わたしが本当にやりたいことに出会うまで


今日は、自分が本当にやりたいことを見つけるまでの過程を、正直な気持ちで書いてみたいと思います。


日本で会社員として働いていたときに感じた葛藤や苦しさを通して、もし今、同じようにしんどい思いをしている人がいたら、何かのきっかけや、少しでも前を向く勇気になればと思っています。


小さい頃、父が自営業でアンティークショップをしていて、イギリスと行き来をしながら買い付けをしたり、海外のパートナーと英語で電話しているのをそばで見て育ちました。父がアメリカに住んでいた頃の話や、世界を旅したときの話を聞くのが大好きで、私にとって海外は、未知で、魅力的で、夢のある場所でした。それはいつしか「いつか私も、英語を話して、世界を飛び回る人になりたい」という思いを抱くようになっていました。


高校生のときにアメリカで短期ホームステイをしたり、大学生のときにはイギリスに語学留学をしたり。そのたびに、「もっと英語を話せるようになりたい!」という気持ちはどんどん強くなっていきました。けれど長期で海外に行く機会はないまま、大学卒業後は東京のIT企業に就職しました。


社会人になっても、「海外で働きたい」「父のように英語を使って、海外の人と対等に仕事がしたい」という想いは消えませんでした。でも、社会人3年目のとき、社内で海外経験豊富な上司に「君は海外で何ができるの?」と聞かれ、何も答えられなかった自分にモヤモヤが残りました。


それでも、私はチャンスを探し続けました。インドでの研修や、グローバル志向の社員向けの社内研修などに手を挙げて参加して、言葉が通じない中でも人と繋がっていくことの楽しさや、異なる文化に触れることの高揚感、自分が海外の人たちと英語でコミュニケーションをとるときに感じる「ワクワクする感覚」は、本当に自分にとって大切なものだと確信しました。


そして、社会人5年目には、社内公募で自ら希望してコンサルティング部門に異動しました。理由のひとつは、海外との業務により多く関われると思ったからです。


異動後は、スペイン、ウクライナ、イタリアなど、海外の同僚と一緒にプロジェクトを進める機会に恵まれました。文化や価値観の違いに戸惑いながらも、現地の人たちと英語で議論したり、少しずつ信頼関係を築いていく過程に、やりがいと喜びを感じていました。


そして社会人7年目、ついにイタリア駐在のチャンスがやってきました。


これは、たまたま訪れたチャンスではありません。私はずっと、自分の想いを上司に伝え続けていました。海外で働きたいという気持ちを言葉にして、自分なりに行動を重ねてきました。イタリアのグループ会社での研修に参加した際には、現地の上司にも、そして自分の上司にも直接「ここで働きたい」と何度も想いを伝えました。


その想いが実を結び、ついに「次のプロジェクトでイタリアに行ってみないか」と声がかかったときは、本当に嬉しかったです。「やっと夢が叶うんだ」と思いました。


でもその1週間前、コロナの影響で日本からの渡航が禁止に。私の駐在の話は、白紙になりました。


頭では「仕方ない」とわかっていても、心は全然追いつきませんでした。燃え尽きたようになって、仕事へのモチベーションはなくなり、目標も見失い、結果も出せなくなっていきました。昇進のチャンスも逃し、周囲と自分を比べては、自己嫌悪に陥っていきました。


何より苦しかったのは、「海外で働きたい」「英語を使いたい」「グローバルな環境で生きたい」という自分の「本能に近い強い気持ち」を、言葉でうまく説明できなかったことでした。


「なんで海外じゃなきゃだめなの?」「英語じゃなくても仕事はできるんじゃない?」と言われるたびに、自分の中の熱い気持ちを否定されるようで苦しかった。自分の好きなこと、やりたいことを、ロジックで正当化しなきゃいけない環境で、言葉にできない情熱を持っていることが、むしろ自分を苦しめることになっていました。


仕事は忙しく、結果を出すことを求められ、いつの間にか「自分の気持ち」を押し殺すようにして働いていました。共感や優しさより、ロジカルさや効率が重視される環境の中で、私の価値観はどんどん置き去りにされ、自分の感情さえもわからなくなっていきました。



今、思うのは。


本当は、もっと早く「わたしは何を大切にしたいのか」と向き合うべきだったんだと思います。


「会社に属していなければならない」とか、「この会社にいた方が安心」という考えが、私の本当にやりたいことから目を背けさせていたのだと思います。


自分の人生を生きるには、「自分の出した結果には自分で責任を持つ」という覚悟が必要で、それが怖くて逃げていた。きっとそれが、当時の私を一番苦しめていた原因なんだと思います。


私は、人への思いやりや、リスペクト、誰かを励ましたり、寄り添ったりすることが好きでした。でも会社では、それよりもロジックや数字、成果が求められていて、私が大切にしたいものは「弱さ」だと感じられていた。自分の強みが強みとして見られない場所にいることは、こんなにも苦しいのかと痛感しました。


いま、私はアメリカで高齢者を支援するソーシャルワーカーとして働いています。


論理的には説明できないけれど、それでも「どうしても海外で働きたい」「英語を使って仕事がしたい」という気持ちと、自分が経験したような孤独やつらさを抱えている人に寄り添いたいという価値観。このふたつを大事にして、ようやく選んだ道です。



就職活動中は不安もたくさんあったけれど、「自分が本当に大切にしたいこと」に向き合う中で、自然と、同じ価値観を持つ団体や人たちと出会うことができました。


働く場所を選ぶことは簡単ではないけれど、「自分にとって大切なものが大切にされているか」という視点で選ぶことで、あの頃のような孤独感は減っていきました。


いまは、同じような価値観を持つ仲間たちと一緒に、誰かの支えになる仕事ができていることを、心からありがたいと思っています。もちろん大変なこともあるし、これからもきっと壁にぶつかることはあると思います。でも、自分で選んだ道だからこそ、諦めずに進んでいける気がしています。


今、もし会社の中で苦しいと感じている人がいたら、どうか自分を責めないでください。

そして、「こんな気持ちになる自分が弱いのでは?」と感じているなら、それはきっとあなたが優しくて、繊細で、自分に正直だからです。


人生には、いろんな選択肢があります。今の場所がすべてではありません。


「ちょっと試してみようかな」そんな軽い気持ちでもいい。

もし違ったら、また戻ってもいい。

失敗しても、それで終わりじゃない。


私はそう信じています。



わたしは、わたしの「好き」を信じたかった。


誰かの評価や常識に負けそうになったことも何度もあったけれど、

自分の気持ちを無視しないで進んできた今、ようやく「自分の人生を生きてる」と思えるようになりました。


もし今、同じように苦しんでいる人がいたら、完璧な答えなんてなくても大丈夫です。

少しずつ、自分の気持ちに正直になってみることからでもいい。


道はひとつじゃないし、どこかにちゃんと、自分に合う場所があると思います。