婦人科へ行くことは、なかなか勇気がいることだった。ホルモン療法など未知の世界の話だし、そもそも吐き気が更年期からくるものだと、確信がなかったから。でも、ホルモンバランスの乱れが自律神経に影響を及ぼすのなら、吐き気が起きてもおかしくはないとも思った。すでに、不眠や吐き気、下痢、頭痛、息切れ、動悸、ふらつき、集中力の低下、手のこわばり、情緒不安、ありとあらゆる症状に苦しんでいたし、これだけでも行く理由になるのではないか、と思い切って、近所の産婦人科へ行った。更年期相談と、看板にも書いてあった。ただ、検診で乳がんを見落とすことが多いといううわさも聞いていた。

予約していなかったが、30分ほどで診てもらえた。その間、問診も必死に書いた。そのころは、普通に生活することが、こんなに大変だとは思わなかったくらい、何もかも必死だった。しかし、その医師は、問診をちらっとみると、「吐き気?吐き気なんて更年期で聞いたことないよ!」と、吐き捨てるように言った。看護師のいる前で、なぜか怒ったように説教めいたことを言い始めたのだ。「だいたいね、吐き気なら、胃腸科に行くのが筋でしょ。」ああ、この人ではだめだと思い、ただ返事だけしていた。「ああ、そうですか」と。すると、突然「こっちを見なさい!」とよくある更年期症状の書かれたパソコン画面を指さされた。「吐き気なんてどこにも書いてないでしょうが。」私は、胃腸科の先生には、ホルモンが関係することがあると言われたので相談にきました、と言うと、「全く、近頃は、なんでもかんでも更年期のせいにすればいいと思って!」ぐったりしている患者を前に、よくここまで言えるなと思いながら、部屋を後にした。これでも診療したことになるのかしらとぼんやり思った。一応、県の産婦人科医師会の会長であり、看板に更年期相談などと謳っているのに、向上心のない人っているものだ。おじいちゃん先生には二度と診てもらいたくないと思った。