恋愛遍歴の最終話です

 

実家訪問の件で口論になってから

私は公さんの家に行かなくなりました

 

会ってしまえば有耶無耶になって

元の鞘に収まってしまうように思いました

 

 

私は公さんのことが好きでした

公さんも私のことが好きなのは感じられました

 

丸六年経っても変わらずに好きでいてくれて

愛の言葉を浴びさせてくれる

私に触れたいと思ってくれる

 

公さんと一緒に居る時は幸せでした

穏やかに笑い合えて楽しかった

 

ふたりの行為の時間も

私を気持ちよくしてくれて

腕の中で眠るときは安らぎの時間でした

 

公さんと付き合った期間は

レンさんのことを忘れることができました

 

公さんは嫉妬深かったですし

不安要素があると束縛が強くなるので

他の男性と関わることはできなかったのですけど

 

 

一緒に居て幸せを感じられる人

愛し愛されていると感じられる人

女としての幸せを感じられる人


とても相性のいい人

 

私にはこの人しかいないと思っていました

運命の人だと思っていました

 

 

でも…3つの引っ掛かりが

私に迷いを生じさせていました

 

研究室選択の時のこと

流産した時のこと

実家に挨拶に行った時のこと

 

たったの3つだけれど

どれも私にとっては重要なことでした

 

大事なことを話し合うこともできず

勝手に決められてしまうのではないか

 

結婚したとしても

夫婦できちんと話し合いができるのだろうか

 

結婚して子育てもあるだろうけれど

ふたりで協力していけるのだろうか


いくら考えても

不安が消えることはありませんでした



もう一度信じて付き合いを続けるか

完全に信じられないのだから別れるか

まだ迷いがありました

 

 

公さんから電話はかかってきましたが

仕事が忙しいからと躱していました

 

実際、仕事は山場を迎えていて

超ブラックな状態になっていました

 

最もひどかった1週間は

月・水・金と朝から深夜~朝方まで働いて

睡眠時間が1~数時間しか取れず

翌日はぐったりほぼ廃人同然

それでも仕事をしなければならない

 

よく乗り越えられたなと思います


どんなに大変な仕事でも

この時に比べれば大したことないと

乗り越えられるようになれましたね

 

 

最悪の1週間の翌週に

私の隣の席の人が体調不良を訴えて

そのまま意識を失って救急車で運ばれました

 

私は付き添いとして同乗して病院に行きました

 

脳内出血

 

CT写真を見たら

頭蓋骨内のほぼ半分が血で埋め尽くされ

脳が片側にギュッと寄っていました

 

あと少し遅かったら命を落としていました


 

非常に多忙で膨大な仕事量だったこと

拘束時間が異常に長かったこと

かなりのストレスがかかっていたこと

身体に不調が起きるのは当然です

 

過労が原因として労災認定されました

後遺症として半身麻痺が残りました

 

 

一命をとりとめた人は

私と同じチームの人でした

 

チームは3名

私と上司(夫)とその人

 

こんなトラブルが起きましたが

上司の海外出張が既に決まっていて

わずか数週間後に迫っていました

 

1カ月以上もの間

私ひとりで仕事をしなければなりません

 

一番の下っ端の私だけが残される

 

不安でたまりませんでした

 

 

上司不在の長い期間が不安で

仕事の引継ぎを兼ねて相談をしたいと言いました

 

上司は快く了承してくれて

仕事帰りにふたりで飲みに行きました

 

居酒屋では仕事の話だけではなく

色んな話をしました

 

 

冷たい上司だと思っていたのに

実は優しい人なのかもしれないと感じました

 

流産トラブルの時に感じた安心感

上司は優しいかもしれないと僅かに思ったこと

それを再認識するような形になりました

 

 

仕事では口論になってばかりで

この上司とは合わないと思っていたのに

 

意外なことに考え方の方向性というか

感じかたが同じかもしれないと思いました

 

 

上司なら信頼できるかもしれない

安心できるかもしれない

この人のことを知ってみたい

 

初めて上司に興味を持ちました

 

 

そのまま半ば強引に上司の家まで押しかけました

 

ひと晩過ごしましたが上司は手を出してきません

部下には恋愛感情を持たないと言われました

 

上司は信頼できる人だと確信をもちました

 

翌朝になって

上司に「結婚しましょうか」と言いました

 

上司は驚いたように何度も確認していましたが

私がはっきり付き合いたいと伝えて

ようやく関係を持ちました

 

 

この時はまだ

公さんときちんと別れていません

実際には会っていませんでしたが

ハッキリと別れを告げていませんでした

 

平日の日中に公さんの家に行って

自分の持ち物をすべて持ち出して

合鍵をポストに入れてきました


公さんとは電話で別れ話をしました

 

話をしても埒が明かなくて

きちんと会って話した方が良いと考え

上司に「会って別れてくる」と伝えて

公さんに会いに行きました

 

まだ実は少し迷いがありました

 

実際に会ってしまったら

また引き戻されてしまうような気がしてました


 

上司は30代後半まで独り身生活に慣れていて

私が居なくても生きていける人だろうけれど

 

公さんは私が居ないと生きていけないようなことを言ってました

 

私が居なくちゃ

母性本能が顔を出すような気がしていました

 

 

迷いがありつつも

私の3つの引っ掛かりを説明して

公さんに別れを告げて上司の元に戻ってきました

 

上司と関係を持つことを口にしたときに

私も覚悟を決めていましたから

 

 

 

夫(上司)から後から聞いた話ですが

 

夜空のことは信用していたけれども

戻ってしまうんじゃないかと不安があった

 

公さんに会いに行くと聞いたとき

急に息ができなくなって苦しくなって

目の前が真っ暗になって倒れそうになった

初めてのことで自分でも驚いたんだよ

 

 

何事にも動じないと思っていた人でも

不安になってしまうことがあるのですね

 

後にも先にも

夫がおかしくなったのはこの時だけだそうです

 

夫にとって私は必要な存在なのだ

 

そう思えるエピソードになりました