上野アーティストプロジェクトの第9弾。

 

このプロジェクトは「公募展のふるさと」と呼ばれている、東京都美術館の歴史の継承という意味をこめて、公募展に関わってきた作家さんを紹介するものらしいです。

 

今回は大正期から現代まで、亡くなってしまった人も含めて5名の作家さんの作品が並べられていました。

 

 

🔳展覧会入り口案内

 

上野アーティストプロジェクト2025 刺繍作品展

 

 

 

 

🔳作品紹介

 

気になる作品をいくつか

 

●平野利太郎《サボテン》1955年 町田市立博物館

 

平野利太郎《サボテン》 embroidery art

 

平野利太郎(1904ー1994)さんは代々続く刺繍職人の家に生まれた作家。

10代には日本画を、20代には古典工芸や染色デザインをそれぞれ師について学び、その後日展などで活躍しました。

日常のものをモチーフとして、題材に合わせて糸を染め、撚り方を決め、時には貝や皮などの素材も取り入れるなど、

伝統の技を継承しながら、新しい表現を追い求めた方。

 

 

 

●尾上雅野《赤い花の中の少女》 公益法人日本手芸普及協会

 

尾上雅野「赤い花の中の少女」刺繍作品

 

 

▼ 部分

 

尾上雅野《赤い花の中の少女》刺繍作品

 

糸で組まなく、画面を縫い上げているのがわかりますね。

 

 

尾上雅野(1921ー2002)さんは西洋刺繍の手法を取り入れた作家さん。

主婦の友社が主催する1956年の「秋の手芸展」に初入選すると、数多くの入選を重ねていくことに。

毛糸を使って、絵を描くように作品を作り出し、1966年には日本橋の三越ギャラリーでの個展を開催したことで広く知られることになったそうです。

その後、手芸普及協会の会長も務めるなど、刺繍の普及、後進の指導などにも大きな功績のあった作家さんです。

 

 

 

 

 

 

●岡田美佳《かたくりの道》2010 武田和久氏蔵

 

森の小道、葉で覆われた地面、野花

 

 

 

●岡田美佳《ブルーベル咲く道》2012 株式会社冨山房インターナショナル

 

岡田美佳《かたくりの道》刺繡画

 

 

岡田美佳(1969ー)さんは幼少期から絵画や刺繍などの才能に恵まれ、学校の手芸クラブでの活動もあったようですが、ほぼ独学でこの技術を磨き上げたそうです、

きっかけは22歳の頃、安野光雅さんの絵本に触発されて刺繡画を作り始めたこと。

自由なタッチで風景や身の回りを刺繍した作家さん。

国内でも、海外でも数多くの展覧会を行ってきたアーティストです。

 

この方の風景の作品は大好きです。

 

 

 

●伏木庸平 《オク》2011  作家蔵

 

インスタレーション:多色テキスタイルと布の芸術

 

 

 

▼部分

 

カラフルな糸でできた立体的な刺繍作品

 

幅8メートルにもわたる展示作品。

なんでもサイズは調節できるそうですが、、、

そこが布の面白いところ。

 

 

 

 

 

●伏木庸平《左半身の肋骨》2018ー2024

 

伏木庸平《オク》作品

 

 

伏木庸平(1985ー)さんは、食事をしながら、会話をしながら針を刺していくそうです。

その時間のかかり方が半端じゃないことから、最初にイメージしたものから違ったものになっていくそうです。

だから作品を作るというより、毎日、日記をつけるように針を動かし続けるけることで出来あがった作品は、作品というより日々の積み重ねという方が正しいかもしれませんね。

 

その自由な表現は圧倒的な存在感がありましたね。

 

 

 

●望月真里《象は森の王様》2020  個人蔵

 

望月真里《象は森の王様》刺繍作品

 

 

▼部分

 

象と植物の刺繍画

 

 

 

●望月真里《中国山のあいの村》1996 個人蔵

 

刺繍による風景画のタペストリー

 

 

望月真里(1926ー2023)さんは大学卒業後、洋裁学校で学びます。

結婚後、ご主人の転勤で色々なところで暮らすことに。そんな中でも西洋刺繍に没頭されていたそうです。

転機となるのは、インドのベンガル地方での古い布の再生や祈りの要素を持った「カンタ」と呼ばれる針の作品と出会ったこと。

それから幾度となく現地を訪れ、「カンタ」を学んだそうです。

「カンタ」は自由度が高くて、あえて完成を目指さないところもあるそうで、手本からの脱却ができた作家は、自分なりの「カンタ」を作り出していくことになりました。

死ぬ前日まで、その針仕事は止むことがなったそうです。

 

 

 

 

この展覧会は会期は来年の2026年1月8日(木)まで、

年末年始はお休みなので、行かれる方は東京都美術館の公式ホームページなどでご確認をしてくださいね。

 

伏木さんや岡田さんなど、今後も見続けていきたい作家さんを知った展覧会。

もっと早く知っていたらよかったのに、、

そうしたらもっと深い見方ができていたかも知れないでしたね。

 

少し後悔。

 

 

 

 

今日の1枚のアート(←勝手に名付けた)

 

今回は、江戸時代初期の柿右衛門様式の完成期の作品のご紹介。

白い磁器の肌がとても美しいのですね。

 

こんな色の磁器がアーティゾン美術館の常設展の日本美術が並べられている仄暗い空間に並んでいたので、

見た時、一瞬息を飲みました。

 

 

●《色絵松竹梅虎文六角瓶》有田 江戸時代 1670ー1700年

 

 

色絵松竹梅虎文六角瓶 柿右衛門様式

 

濁手と呼ばれる白い素地。

柿右衛門様式の特徴。

 

繊細で鮮やかな絵付けを美しく見せるために工夫された素地なのですが、逆にその繊細な絵付けが白い素地をさらに美しく見せてしまう作品。

 

描かれているモチーフが主役のはずが脇役に、逆に透明感のある素地の美しさが脇役のはずが主役になってしまいます。

 
 
🔳他にも↓
 
 
●《色絵菊唐草文長皿》有田 江戸時代 1670−1700
 
色絵菊唐草文長皿 柿右衛門様式
 
 
 
 
 
 
 
●《色絵紫陽花唐花文鉢》有田 江戸時代 1670ー1720
 
色絵菊唐草文長皿、有田焼
 
 
 
 
 
 
●右 《色絵花鳥文輪花鉢》有田 江戸時代 1670ー1700
●左 《色絵花鳥文瓶》有田 江戸時代 1670ー1700
 
柿右衛門様式の色絵磁器2点
 
 
 
 
●手前 《色絵菊流水分皿》有田 江戸時代 1660ー1700
●奥 《色絵松竹梅文竹形水注》有田 江戸時代 1660ー1690
 
色絵松竹梅虎文六角瓶と菊唐草文長皿
 
 
17世紀半ば頃から始まった柿右衛門様式。その完成は延宝年間(1673–81年)の頃。
これらの作品はちょうどこの時期の作品ですね。
 
しかし、同じこのころから金蘭手と呼ばれる、豪華な作品が流行して、日本や世界に広まっていくのですが、それはまた別のお話。

 

実際に見てみないと、、、

 

この素地の美しさは画像では表現できないと思います。

 

できたら会場で、、

特にこのほの暗い展示室で見るのが最高かもしれません。

す先日、柚木さんの個展を見に行った初台のオペラシティのアートギャラリーの常設展で行われていた個展です。

 

今回紹介する「プロジェクト N」とは、このギャラリーのコレクションの中心作家である難波田龍起さんの意思をついで、若手作家の育成と支援のため、オペラシティアートギャラリーの常設展の一部の、コリドーと呼ばれる場所で開催されている展覧会のこと。

 

今回は100回目になるみたいで、ギャラリー側も気合を入れて選んだことでしょうね。

 

ということで、富田正宣さんの個展のご紹介です。

 

富田正宣さんの個展

 

🔳タイトル

 

富田正宣展「project N 100」

 

 

🔳展覧会風景

 

富田正宣 個展 アートギャラリー風景

 

 

 

富田正宣の展覧会風景

 

 

 

🔳富田正宣さんとは

 

1989年熊本県のお生まれ。

2013年に東京藝術大学絵画科油画専攻卒業されています。

現在は埼玉県在住。

 

国内でも「ターナーギャラリー」や「KAYOKOYUKI」、渋谷のヒカリエなどで展覧会を行っています。

さらに海外でも活躍されていて、ロンドン、シンガポール、ヴェニツィア、ロサンゼルス、パリ、香港などでも。

 

国際的なアーティストさんなんですね。

 

 

🔳作品紹介

 

気になった作品をいくつかご紹介。

 

 

●《ユーセン》2022

 

富田正宣《ユーセン》の抽象画

 

 

▼部分

 

富田正宣 《ユーセン》 油絵の質感

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●《盤》2025

 

富田正宣《ユーセン》抽象画

 

 

▼部分

 

富田正宣の油絵、ユーセン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●《キャラウエイとcall》2015

 

富田正宣《ユーセン》絵画風景

 

▼部分

 

富田正宣《ユーセン》の画肌

 

 

 

この方の魅力は細部にあるのではないでしょうか。

 

絵肌は近くで見ると本当に魅力的ですね。

 

どれほどの時間をかけて、画面に絵の具を重ねて、どの段階で完成品だとするのでしょうね。

 

この部分が描けたから、これを描くことができたから、、、

それで完成だと思うところが作家さんなりにあると思うのですね。

 

ギャラリーで配られている小冊子の解説を読んでもよく理解できない私ですが、、、

それを聞いてみたかった展覧会。

 

時間を取ってもう少しゆっくりみたかったなって思いました。

 

会期は12月21日まで。

 

特別展の柚木沙弥郎さんの展覧会だけでなく、プロジェクトNの他、寺田コレクションハイライトも行っている、東京オペラシティのアートギャラリー。

常設展もお見逃しなく。

 

 

🔳同時開催の柚木沙弥郎さんの展覧会です

よかったら読んでください

 

 

 

 

 

今日の1枚のアート(←勝手に名付けた。

 

先日、東京国立博物館の本館の常設展で飾ってあった作品。

 

●重要文化財《錆絵観鴎図角皿》 尾形光琳・深省(乾山)合作 江戸時代 18世紀

 

尾形光琳 乾山 観鴎図角皿

 

 

 

▼向かって左から

 

尾形光琳 錆絵観鴎図角皿 陶芸作品

 

 

 

▼向かって右から

 

尾形光琳 観鴎図角皿 東京国立博物館

 

 

江戸時代を代表する、陶芸家の尾形深省(乾山)と兄の尾形光琳の合作の作品。

 

尾形乾山は野々村仁清に陶芸を学び、京都の鳴滝に窯をひらき本格的に陶芸で生きていきます。

その後兄の光琳との合作で数多くの作品を作り、名作が生まレることに。

のちに江戸へ移り、江戸の琳派へ影響を与えたとされています。

 

この作品では、作陶を乾山、絵付けを光琳が行っています。

 

情景は中国の詩人の黄山谷が鴎を見ているところです。

 

文化遺産オンラインというホームページによると、

表側の左下に書いてある文字は、

 

「寂明光琳 (花押)」

 

このことから光琳が描いたことがわかりますね。()

 

 

 

▼裏側

 

尾形光琳 錆絵角皿 銘文

 

裏側には、乾山の書があります。

 

先ほどの文化遺産オンラインのホームページによると

 

「大日本国陶 者雍州乾山 陶隠深省製 于所居尚古斎」

 

と書かれているそうです。

 

雍州とは山城国(現在の京都府の南部)のことでしょうね。

 

 

角皿の面には大胆な筆致で、余白を大きくとって、鴎を見ている黄山谷を描いています。

それに対して角皿の側面には、簡略ながらも、植物をモチーフとした図柄が丁寧に描かれているのが対照的。

 

見ても楽しいのですが、

この皿は使ってみてもいいんじゃないでしょうかね。

食材がとても映えると思うお皿です。

 

茶色の錆絵に対して、赤いトマトや、かぼちゃなどの野菜の煮物なんでどうでしょうか?

 

他にも魚の焼き物などもいいんじゃないでしょうかね。

 

そんなことを考えていたらすっかりお腹が空いてしまい、すぐトーハクを出て、上野のエキュートでお蕎麦を食べました。

 

もう少しゆっくり見ていたかったのに、、、

 

ちょっと後悔。

 

 

 

先日、銀座7丁目にある、ギンザグラフィックギャラリー(gggギャラリー)で開催中の、

中村至男(なかむらのりお)さんの個展へ行ってきました。

 

とっても素敵な展覧会。

シンプルでいながら、多くのことを語ってくれる作品がいっぱいでした。

 

 

 

●ポスター

 

中村至男デザインのロケットと星々

 

 

🔳中村至男さんとは

 

1990年に日本大学芸術学部美術学科卒業されます、

そして、CBS・ソニー( 現ソニー・ミュージックエンタテインメント)に入社。

 

その後、1997年に独立。グラフィックデザインをはじめとして、広告、映像、デジタルコンテンツ、絵本、書籍、パッケージなど多岐にわたってご活躍されています。

 

1990年代の「明和電機」での活動や、佐藤雅彦さんとのプレイステーションソフト「I.Q」。

また絵本でも、『どっとこ どうぶつえん』。『はかせのふしぎなプール』などの作品があります。

特に、『どっとこ どうぶつえん』(2012)は、イタリアのボローニャ開催されるボローニャ国際児童図書展にて優れた作品に贈られるボローニャ・ラガッツィ賞優秀賞を2014年に受賞されています。

 


🔳展覧会風景

 

中村至男展の作品展示風景

 

 

 

 

中村至男展のカラフルなアート作品

 

 

 

 

中村至男展の出品作

 

 

🔳作品紹介

いくつか印象的なものをご紹介

 

●《ヒロシマアピールズ》

 

中村至男《ヒロシマアピールズ 2023》ポスター

 

 

 

●明和電機

 

中村至男の作品集と明和電機グッズ

 

 

 

 

●《I.Q》

 

 

中村至男「I.Q」展 PS1本体とソフト

 

 

 

●中村至男展 2018年

 

中村至男展のポスター、魚と蛇口のデザイン

 

 

 

 

●単位展

 

中村至男「単位展」ポスターと展示風景


 

 

 

●MUJI Xmas  サンタの子

 

中村至男展:クリスマスツリーと兎のポスター

 

 

 

●TWIN UNIVERSE 

 

中村至男の青と赤の作品

 

 

中村さんの独特の簡潔で、エッセンスだけを取り出した短い表現。

それが色々な方向から描かれていることで、物事には見えていなかった事があることを気付かされます。

 

特に絵本や展覧会のグラフィックはシンプルで、ハッとさせられますよね。

 

会期は来年の2026年1月31 日(土)まで。

 

もっと写真を撮っておけばよかったと後悔した展覧会でした。

 

銀座へ来たらぜひお立ち寄りください。