娘を自分のイメージに当てはめようとする母親は少なくない。
その度合いの強さ弱さはあれど。
その最強の言葉は、
「あなたのためを思って言っている」
私は子どもの頃から独立した性格の子だった。
自分のやりたいと思ったことはやりたい子だった。
小学生低学年くらいまでは、
「女のくせに気が強い子」
家ではそう言われるくらいですんでいた。
小学校高学年から思春期、
そして就職して仕事をするようになると、
親との対立が大きくなっていった。
そのころの多くの女子が就職していく
一般事務の職には全く興味がなかった。
アシスタント的な仕事ではなく、
自分で責任を持てる仕事に魅かれた。
アルバイトなどを経て、落ち着いた先はイベント制作会社だった。
もちろん初めは補佐的な仕事ばっかりだったけど、
仕事は好きだったし、会社も楽しかった。
上司や先輩にもかわいがってもらっていた。
朝は比較的ゆっくりで、
どちらかというと夜が遅くなるような仕事のやり方の人が多かった。
用事があるとき以外は、夜８時９時くらいまで
会社にいることがしょっちゅうだったし、
イベント本番日や、設営・撤去のときは、
夜中になることも少なくなかった。
仕事を任されるようになってくると、その度合いは増えていった。
なんでそんな遅くまで仕事しなあかんねん！
女の子をそんな遅くまで働かすってどんな会社や！
会社に電話して文句言ってやる！
親にそう言って怒られ、よく言い合いになった。
仕事で遅くなるのは、会社に強制されていたのではない。
私が自分の意思で残っていた。
私がちゃんと仕事を見届けたかった。
何より、私はその仕事が好きでやりたかった。
会社や上司のせいじゃない、私がそうしたいんだと言っても
親には全く通じなかった。
なぜなら、親の考える女の子の働き方は全く違ったから。
「女の子は、９時から５時まで仕事して、
まっすぐ家に帰ってくるのが当たり前。
週に１回くらい、お習い事か友人とお茶してもいいけど、
それでも８時くらいまでにはかえってくるべき。」
これが、うちの親が考える、女の子の働き方だった。
今思うと、昭和何年の日本やねん、と思うけど、
そのときはわからなかったな。
私が他の人から浮いているんだと思っていた。
そして、口答えする私に、かならず親は言う。
「あんたのため思って言ってあげてるんよ」
「あんたの将来のために、注意してあげてるんでしょ」
そうして、娘は罪悪感を抱え込んでいった。
親の言うことを聞けない子。
親に心配をかける子。
世間一般からずれている子。
近所の人からみっともないと思われてる子。
何年かして私が実家を出て、その対立は終わった。
好きなように、のびのびと仕事することができるようになった。
私の生活スタイルを誰にも否定されず、本当に楽になった。
でも、就職して何年も経っていて、
普通にお給料ももらっていたのに、
やいのやいの言われて、親と一緒にいるのがいやだったのに、
なぜもっと早く一人暮らしを始めなかったんだろう。
今になって思う。
「女の子は実家暮らしして、親元からお嫁に行くべき」
という、親の価値観にしばられてたんだと。
親が子どもに言う「あなたのため」は、
〝親がイメージする子どもであるため〟
かもしれない。
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