いつもお邪魔しているブログに「なごり雪」という言葉が出ていた。

今NHKBSで放送されている「舟を編む 〜私、辞書つくります〜」が非常に興味深い内容を扱っているドラマだ。
このドラマは辞書作りにかける情熱を描いたものだが、ふと「なごり雪」という言葉は辞書においてどう扱われたのかと疑問になった。

歳時記には通常春の季語「雪の果」の傍題として「名残の雪」が載っている。
「名残雪」は季語には無い。

「広辞苑」には「名残の雪」が載っている。語釈は「春になってから冬のなごりに降る雪。」となっている。
「大辞林」にも載っていたが、それ以外の中小辞書には載っていなかった。

「広辞苑」や「大辞林」でも「なごり雪」は載っていない。

図書館にあるすべての辞書を調べたところ一つの辞書だけに「なごり雪」が載っていた。

『三省堂国語辞典』の第八版です。

『三省堂国語辞典』の第八版は2022年1月初版。
「なごり雪」は第八版からあたらしく載った言葉である。


「なごり雪」がかぐや姫のアルバム『三階建の詩』の収録曲として発表されたのは1974年3月12日。

イルカの歌によるカバーバージョンがシングルとして発売されたのは1975年11月。

「なごり雪」が日本語として認定されるまで実に47年かかった。
しかも辞書にミュージシャン伊勢正三の造語と記されている。

ドラマ「舟を編む」では辞書には新語、流行語のたぐいは載らない。何十年も日本語として使われる言葉として認定されて初めて辞書に載ると言っていた。


NHKのドラマ「舟を編む 〜私、辞書つくります〜」は全10話のうち3話まで放送されている。(毎週日曜日夜10時NHKBS)

2話では「恋愛」という言葉の語釈は、すべての辞書において男女間、異性間のものとしている。主人公の岸部みどり(池田エライザさん)がジェンダーの時代におかしいと疑問を抱く回が放送された。

このドラマは2011年に発売された三浦しをんさんの原作をもとに、その後半部分だけをドラマ化している。

現在は三省堂だけが男女間、異性間の言葉をなくし、おたがいという言葉に置き換えている。それ以外の辞書では相変わらず男女間、異性間のものとしている。

ドラマでは他に「左」という言葉をどう説明するかも話題となっている。
当然右の反対では語釈にならない。
これも辞書によってさまざまな語釈がされている。

ドラマではどんな結果になるのだろうか?


三浦しをんさんはこの本を書くとき、実際に岩波書店および小学館の辞書編集部に取材をしてから、執筆されたそうだ。