美術館の悪ものたち
東京国立西洋美術館の版画素描展示室で開催中です。
会期は9月3日(日)まで。
■美術館にいる悪ものとは
悪魔、死者、罪人、怪物など。
作品の中にはたくさんの悪者が描かれてきました。
彼らは、アウトローの、ヒールのヒーローとして、ベビーフェイスのヒーローより魅力ある姿で描かれていたりします。
デューラーの、名作の版画が数多く展示されていました。
それらを含めて紹介したいと思います。
■作品紹介
●アルブレヒト・デューラー 《博士の夢》1498
博士が暖炉の脇で惰眠をとっています、「怠惰」は七つの罪の一つ。
ヴィーナスの裸体が描かれているところから、夢の中で「淫欲」の罪も犯しているようです。
●アルブレヒト・デューラー 《騎士と死と悪魔》
馬に乗る騎士の左脇に、死のアトリビュートの砂時計を持っている、死の擬人像。
馬に乗る騎士は死の象徴として描かれてきました。
馬の鼻の下には、豚とドクロが。
馬の後ろ側には悪魔が描かれています。
●アルブレヒト・デューラー 《魔女》
一番上に魔女が、ヤギに逆向きに乗っています。
本来空を飛んでいるキューピッドも、空を飛んでいません。
魔女によって世界が逆さまにされています。
●シエナ派 《聖ミカエルと竜》14世紀
キリスト教の文化圏では、竜は悪魔の象徴。
聖ミカエルが竜と戦うところは、よく描かれています。
この作品は、板絵。日本で貴重な板絵が見ることができるのは、日本ではここ国立西洋美術館が一番です。
●アルブレヒト・デューラー 《『黙示録』より 竜と戦う聖ミカエル》
1511年
●アルブレヒト・デューラー 《『黙示録』より 4人の騎士》
1511
馬に乗る騎士は死を表しています。
●フェルシアン・ロップス 《ポルノクラティスあるいは豚を連れた女》
1881
豚を連れ、目隠しをして裸で外を歩む娼婦。食欲と性欲にしか興味がないことを表しています。
ポルノクラティスとは娼婦政治家のこと。自分の利益にしか興味がない、そんな政治家を風刺しています。
●エドヴァルド・ムンク 《ハルピュイア》1900
ハルピュイアはギリシア神話に出てくる怪物。全てを貪り食うことから、「大食」の罪を表しています。この場面では、男性を食べようとしています。
●アルフレート・グビーン《死の舞踏より、(2)死の仮面》1918
死のイメージのドクロをモチーフにしていますが、死の匂いよりも、ユーモラスさが勝っていますよね。
常設展のこの版画素描室の展示の企画は、いつもとても面白いですね。
版画は、油絵とは違い、展示機会が少ないので、見逃す手はないですよね。
特にデューラーの版画はそうですね。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。