昨日は宮之上ギター道場の発表会。そして昨日話しかけてくれた青年へ | Bassist 清水昭好のblog

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jazz bassist/composer

5月のスケジュール更新も無事に終わったので昨日の出来事を。


昨日は宮之上ギター道場の発表会で生徒さんの伴奏のお手伝い。
皆さんこの日の為に頑張って練習をしてきたようで、演奏が終わった後、 晴れやかな顔をしている人もいれば演奏が上手くいかなかったようでとても悔しがっている人もいました。
どちらにしても、この日の為に頑張ってきた努力はきっと今後の財産になると思います。
皆さんお疲れ様でした。


さてこの日の休憩中に、レッスンを受け始めたばかりという、とても悩んでいそうな青年に話しかけられました。
どうやら彼はロックから入ってジャズのアドリブを習得しようとしているけど、ジャズのような複雑なコードチェンジを全部把握しながらアドリブを、またはウォーキングベースのラインを創っているという事が信じられないという様子でした。
しかも今すぐにでもそれを習得しないといけない!とう焦っている感じ。


何だか彼の話を聞いて過去の自分を思い出しました。
高校生の頃はこの彼と同じくエレキベースでロックをやっていて、(ジャズに比べると)複雑ではないコードチェンジの上でアドリブで演奏するということが好きでした。
またジャズは演奏はしていなくても高校生の頃から聴いていたので、ジャズを始めれば絶対に俺なら弾ける、と謎の自信さえ持っていましたね。笑

そんなわけで大学に進学した時にジャズ研究会に入って、ジャズを勉強し始めた訳ですが高校生の頃に持っていた謎の自信は、大学一年生の希望の春にボロボロに打ち砕かれたのでした。

全く音楽教育を受けていなかった僕は(遊びのDTMで作曲やゲーム音楽の耳コピはしていた)コードの知識も曖昧で、ジャズ研の先輩たちが譜面に書いてあるC とかF7とか Gmとか、その当時の自分にとってみたら謎の記号を見ながら、しかも初見で演奏しているのを見て本当に意味がわからないと嘆きました。

そう、まさに昨日話しかけてくれた青年と同じ気持ち。
その子に聞かれました「どのくらい経ったらジャズが出来るようになったのか?」と。
まぁ大学三年の頃にはプロで活動しようと思っていて、少しだったけど演奏の仕事はしていたから2、3年かなぁ?と答えたら「じゃあおれも2,3年辛抱すれば出来るようになるかなぁ」と言っていました。
こんな感じで会話が終わって、また演奏が始まったのですが、、、

このとき時間がなくて大事な事を伝えそびれてしまった気がするので、彼が見てくれるかはわからないけどここに書かせて下さい。

僕は全く何も出来ない状態からどのくらい経って出来るようになったかって言うのをハッキリ覚えていません。
でもそれは、目の前にある自分に出来ない事1つひとつに興味をもち、1歩1歩、自分では進んだと感じられないくらいゆっくりなスピードで先に進んだからだと思います。
大事なのは出来ないと感じる事を好きになり興味を持つこと。とくに音楽理論やジャズの複雑なリズムは最初はサジ投げたくなるくらい嫌なものかもしれないけど、理論やリズムだって最初から背伸びをせずに基本中の基本から学んでいけば勝手に音楽のほうから自分に歩み寄ってきます。

書いていたら高校生の頃にある楽器屋の店員さんに言われた言葉を思い出した。
「音楽理論っていうと、みんなスケールとか知りたい事ばかりを学ぼうとするけどそんなんじゃ何もわからない。いっっっちばん最初からやればすぐにわかるようになるから」
当時は楽譜の読み方すらわからない状態なのに「スケール」っていう謎の魅力的な響きに騙され、学ぼうとし、僕を含め僕の回りの音楽仲間はみんな見事に撃沈していた。笑
でも、その後その店員さんに言われた通り、音楽の基本中の基本の楽典を勉強し始めたら、次々と疑問が解け始め、学ぶことがめちゃめちゃ楽しくなったのを覚えています。

音楽をやっている人はみんな高い理想を持っていると思います。理想に近づくためにみんな努力をしていると思いますが、最初から背伸びをし過ぎず、ゆっくりゆっくり焦らず努力してみてください。
そうしたら自然と「理想の自分」が自分の方に歩み寄ってくると思いますよ。


この青年に向けた言葉は自分に向けたものでもあります。
青年のおかげでとても大事な事を思い出せた気がします、ありがとう。