光圀は五歳で父頼房と対面を果たし、将軍家光のお声掛で二人の兄を差し置いて世継ぎと決まった。
    守役の中山備前の諫言もあって喧嘩沙汰の硬派ぶりは止み、今度は吉原通いで軟派に走るが、色事も卒業して学問に力を入れるようになった光圀。
    ある日侍三人に絡まれているのを救ったのが縁で浅草奥山の水茶屋「桜」の娘しのと親しくなる。しのは浪人とは言え歴とした武士の娘だったが、二人とも試し斬りの辻斬りに惨殺されてしまう。
    激怒した光圀は辻斬りの犯人探しに江戸八百八町の闇を歩き回り、遂に大川端で辻斬りと出会い肩口に手傷を負わせるものの逃してしまう。だが現場に犯人が残した印籠から、その正体は三千石の旗本の息子河本甚九郎と分かった。
    光圀は乱心を装って河本屋敷に乗り込み甚九郎を打ち果たそうとするが、すでに甚九郎は親族に詰腹を切らされた後だっった。中山備前が手を回していたのだった。
    水戸光圀若き日のお話。