#11/1
今日は職場で席替えがあった。
「たくまくんにちょっかい出せなくなって残念だわ」
僕の後ろにいる人がそう言った。
ちょっと離れた席に、
僕と僕の隣の人とグループのリーダーが島流しのように席替えさせられた。
夕方まで働いた。
#11/3
握月のサポートドラムを叩いてくれていた、瞳ちゃんという子のバンドのライブを
握月のベース、由宇さんと見に行った。
長野県の松本に。
日帰りで。
千葉県の柏市を夕方に出発して、
休憩しないで3時間後、松本で降りた。
外に出ると、もうばっちり冬の匂いがした。
ライブハウスに着いて、カウンターで飲み物を買って会場に入った。
一つのバンドがライブの最中。この次だ。
そのバンドは、その日で解散だった。
瞳ちゃんは元気にドラムをひっ叩いていた。
少しだけ瞳ちゃんと話して、たばこの煙と人の声が行き交う会場を後にした。
由宇さんの探し当てたラーメン屋でラーメンを食べた。
ラーメンはなかなか当たりだった。
帰り道、諏訪湖が見えるサービスエリアに止まった。
海みたいに広大な湖が、夜の底にあった。
東京に帰ったのは深夜2時。
由宇さんの車から降りたら膝がガクッと落ちた。
#11/4
「なみきくん、年賀状書こうと思ってるから良かったら住所教えて」
近所の良い歌をうたう友達からメールが来た。
僕も送り返すために、住所を聞いた。
自転車で20分走れば行ける距離なので、直接家に投函すれば良い気もしたけど、元旦は実家にいるつもりだったのでやっぱり普通に郵便局に出すことにした。
「たくちゃーん、年賀状かくから、住所教えて」
握月の前ドラマーの、タカシくんからもそう連絡がきた。
ちょっと考えたけど、いちおう教えた。
悪用するなよー。
#11/8
「たくまさん、飴食べますか?」
職場で一緒に席替えで引っ越してきた隣の人が僕に言った。
隣を見ると、
駄菓子屋の棚のように、古今東西のお菓子がびっしり敷き詰められた引き出しをその人が開けて見せていた。
「……どれの事ですか?」
「この端っこにあるカントリーマアムの奥にあるのど飴です」
「あ……ありがとうございます、いただきます」
夜勤でこの引き出しの存在を知っている人は、
100円入れて拝借していくことがあると、隣の人は言った。