10年以上前のこと。
私のうちの前の道路を、夜9時頃、大きな声で独り言を言いながら歩く男がいた。
初めはびっくりしたが、段々、様子が見えてきた。
その男の後ろを父親と思しき人が本を読みながら?歩いている。
知り合いになろうと思って、初めは、父親の方に、こんばんはと声かけをするようにした。
少しして、一緒に歩いていいですか?とやった。
(もの好きな男だな)
あ、どうぞ、ということで、一緒に歩くようになった。
私は以前、障害者関係のボランティアを長らくやった。
その男性は、やはり私が推測したような障害を抱える人だった。
初め、その時間になると、本人が、どうしても外を歩きたくなるから、父親が付き添ってるのかと思ったが、違っていた。
本人の体重を増やさないために、歩かせているのだと、父親が言ってた。
当人は、当時、40歳は過ぎてたと思う。父親は80歳過ぎていた。
その男性は、人と対話ができない!
いつも独り言を言ってるが、たぶん、自分が経験してきた場面でのやり取りを再現していたのではないか。
それなりのところに勤めさせたこともあるが、続かなかったと。
人と対話はできないが、年月に関しては、大変な記憶力がある。
父親が「〜に行ったのはいつだったかな?」と問うと、○月○日と即座に答える。
私の名前も覚えてくれた。
ある日、彼が、駅から、こちらに歩いてくるのに、行きあったから、「あ、〜さん、こんにちは」とやったら、「あ、〜さん」と、私の名前は出てくる。
しかし、その後、私が何を言っても、返答は返ってこない。
こころ、ここにあらず。
気の毒な言い方をするが、人とコミュニケーションをとれるような脳の回路ができてないのだ。
父親に聞いたが、姉か妹が居るそうだ。
その人たちの家は分かる。
上がり込むまでの間柄ではない。
その家のそばを通ると、エレクトーン的な音がよく聞こえる。
本人か、姉妹かは分からぬ。
年齢的に、父親は、もう存命しないだろう。
行政の支援に繋がっているといいのだか、出過ぎたこともやるべきではないし。