約束は
しなくても大丈夫。
#12/22
神田にて。
「握月」のスタジオ練習を
僕と、由宇さん、西田さんの3人でやった。
これからは、この3人で「握月」。
夕方スタジオ終わり来年の事を少しミーティング。
一時間して、テング酒場にて中野くんが合流。
忘年会。
年を
忘れる
会。
大いに飲み(由宇さんは車なのでノンアルコールウーロンハイ)
大いに語り(ほとんど昔のスーファミのクソゲーやジャンプの打ち切りになった漫画の話)
大いにはしゃいだ。
はしゃぎすぎて
会の終わり直後
由宇さんの提案により、うみほたるへとドライブ。
宝石箱をひっくり返した首都高速からの夜景。
(男4人で)
車の窓を少し開けると、冷たくて気持ちいい夜の風。
(男四人で)
うみほたる着。
冷たい潮風が吹き付ける、夜の海岸線を歩く。
(男男男男)
またたく星空
月が良く見えた。
手を伸ばしても無理だから
近くにあった望遠鏡に100円を入れて
月面に揺れているブランコを見た。
あの子は揺られているかなーって、
僕は覗いた。
(男しか見えなかった)
「じゃあねー」
「良いお年を、だねー」
深夜1時。
西田さんが中野駅で降りた。
歩いていく後ろ姿を車の中で見送る。
彼は大阪に今週末帰省する。
30分ほど走る。
「おい、中野」
後部座席の中野くんは、なんかマズイ薬で眠らされてるような塩梅で眠りこけていた。
首がぶるんぶるん揺れるような揺らされ方をしても起きない
「……?」
起きた。
「到着したよ」
「……?」
「中野くん、こっから家近いんだよね?歩けるよね?」
「……?」
「大丈夫?」
「……?」
降りた。
「今日はありがとう。また来年」
僕がそういって手を降ると、
「……おやすみ」
と呟いた。
念の為に、5分ほど様子を見てから出発した。
「おつかれです」
僕は車の中の由宇さんに言った。
「うん、がんばっていこうぜ」
「はい、おやすみなさい」
僕は由宇さんに手を振り、
家の玄関へと向かった。
が、
「おい、たくま」
横を見る。
そこには、僕の通う音楽教室の師匠の、民家を改造した仕事部屋兼、スタジオがある。
ドアが開いていて、
中には、
師匠と、僕の家のルームメイトの先輩が
大量の缶ビールとツマミの残骸を囲んで、
赤くて眠たげな顔で僕を見ていた。
「……どうもー」
師匠
「由宇くんいるの?」
「はい」
師匠
「連れてきてあげなさい」
「あー…でも、今日はちょっと盛りだくさんで、明日は彼普通に仕事みたいですし」
先輩
「冷てえやつだな、連れてこいよ」
「あー……とりあえず、聞いてみます」
僕は、なんとなく事態を察して家の前から動かないで待機している、由宇さん車に近づく。
「呼ばれた?」
ご察しのとおり。
「まあ……疲れていたらその」
「大丈夫、今行くよ」
「なんか、うん、こういうシメが待ってました」
師匠のスタジオに2人で戻る。
「おー? 由宇くん、お疲れ。今日はスタジオ?」
「はい、先生。今日は忘年会ですか?」
「今日でいちおうレコーディング上がりなんでね。まあ、上がってくれ」
苦笑いをしていたのは僕。
時刻はAM2:00。
結局そのあと
約3時間、我々はトーキングヘッドとなった。
(男4人で)
#12/27
今いる職場の最後の出勤日だった。
お昼の終礼で、簡単なあいさつをした。
僕に今の仕事を引き継いでくれて6月で辞めた人は
「お疲れ様でした。ありがとうございました」
だけで、すごくシンプルで潔くて、
真似したかったけど、つい長く話してしまった。
色んなことがあったなーなんて思いながら、
丹念に使っていた机を磨き、
椅子を磨き、
引き出しの中を空っぽにした。
使っていたパソコンのデスクトップにあるファイルも、引継ぎに必要なファイルは
共有のサーバに入れて、
残りは全部ゴミ箱へ。
なんとなく最後だから軽度なイタズラを思い立ち、
後ろの席にいる人達が退社したのを見計らい、
美味しそうな唐揚げの画像をダウンロードして、
デスクトップの壁紙にした。
しかし、
後ろから何か人の気配。
振り返ると、
最近入ってきた派遣の人が
困惑した表情で自分のパソコン越しに、
明らかに僕のパソコンのデスクトップを見つめていた。
やむを得ず、元のベーシックなものに壁紙を戻して
唐揚げの画像はデスクトップに残して、
電源を落とした。
「なみきくんお疲れ」
「お疲れ様でした」
結構あっちから帰るときに挨拶してくれるもんだな。
「良いお年を」
とみんな最後に付ける。
「なみきくん、せっかく仲良くなったのに残念だねー」
席替えする前に、後ろの席にいた人が挨拶しに来てくれた。
「寂しいですね、本当に」
「そういえばなみきくんさ」
「はい」
「バンドやってるって聞いたんだけど、ほんと?」
「…はい」
「革パンしかプライベートで履かないんだって?」
「……いえ」
「なんだよ!本当だったら面白かったのに!」
そう言って元気に笑った。
「もしライブやるんだったら見に行きたいな!誘ってよ!」
はい。
いつかは。
「なみきさん、色々お世話になりましたね」
隣の席の、食の恩恵をたくさんくれた人が帰る前に挨拶しに来てくれた。
「いえ、こちらこそ」
食だけに限らず。
「自分のペースで、楽しい人生を過ごしてくださいね」
「ありがとうございます」
その人の背中は
今までも思っていたけれど、
やっぱり、どこか切ない感じがした。
オーバーワーク気味でいつも笑いながらヒーヒー言ってたリーダー。
「リーダー、今までありがとうございました」
有給いっぱい使ってライブしてすみませんでした。
「いえ、すごく助かりましたよ、次のところでも頑張ってください」
「健康第一で」
「ははっ」
歳がタメで、何かにつけて言い争ってた社員のTさん。
「生意気こいてばっかでごめんね」
「まあ迷惑はしたけどオーライ」
「楽しかったよ」
「狭い業界だからまたそのうち会うだろ」
「かな?」
「そうだよ」
「そっか」
「うん」
とんちんかんなアドバイスや周知、情報かく乱で、いつも僕やリーダーや色んな人を困らせていたMさん。
「お世話になりました」
「ひとつ言うとね、なみきくfjcwqcg&’()=&$%&’()=)(’,zncmzbja*****++>?&%&’(’&%%&’&%&hvcqhgxy2うぇgつqwgくqgsjkdfsl;fjivnsmlajdadjadj&’w」
「……」
ヒアリングする時いつも無意味にキレていたKさん。
「これからは僕の隣の人がヒアリングしに来るので、優しくしてくださいね」
「あー!僕はいつもあんな感じだから大丈夫です!はは!」
「……」
電車に乗って家に帰る。
もう来年から僕は、あの駅で降りない。
でも
#12/29
南阿佐ヶ谷の蕎麦屋「道心」で、
友達のライブをおそばを食べながら見る。
由宇さんや、
長野の友達や
その彼女も
一緒に見に来た。
この日のライブを主催した後藤秀逸くんは、
「握月」を僕がまた個人で名乗り、
弾き語りしてメンバーを探していた時に出会った友達。
この日で、彼は音楽活動ではなく、岩手の実家の写真屋を継ぐための
勉強を実地経験しながら学び始めるらしい。
彼が僕と出会った時に彼は「ザ・魂ズ」というバンドをやっていて
僕は「握月」を自分以外のメンバーが揃ったら必ず一緒に対バンしたいなー
と考えていた。
でも
僕は少しだけ遅かった。
「大丈夫、歌を歌うの、多分やめないから」
そう彼はイベントが終わったあと言っていた。
僕はそれを聞いて
なんか
この一ヶ月間であった
無数の人生の節目や
友達や場所との別れや
いろんな事全てに対して
ようやく、思いつめた考えを抱くのを辞められた気がした。
きっと
僕が考えているよりも
この世界が糞で
みじめで
報われない努力とかに溢れていたとしても
となりで笑ってる友達や、
友達の出会った大切な人や、
帰り道に出会う
たくさんのライトの灯りが、
ほんの少しでも僕らに「希望」っていうおもちゃをくれるんだったら
ここで「何か」やり続けることに
意味はなくたって、
確実に
「良いもの」
になるっていう
確信ならあると思う。
ってことに絶対にする。
しなくても大丈夫。
#12/22
神田にて。
「握月」のスタジオ練習を
僕と、由宇さん、西田さんの3人でやった。
これからは、この3人で「握月」。
夕方スタジオ終わり来年の事を少しミーティング。
一時間して、テング酒場にて中野くんが合流。
忘年会。
年を
忘れる
会。
大いに飲み(由宇さんは車なのでノンアルコールウーロンハイ)
大いに語り(ほとんど昔のスーファミのクソゲーやジャンプの打ち切りになった漫画の話)
大いにはしゃいだ。
はしゃぎすぎて
会の終わり直後
由宇さんの提案により、うみほたるへとドライブ。
宝石箱をひっくり返した首都高速からの夜景。
(男4人で)
車の窓を少し開けると、冷たくて気持ちいい夜の風。
(男四人で)
うみほたる着。
冷たい潮風が吹き付ける、夜の海岸線を歩く。
(男男男男)
またたく星空
月が良く見えた。
手を伸ばしても無理だから
近くにあった望遠鏡に100円を入れて
月面に揺れているブランコを見た。
あの子は揺られているかなーって、
僕は覗いた。
(男しか見えなかった)
「じゃあねー」
「良いお年を、だねー」
深夜1時。
西田さんが中野駅で降りた。
歩いていく後ろ姿を車の中で見送る。
彼は大阪に今週末帰省する。
30分ほど走る。
「おい、中野」
後部座席の中野くんは、なんかマズイ薬で眠らされてるような塩梅で眠りこけていた。
首がぶるんぶるん揺れるような揺らされ方をしても起きない
「……?」
起きた。
「到着したよ」
「……?」
「中野くん、こっから家近いんだよね?歩けるよね?」
「……?」
「大丈夫?」
「……?」
降りた。
「今日はありがとう。また来年」
僕がそういって手を降ると、
「……おやすみ」
と呟いた。
念の為に、5分ほど様子を見てから出発した。
「おつかれです」
僕は車の中の由宇さんに言った。
「うん、がんばっていこうぜ」
「はい、おやすみなさい」
僕は由宇さんに手を振り、
家の玄関へと向かった。
が、
「おい、たくま」
横を見る。
そこには、僕の通う音楽教室の師匠の、民家を改造した仕事部屋兼、スタジオがある。
ドアが開いていて、
中には、
師匠と、僕の家のルームメイトの先輩が
大量の缶ビールとツマミの残骸を囲んで、
赤くて眠たげな顔で僕を見ていた。
「……どうもー」
師匠
「由宇くんいるの?」
「はい」
師匠
「連れてきてあげなさい」
「あー…でも、今日はちょっと盛りだくさんで、明日は彼普通に仕事みたいですし」
先輩
「冷てえやつだな、連れてこいよ」
「あー……とりあえず、聞いてみます」
僕は、なんとなく事態を察して家の前から動かないで待機している、由宇さん車に近づく。
「呼ばれた?」
ご察しのとおり。
「まあ……疲れていたらその」
「大丈夫、今行くよ」
「なんか、うん、こういうシメが待ってました」
師匠のスタジオに2人で戻る。
「おー? 由宇くん、お疲れ。今日はスタジオ?」
「はい、先生。今日は忘年会ですか?」
「今日でいちおうレコーディング上がりなんでね。まあ、上がってくれ」
苦笑いをしていたのは僕。
時刻はAM2:00。
結局そのあと
約3時間、我々はトーキングヘッドとなった。
(男4人で)
#12/27
今いる職場の最後の出勤日だった。
お昼の終礼で、簡単なあいさつをした。
僕に今の仕事を引き継いでくれて6月で辞めた人は
「お疲れ様でした。ありがとうございました」
だけで、すごくシンプルで潔くて、
真似したかったけど、つい長く話してしまった。
色んなことがあったなーなんて思いながら、
丹念に使っていた机を磨き、
椅子を磨き、
引き出しの中を空っぽにした。
使っていたパソコンのデスクトップにあるファイルも、引継ぎに必要なファイルは
共有のサーバに入れて、
残りは全部ゴミ箱へ。
なんとなく最後だから軽度なイタズラを思い立ち、
後ろの席にいる人達が退社したのを見計らい、
美味しそうな唐揚げの画像をダウンロードして、
デスクトップの壁紙にした。
しかし、
後ろから何か人の気配。
振り返ると、
最近入ってきた派遣の人が
困惑した表情で自分のパソコン越しに、
明らかに僕のパソコンのデスクトップを見つめていた。
やむを得ず、元のベーシックなものに壁紙を戻して
唐揚げの画像はデスクトップに残して、
電源を落とした。
「なみきくんお疲れ」
「お疲れ様でした」
結構あっちから帰るときに挨拶してくれるもんだな。
「良いお年を」
とみんな最後に付ける。
「なみきくん、せっかく仲良くなったのに残念だねー」
席替えする前に、後ろの席にいた人が挨拶しに来てくれた。
「寂しいですね、本当に」
「そういえばなみきくんさ」
「はい」
「バンドやってるって聞いたんだけど、ほんと?」
「…はい」
「革パンしかプライベートで履かないんだって?」
「……いえ」
「なんだよ!本当だったら面白かったのに!」
そう言って元気に笑った。
「もしライブやるんだったら見に行きたいな!誘ってよ!」
はい。
いつかは。
「なみきさん、色々お世話になりましたね」
隣の席の、食の恩恵をたくさんくれた人が帰る前に挨拶しに来てくれた。
「いえ、こちらこそ」
食だけに限らず。
「自分のペースで、楽しい人生を過ごしてくださいね」
「ありがとうございます」
その人の背中は
今までも思っていたけれど、
やっぱり、どこか切ない感じがした。
オーバーワーク気味でいつも笑いながらヒーヒー言ってたリーダー。
「リーダー、今までありがとうございました」
有給いっぱい使ってライブしてすみませんでした。
「いえ、すごく助かりましたよ、次のところでも頑張ってください」
「健康第一で」
「ははっ」
歳がタメで、何かにつけて言い争ってた社員のTさん。
「生意気こいてばっかでごめんね」
「まあ迷惑はしたけどオーライ」
「楽しかったよ」
「狭い業界だからまたそのうち会うだろ」
「かな?」
「そうだよ」
「そっか」
「うん」
とんちんかんなアドバイスや周知、情報かく乱で、いつも僕やリーダーや色んな人を困らせていたMさん。
「お世話になりました」
「ひとつ言うとね、なみきくfjcwqcg&’()=&$%&’()=)(’,zncmzbja*****++>?&%&’(’&%%&’&%&hvcqhgxy2うぇgつqwgくqgsjkdfsl;fjivnsmlajdadjadj&’w」
「……」
ヒアリングする時いつも無意味にキレていたKさん。
「これからは僕の隣の人がヒアリングしに来るので、優しくしてくださいね」
「あー!僕はいつもあんな感じだから大丈夫です!はは!」
「……」
電車に乗って家に帰る。
もう来年から僕は、あの駅で降りない。
でも
#12/29
南阿佐ヶ谷の蕎麦屋「道心」で、
友達のライブをおそばを食べながら見る。
由宇さんや、
長野の友達や
その彼女も
一緒に見に来た。
この日のライブを主催した後藤秀逸くんは、
「握月」を僕がまた個人で名乗り、
弾き語りしてメンバーを探していた時に出会った友達。
この日で、彼は音楽活動ではなく、岩手の実家の写真屋を継ぐための
勉強を実地経験しながら学び始めるらしい。
彼が僕と出会った時に彼は「ザ・魂ズ」というバンドをやっていて
僕は「握月」を自分以外のメンバーが揃ったら必ず一緒に対バンしたいなー
と考えていた。
でも
僕は少しだけ遅かった。
「大丈夫、歌を歌うの、多分やめないから」
そう彼はイベントが終わったあと言っていた。
僕はそれを聞いて
なんか
この一ヶ月間であった
無数の人生の節目や
友達や場所との別れや
いろんな事全てに対して
ようやく、思いつめた考えを抱くのを辞められた気がした。
きっと
僕が考えているよりも
この世界が糞で
みじめで
報われない努力とかに溢れていたとしても
となりで笑ってる友達や、
友達の出会った大切な人や、
帰り道に出会う
たくさんのライトの灯りが、
ほんの少しでも僕らに「希望」っていうおもちゃをくれるんだったら
ここで「何か」やり続けることに
意味はなくたって、
確実に
「良いもの」
になるっていう
確信ならあると思う。
ってことに絶対にする。