
彼岸花の存在を知ったのは
19歳の秋だった
夏休みを終えて再び四国へ戻ったある日
田んぼの脇に赤い花がたくさん咲いてるのに気づいた
“彼岸花か”
“彼岸花は嫌い、名前が彼岸って嫌な感じ”
という内容の会話を聞いて
早くにお父様を亡くしたその人の気持ちに同化していったのだった
ちょうど父が闘病中だったので
正に私はあの赤い花が、しかも固まって咲いてるのをみると余計に
何だか切ない気持ちになるのだった
小さな花がたくさん集まって大きな花を作ってると気づくのには
しばらくかかったっけな
夏休みが終わって
帰りたくなかったあの日
伯父の目を盗んで
ドライブに連れていってもらって
その車窓から見た彼岸花
今頃咲いてるかな
秋祭りの準備が街中で始まってくる
この時季
切なさと
お囃子の哀愁と
彼らの祭に対する情熱と
この花を見ると
胸の奥がきゅんと疼くのであった