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政治学から見るAKB総選挙

政治学から見るとAKB選抜総選挙は興味深い要素が盛りだくさん。
それらの解説を通して、政治学も学んでもらおうというブログです。

 それではAKB48SKE48NMB48はそれぞれの地方にどれくらい根差しているのでしょうか。


 まず表1「第3回選抜総選挙の地域別投票数」を見てみましょう。AKB48の地元である首都圏エリア(埼玉、千葉、東京、神奈川)の投票数の割合は全体の約33%でした。SKE48の地元である中京エリア(岐阜、愛知、三重)では約10%、NMB48の地元の京阪神エリア(京都、大阪、兵庫)では約13%となっていました。全国の人口比率から見ると、首都圏エリアで約28%、中京エリアで約9%、京阪神エリアで約13%ですから、首都圏エリアでは若干高くなっているものの、ほぼ現実の人口比率を反映していると言えそうです。


政治学から見るAKB総選挙-表1「第3回選抜総選挙の地域別投票数」

■ 表1「第3回選抜総選挙の地域別投票数」


 次に表2「グループ別の獲得票数」を見てみましょう。これは第3回選抜総選挙でAKB48SKE48NMB48のメンバーが獲得した票数を示しています(ただし40位以内しか票数は公表されませんから、あくまで40位以内での数です)。AKB48は約90%を獲得しています。SKE48は約9%NMB48は約1%ですので、AKB48が圧倒的に票数を集めていることがわかります。


政治学から見るAKB総選挙-表2「グループ別の獲得票数」


■ 表2「グループ別の獲得票数」
 

 ここで、この選挙の特徴を思い出しましょう。この選挙の重要な争点は、前田敦子と大島優子の「センター対決」でした。そこで前田・大島の二人の獲得票数を除いて、再度、同じように計算すると(表3「グループ別の獲得票数(前田敦子・大島優子の獲得票数抜き)」)、結果は、AKB48は約87%SKE48は約12%NMB48は約1%となりました。AKB48支持票は減ってはいるものの、それほど大きく減ったとは言えないようです。AKB48は前田・大島抜きでも十分に票を獲得しています。

政治学から見るAKB総選挙-表3グループ別の獲得票数(前田・大島の票数抜)



■ 表3 「グループ別の獲得票数(前田敦子・大島優子の獲得票数抜き)」


 次回はこの結果を考えてみることにしましょう。

 現在の日本では、全国一律ではなく、それぞれの地方に特徴があり、それぞれの地方に沿った政治の在り方が模索されているといえます。それを端的に示すのが「地域政党」です。この場合の「地域」とは日本でいう「東北地方」「九州地方」といった「地方」とほぼ同じニュアンスだと考えてください。


 地域政党とは、国全体ではなく、国の一区域で活動する政党を指します。全国で画一的に活動するのではなく、その地域の独自の利益に沿って政党活動をするという特徴があります。

 まだ国政選挙では有力な存在とはなっていませんが、地方議会選挙では2010年代に徐々に議席数を伸ばしています。大阪府や愛知県では、首長である橋下徹大阪市長(元大阪府知事)や河村たかし名古屋市長のリーダーシップの下で、「大阪維新の会」や「減税日本」といった地域政党が活動を活発化しており、地方議会ではすでに議席を獲得しています。


 外国の例では、北部イタリアの利益を代表する「北部同盟」などが有名で、地域政党であっても地方議会だけでなく国会に議席を持っている場合もあります。この他にも英国やスペイン、ドイツなどでも見つけることができるでしょう。

 ところで、1つの地方で足場を固めるという視点からAKB48グループ全体を考えてみましょう。そもそもAKB48は「会いに行けるアイドル」を当初の売りとして、東京の秋葉原にあるAKB劇場を拠点に活動を開始しました。そして今でもAKB劇場で活動を続けています。同様に、SKE48は名古屋の栄にあるSKE48劇場、NMB48は大阪の難波にあるNMB48劇場に拠点を置いています。今でこそそれぞれが全国規模の人気を博していますが、当初の計画ではそれぞれの劇場で獲得するファンを基礎とするものだったといえるでしょう。


 それではAKB48SKE48NMB48はそれぞれの地方にどれくらい根差しているのでしょうか。


 これまで、当選人数(定数)という視点から現実の選挙制度を整理し、AKB総選挙をそうした諸制度に当てはめて検討してきました。前回までの話をまとめれば、AKB総選挙は、センター(定数=1)を決める「小選挙区制」の側面、そして、選抜メンバー(定数=12)、メディア選抜(定数=21)、アンダーガールズ(定数=40)を決める「大選挙区制」という側面という、2つの制度・4つの選挙の顔を持っていることがわかりました。以前、AKB「総」選挙を衆議院、参議院両側面から検討した際、両制度が混在した「多層的」な選挙と位置づけましたが、選挙制度の側面から見ても、そうした「多層的」な側面がAKB総選挙の特徴であるのです。

 ところで、この「多層的」な側面は、AKB総選挙の更なる特徴を示しています。つまり、AKB総選挙は、2つの制度・4つの選挙という複数の制度が単に混在しているだけでなく、それを1つの選挙で行っているところに最大の特徴があります。

 もちろん、現実の選挙においても1つの選挙において複数の制度が採用されていることはあります。例えば、衆議院議員総選挙では、「小選挙区」と「比例代表」との2つの制度を取り入れた、「小選挙区比例代表並立制」となっています。しかし、通常、制度が異なれば票の集計も異なりますし、更に言えば立候補者も異なります。つまり、現実の小選挙区比例代表並立制においては、候補者は小選挙区若しくは比例代表の何れかに立候補し(もちろん比例代表との重複立候補も出来ますが)、有権者は「小選挙区」で1票、「比例代表」で1票の最大計2票を投票します。そして集計では、それぞれ別に集計されて結果が決まります。それに対して、AKB総選挙は、複数の異なる制度の選挙を1つの選挙・1つの集計結果で決めているといえるのです。

 これを、現実の選挙に当てはめてみましょう。県を例にとれば、「県知事選挙」、「県議会選挙」、「政令指定都市市議会議員選挙」、「市町村議会選挙」の複数のレベルの選挙がありますが、こうした各選挙を一度の選挙でやってしまうようなものです。○○県48のような政治家集団がいるとして、選挙の結果1位となった候補者がセンター(県知事)となり、ある一定の定数までが、選抜メンバー(県議会議員)やメディア選抜(政令指定都市市議会議員)となり、当選ラインギリギリまでの当選者が、アンダーガールズ(市町村議会議員)となるような仕組みといえるのです。

 なお、この場合、候補者がどの制度(カテゴリ)に立候補しているのかは必ずしも明確ではありません。また、逆にいえば、候補者が仮に何れかの制度での当選を意図していたとしても、そのカテゴリで当選できるとは限らないのです。現実の選挙に当てはめてみるとなかなか面白いですね。それこそ、「もしも、日本の選挙がAKB総選挙だったら・・・」。どういった結果になるのか興味深いです。