上昇気流に乗って『Live Airline』 | 拝啓、ステージの神様

拝啓、ステージの神様

ステージには神様がいるらしい。
だったら客席からも呼びかけてみたいな。
観劇の入口に、感激の出口に、表からも裏からもご一緒に楽しんでみませんか。

拝啓、ステージの神様。
いろいろなお客様が乗ってますよ。  

「ご搭乗ありがとうございます。」
観客はこうして迎えられ、客席へ向かう。
今日はパスポート持ってないけど、いや、そもそも期限切れてから更新してないや!だけど、それはいいらしい。
ミュージカル『Live Airline』のチケットさえ持っていれば。

六本木の俳優座劇場。ミュージカルが上演されるのは、意外?にも老舗の劇場だ。
でも、客席に向かう階段の幅は、飛行機に乗り込むサイズとリンクしていてユニークだった。
膝掛けや飴ちゃんや新聞をご自由に……までやったら、趣旨変わってしまいますね(汗)。

キャストは元宝塚歌劇団 月組男役の宇月颯さんはじめ、俳優、アイドル、ダンサーなど実に多彩な顔ぶれ。
拍手や手拍子の入り方にそれぞれの(暗黙の)流儀がありそうで、それに相乗りしたり、しなかったりするのも楽しい。
まさにいろんな立場や事情を抱えた人がいる飛行機の乗客みたい。

ストーリーはこうだ。
Live Airlineは、機内でエンターテインメントショーも提供する特別な飛行機。
今日のフライトには、吉村香澄(宇月颯)と双子の弟、航(中島康宏)と翔(清瀧千晴 牧阿佐美バレヱ団)がキャビンアテンダントとして乗り込んでいる。
乗客には香澄の祖母で飛行機嫌いの慶子(山崎佳美)とその孫、さくら(立仙愛理 AKB48チーム8)がいる。
ニューヨーク行きの飛行機は、パーサーの滝沢(松村雄基)やキャビンアテンダント仲間たち、その他の乗客もいて何やらにぎやかだ。

歌やダンス、ミュージカルメドレーなどを盛り込みながら、向かう先に待つものは……。

制服で踊ったかと思えば、レビューのドレスに身を包み、次々と早替えもみせながら飽きさせない演出。
学校法人日本航空学園が共催なので、整備士が出てきたりもする。
航、翔のダンスは、それ自体が美しく旋回するフライトのようで、ここが老舗の劇場であることをすっかり忘れさせてくれた。

華やかな女性陣の中で出だしこそ地味に見えた香澄役の宇月さんが、どんどんのびのびして、きらめきの存在感を出していく感じもまた、飛行機が上昇気流に乗る感じで良かった。

こんな飛行機が現実にあったらいいな!と思うか否かは別として(汗、
客席でドリンクが飲めたら最高なのにと思ったのは事実。
あり得ないことが目の前で起こっても、いや起こるからこそ楽しめるのがエンタメだとしたら、
この飛行機は……という説明はせずに物語が展開して、歌やダンスを見せつけてくれてもいいなと感じた。
「いや、そんな飛行機あるわけないし……」
「でもあったら楽しいかも!」
「それなら客船に乗るわ」
「いや、ひょっとするかもよ」
みたいな勝手な茶々を入れる余地が欲しいのだ。
説明されなければ、それが許される気がするのだけれど、何度か説明されたり、設定を繰り返されると、ツッコミがいれづらくなるし、楽しまない人の力不足……のように思わされる人もいるだろう。
いや、考え過ぎか。

とはいえ、お馴染みのミュージカルのメドレーが聞けて爽快。キャビンアテンダントの恋とか交えて、作品とリンクするとこれまたニヤリが増えそうで、そんなことまで期待しちゃうのも欲張りが過ぎるかもしれない。

「ご搭乗ありがとうございました」と送り出されて劇場を出るのは心地よくて、エントランスにArrivalという文字が一瞬見えた気がした。

〈公演日程〉
2019年11月20日(水)~12月1日(日)


俳優座劇場