日本橋の紙問屋葛西は宮内省御用達の大店。娘の彦乃は許婚がいる身。
   ある日父親は彦乃を呼んで「自分の立場が分かっているのか?」と詰問し、竹久夢二からの彦乃宛の手紙を出して「恋文じゃないか?夢二は女ったらしだと新聞にも出ていた」と叱る。彦乃は家に閉じ込められてしまう。
    会えなくなった夢二はある晩葛西の家の裏木戸から入り彦乃を呼び、彦乃は二階から答える。それから彦乃は半年ほど大人しくして父親を騙し、美術学校に通うことも許されるようになる。学校ではなく雑司ヶ谷の夢二のところに通う彦乃。しかし父親の知るところとなり無理やり父親が連れ戻す。
    大正2年冬の夜、二人は汽車で駆け落ちし、京都に落ち着いて幸せな暮らしを送り、夢二も画業に新境地を開く。しかし彦乃は業病の結核にかかってしまい血を吐くほどになる。万が一を考えて夢二は東京の葛西にも連絡する。
    やって来た父親は夢二を詰り、何としても治してみせると彦乃を連れて帰る。二人は引き裂かれたが彦乃の面差しは夢二の描く目の大きな女の中に今も生きている。