないなら仕送りは止めると脅される始末。
安く叩かれているイラストバイトもクレームをつければ1発で吹き飛ぶ始末。
窮地に立たされた麦くんは、絹ちゃんとの生活も考えて、就職をすることにした。

麦くん(菅田将暉)の社会人生活は想像以上に厳しく、イラストを描いてる時間どころか、絹ちゃん(有村架純)との時間さへ無くなっていく。


麦くんは心の余裕を無くしていき、いつのまにか社会のレールの上を走るだけの生活に。
そんな生活に嫌気をさしていたのは、麦くんではなく、絹ちゃん(有村架純)だった。
同じ趣味思考で生きていた二人だったのに、生活のために仕事をする麦くんが理解できなくなっていく。


麦くんもまたつまらない大人になっていく自分が見えなくなっていき、それが二人のためだと思い込んでいた。
そんな二人に幸せな未来はない。
と、まあ良くある展開です。

すれ違いの二人はいつしか会話さへも無くしてていった。
セックスだって3ヶ月以上もしていない。
若くして早セックスレス。サルカップルはたかだか4年で倦怠期カップルへ。
悪食は、若くしてセックスレスになったカップルが幸せな生活をしていることを見たことはありません。

やりたいことのために、医療事務の職を辞めてイベント会社へ転職する絹ちゃん(有村架純)。
本来なら好きな仕事を見つけて前に進もうとする絹ちゃんをエールを送る立場の麦くん(菅田将暉)なのに、彼の口から出た言葉は何でせっかく就職したのにそんなに簡単に転職できるんだ?仕事に対する責任はないのかと。
考え方がどんどんすれ違っていく二人。
友人の結婚式の日、二人は別れを切り出すことを決める。
最後の日だからと二人は務めて楽しく過ごした。
そして思い出のファミレスに行くと、別れを切り出すタイミングを図る二人。
そんなところへ若いカップルが。
それはまるで昔の自分たちのよう。
一つのスマホで一つのイヤホンで片chづつ音楽を聴く。
しかし、今はそんな純粋だった頃を懐かしむだけ。
別れを口にする絹ちゃん。しかし同じように別れを決意していたはずの麦くんは、やり直そうと提案する。そして結婚しようと。
世間には仲が良くなくても空気のような存在となって家族を形成する夫婦がいくらでもいる。
俺たちもそうなろうと。



呆れた。
たかが20代半ばでこんな意識で結婚を口にするか⁉️
残りの人生50年以上を倦怠期を通り越した愛情もセックスも無くした夫婦の様に過ごそうと?
誰がそんな奴と結婚するのか?


当然、絹ちゃん(有村架純)は拒否をする。

当たり前でしょ。

泣きながら別れたくないとほざく麦くん(菅田将暉)は、感傷に酔った自己中です。
こんな奴に限って後から後悔するのです。

それを見抜いた絹ちゃん(有村架純)の方が冷静で大人です。
絹ちゃんがリアリストの女性の顔を見せるのは、これが最初で最後なのですが。

二人は別れて暮らすことを決意するのですが、引っ越し先を見つけるのも簡単なことではなく、しばらくは一緒に過ごします。


そして絹ちゃん(有村架純)は出ていきました。
ごくごく普通に。
自然の流れで。

こうして別れた二人が、ある日喫茶店でお互いに彼氏彼女連れで、ばったり出会うのです。
そのきっかけが、スマホの音楽を一つのイヤホンで聴いているカップルを見て、「あれは音楽に対しての冒涜だ。各々のスマホで同時に一緒の曲を聴けばいいのに」そしてそれを注意しようとする麦くん(菅田将暉)と絹ちゃん(有村架純)。
ここが、ファーストカットに繋がるのですが、編集としてはこういうのはアリなのでしょうが、ファーストカットで一つのイヤホンで音楽をカップルが聴くのは音楽に対する冒涜だというシーンは映画的で馬鹿らしい。
どこの世界にカップルが一つのイヤホンで音楽を聴くのに注意するドン引きバカがいるのでしょうか?
カップルは一つのイヤホンで音楽を聴く行為がしたいだけであって、音楽を楽しんでいるわけではない。
そんなことは誰もが知っていることで、注意するバカはこの世には存在しない。
居たとしたらドン引きでしょう。
そんなことをファーストカットとラストカットで繋げて見せるこの映画にドン引きしました。
そして、更なるドン引きが。
喫茶店を出た2組のカップル。振り返りもしないで手だけを挙げてバイバイする姿。
これは何⁉️安い三流ラブストーリー映画⁉️
空いた口が塞がりませんでした。


土井監督大ヒットドラマ「逃げ恥」、映画「新参者」や「罪の声」など、ジャンルを問わないキレの良い映像を作り上げる監督だと思っていましたが、この映画は何なのでしょう。
70年代の安っい恋愛映画の様です。
時代設定が80年代風なのは狙っているとは思うのですが、それも風というだけ。
苦い恋愛映画なんて言われて、共感する人達が続出と言っている様ですが、まあ誰にもこんな話はどこかしら共感するものですから。
これといってもてはやすほどでもないでしょう。
それと、前半にカリスマブロガーの自殺とか、理由が理想の恋愛の喪失自殺。
後半の先輩の事故死。カメラマンとして上手くいかない苛立ちを彼女に暴力として訴え、捨てられた挙句の酒飲んで風呂で溺死という事故死。
とか、目指す夢が無くなった後始末は死というのも極端過ぎてついていけない。
心が離れていっていたから、転職先の社長と関係を持って、麦くん(菅田将暉)を裏切っていた絹ちゃん(有村架純)というのも、絹ちゃんはそんなタイプだっけ?とやっぱり社会に出ると変わる女の姿を描いたの?
結局、自意識過剰の若者姿にしか見えません。


と、悪食はこの映画を全く勧めませんが、ここまでこき下ろしておいて何故60点もの点数をつけるのかというと、菅田将暉と有村架純の演技が素晴らしかったからです。
学生時代のうだつの上がらない目立たない姿から、徐々に垢抜けていく姿。そして社会人になって大人の疲れた世界に足を踏み込んだ姿など、驚くほど入り込んだ演技が素晴らしかった。
この映画を観に行く価値はこれだけだ‼️と言っても全く過言ではありません。

他にもオダギリジョーとか、ベテラン俳優陣も出てはいるのですが、はっきり言って無駄遣い。
主役の二人以外は必要ないくらいです。


あくまでも悪食、個人的に何だこりゃ?と思った映画ですが、撮影や編集がそれほど悪いわけでもありません。あくまでも悪食が思う恋愛観と違うだけでこんなのもありというならありなのでしょう。

世間様は評判が宜しいそうなので、自分で観にいって確かめてくるのが宜しいかと。

今年、1本目がこれだと先行き怪しいなぁ😱