桜の花びらが散り落ちる中を歩く。
圧倒的な魔力で押し寄せる桜の息吹。
普段喜怒哀楽を表現することを好まない日本人が、桜満開の数日だけ、心の底で猛るのだ。
このひとときの狂乱を桜が煽る。
久しぶりに書のお稽古に出かけた。
産経国際書展にお誘いを受けたので、ちょっと緊張、かなりやる気で、
海老原露厳先生にテーマや、書体について御指南を受けた。
墨を筆に含ませ、紙に下ろす瞬間、瞬間の勇気を試される。
身体や心が、無から有に導かれる。
迷いや企みを乗り越えて、
自分に向き合う。
桜吹雪が舞っていると思いきや、いつのまにやら緑の新芽が枝に色をさしている。
ふと街路樹に目をやれば、
静かなハナミズキがもう花開き始めた。
一年に一度、桜に染まった興奮をハナミズキがサラリと鎮めてくれるのだ。