師走に浴びた『メンフィス』 | 拝啓、ステージの神様

拝啓、ステージの神様

ステージには神様がいるらしい。
だったら客席からも呼びかけてみたいな。
観劇の入口に、感激の出口に、表からも裏からもご一緒に楽しんでみませんか。

拝啓、ステージの神様。
師走の本音も入れてみました。

2015年以来の再演ミュージカル『メンフィス』。

2年前の観劇記、コチラを!

今回は主演のヒューイ役、山本耕史さんが演出も手掛け、再びのキャストと新たなキャストでバージョンアップされていた。
劇場は、新国立劇場 中劇場。

自分たちと違うものを受け付けない、近寄らないという傾向は、この作品で描かれる時代の1950年代と今も全然変わっていないような気がして、そういえば今年は排除なんて言葉も世間をざわつかせたしなぁ。
でも、ざわつくということは、それに抵抗したい、受け入れたくないという気持ちがあること。
『メンフィス』の中でも、白人のヒューイは黒人音楽をいい!と言いたくて、
黒人のフェリシア(濱田めぐみ)は、ありえないと思っていたヒューイとの恋に落ちるのだ。
フェリシアの兄 デルレイ(ジェロ)だって、ヒューイのお母さんグラディス(根岸季衣)だって、プロデューサーのシモンズ(栗原英雄)だって、当たり前にあった区別に目を向けるようになる。

バネのあるダンスが気持ちよくて、パワフルな歌声に背中を押される。
黒人たちの教会で歌われるゴスペルが、心の中に出来ていた絶対に崩せないと思っていた壁をずらせたり、
ラジオから流れる音楽が、触れることのなかった肌に触れるきっかけになったりするんだ。

2幕はステージに盆が登場して、それはレコード盤を模していた。盤が回ると音楽が流れる、時がまわり(めぐり)、流れていくのとリンクしていた。
立ち止まると自分以外は流れていく。
ヒューイが選択する人生にも、やっぱりリンクしていた。

音楽は、ボン・ジョヴィのディヴィット・ブライアン。
ブルースもロックもゴスペルも、どの曲にもソウルがあって、たっぷり音楽を身体に浴びることが出来た。

リピーターも多かったというこの作品。
私ももっとたくさんの人を誘ったり、伝えたりしたかったなぁ。
でも、今日が千穐楽だったのだ。
師走なんだもん、というへんな言い訳。

カーテンコール、役者さんはもちろんだけど、バンドメンバーの方々が前方に並んだ時の表情がとってもキラキラと清々しくて、いい音をいっぱい浴びることが出来た嬉しさが倍増した。

いつかまた再演を!

なんかね、好きな人ばっかり出ていた作品だったんです。

〈公演日程〉
2017年12月2日(土)~12月17日(日)
新国立劇場 中劇場