#7/22
大久保水族館という、うす暗いバーみたいなところで、一人で歌った。
見に来てくれている人達は、なんだか夜のドラマをキッチンで見ているような感じの目だった。
歌ったら、なんか久しぶりに楽しかった。
人の前で歌う人、誰もがそうなれるわけでは無いって知ってたから、ちょっとだけ優越感を感じた。
でも、この日出ている人はみんな楽しく歌っていたり、演奏していた。
がっかり。俺はやはり特別な人間じゃなかった。
一緒に出てくれた、友人の長沼ハピネスさんが歌っている写真を撮って送ってくれたけれど、
なんとなく人には見せないで秘密にしておく事にした。
#7/28
引越し祝いということで、隣人の人とご飯を食べに行った。
電車で10分ぐらいの「立石」という町。
屋台のような飲み屋さんが軒並み続く不思議な町。
食べたり飲んだりしていると、音楽の話がいつもより噛み合っているような感じがした。
帰りは歩いて帰ることにした。
通りには誰もいないのに、誰もいないとは思えない気配がした。
でも、怖い感じじゃなかった。
昔この立石から僕の住む町へ行く途中の道のそばに
「ヨコヤマ」っていうライブハウスがあった。
ビートルズのコピーしたり
グループサンズの歌を歌ったり、
おじさん
おばさん
みんなが楽しく音楽をやっていたお店だった。
僕が去年の夏に、久しぶりに夜に遊びに来たときに
閉店していた。
僕はここで何回か歌ったことがあって
最後に来て歌った日には、少しだけ人がいて、
マスターも含めて、ほとんどの人が、ほどほどにしとけよって目を向けてきていた。
一人のおじさんが歌い終わったあとに、
「なにがあってもギターやめるなよ、歌やめるなよ、絶対に、絶対に良いことあるんだからな」
って言ってた。
気付いたら、車の行き交う国道に出ていた。
#7/29
仕事が忙しかった。
僕の隣の席の新しく入ってきた人は、仕事が大変だと
「ああー…多い…」と言って
うなだれる。
僕は机に入ってたお菓子をあげた。
「あ、ありがとーうごさいまーす」
と、微笑んでくれた。
― 後に、僕はこの人に多大な食の恩恵を受けることとなる。
「すみません、ぼくはこれで帰りますけれど、あのー、はい、がんばってください」
「いえー、またあした。お疲れ様です」
僕は帰る。
仕事をしながら歌を歌う日は、こんな調子である。
「浅草クラウド」で歌った。
ザ・魂ズの秀逸くんに誘われて出ることに。
前々から興味のある人たちがいっぱいいた。
自分が歌うことも楽しかったけれど、
その人たちの歌を聞くのも楽しかった。
友人の、にたないさんがやってきて、終演後のオープンマイクで歌っていた。
「僕らは死んでも星にはならないよ」
って歌っていた。
僕は死んだら何になるのかなー、なんて思って、
椅子に頭を埋めて目を閉じてみたけれど、
どんな夢も見れやしなかった。