公社準備書面(5) | ザ・住民訴訟

ザ・住民訴訟

正木 明人が想いのままに綴るブログです。

平成22年(行ウ)第40号  損害賠償請求行為請求事件

原告  正木明人

被告 福知山市長 松山正治                        

平成23年5月13日

京都地方裁所第3民事部合議CE4係 御中

原告 正木明人

原告準備書面(5)

第1,松山市長の関与

1、 歴代市長は自ら公有地拡大推進法の土地開発公社設立者であり(第10条1項2項)、理事、監事を任命し解任をする((第16条2項3項)等、組織を決定する権限を有するものである。

2、そのような強力な権限を有する市長は、第19条1項で市長の立場で土地開発公社に対して業務に関し必要な命令を下すことができると規定されている。

3,歴代市長は自らが理事長におさまり、権限を乱用し、他の理事、監事を監督するどころか、法律行為においては双方代理権を駆使をして権限を乱用し、公序良俗に反する行為(民法90条)を続けてきたのである(甲70号証)。

第2,平成21年度決算(甲69号証)の意味。

1,以上に述べたように平成21年度決算は、公社の理事長でもある市長の強力な関与によって作成、公表されたものである。

2, 同決算では設立以降36年間で市は公社から損害を被っていないとして、平成20年度以前を調べても意味はない(甲8号証)。さらに、損益計算書の特別利益計上に際しても、「過年度の損益訂正」という表現を用い過去の不正の一切に「臭いものに蓋をした」意味がある(甲69号証P5)。

3, 公社の粉飾の原資は公社が「適法な行為」によって得たものであるとした意味がある。

4, 過去における「粉飾総額」は、決算書で特別利益として処理をし、11億3,700万円が粉飾の全てであると総額を確定した意味を持っている(甲69号証P5)。

5、平成21年度決算書の資本の部では前期繰越準備金として5億801万円の記載の箇所では、「平成20年度までの利益合計」と記載をし、計画的に過去平成20年度以前の粉飾を、平成21年度の決算処理で幕引きを謀った意味を持つ(甲69号証P8)。

6,市長は、公社が市から得た利益は適正なものであるから、返還を要しないとし(甲2号証外)、市から見た公社への損害賠償請求権を放棄した意味を持ち、従来、「怠ってきた事実を、言い逃れできないよう自ら確定してしまった」意味を持つ。

第3,平成21年度決算処理において防災センター用地で市が公社に4億円を儲けさせ、従って市が4億円の損失を被る財務会計行為をした件では、公社決算処理では、特別利益11億3,700万円計上とは直接には関係はないが、事業利益として4億円を計上し、14億6,249万円の当期利益一部として準備金に繰り入れた(甲69号証P8)。 

第4,情報開示の状況その他

1, 公社問題は当初計画にあった事業がバブルの崩壊等で実施が不可能になり、先行取得をさせた事業用地を公社が抱えたままになっている。金利がかさんでくる。地価は下落している。売却をすれば巨額の損失が表面化してしまう。売るに売れない。

多くの自治体公社が抱えている現実である。

2, この現実に対して福知山市土地開発公社は想定外の対応をしていた。

設立後の早い時期から、市の先行取得依頼直後から、市が取得する予定の事業用地を第3者へ直接に売っていたのである。しかも利益は公社のものにしていた。バブルの時に土地を売って儲けたと言っているのはそのことである。他方で、損失を出したときは後で市が生じた損失を補填していた。この補填の際の行為のうち財務会計行為にかかるものが、住民訴訟の対象となるのである。

従って財務会計行為は構造的なものであり、単一の財務会計行為ではないのである。総額についても現在、未解明である。

ただいえることは、財務会計行為が11億3,700万円なのではない。仮に正確な数値だとしても、この数値は、ある行為によって生じた利益とある行為によって生じた損失の差し引きした結果の数値である。

何と何とによって生じた損失を差し引きしたかというと、市が公社に被らせた損失と市が公社に与えた利益の差し引きである。

市が公社に被らせた損失とは、市が再取得時期を遅らせることで公社に負担させている巨額の金利と第3者への売却によって生じた損失である。前者が仮に80億円あり、後者が仮に50億円あれば公社が被っている損失は合計130億円あることになる。

そうなると仮定すると、公社の平成21年度決算では準備金は20億円であるから長年にわたって市が違法な財務会計行為で補填した額が150億円ではないか。しかもこの数値は、市が補填した額である。どういう財務会計行為によって、その補填の原資が造られたのかは不明であるが,実態解明が必須である。

他方で簿価が82億円もある。全国の他の自治体の事例を見ると、見事なことにどの自治体でも、時価は簿価の半分になっている。公社の116筆の時価も恐らく、簿価の半分であるとすれば簿価時価の差は41億円となる。これがストックの損失である。130億円とあわせて合計171億円もの額が市が公社に被らせている損失である。税金を150億円注ぎ込んでも未だ20億円が債務超過であるかも知れない。

これが原告の仮説である。

3,なぜ、仮説にすぎないものを現段階で表現をしたかというと、住民訴訟の対象は、市が公社を設立して以降の市が公社に先行取得依頼した用地の全ての再取得行為にかかる財務会計行為及び、公社が市の委任を受けて先行取得をした事業用地を市が再取得をせずに、公社が第3者へ直接に売るという不法行為によって市が得るべき利益を失うことで公社から被った損害の賠償請求権の行使等、及び、公社が不当に得た利得に対し歴代市長が不当利得返還請求権の行使等というという財産権の管理を怠ってきた事実等である。

その意味で、主張をより明確にするために、今後の情報開示の方向性を明らかにするべきであるし、明らかになった事実を元に、主張と立証を構成していく意味があるのである。

4、平成22年12月10日以降の公社の情報開示によって明らかになっている事実は、市が公社から再取得をした用地の大半の元金と利息が市の取得時点で繰り上げ返済されていたという事実である。設立以降の公社の平均人件費は年間5,500万円程度である。この人件費をいくら節減できてもせいぜい500万円であろう。36年間で毎年500万円の利益が出てもたかだか1億8,000万円にしかならない。ところが20億円も儲けていた。この構造が問題なのである。原告の主張の力点はそこに置くことになる。

これまで隠蔽されてきた重要な事実が明らかになって来てはいるが、まだ平成20年度、21年度、22年度の3年間分だけである。平成17年度、18年度、19年度の情報開示は6月ということである。16年度以前の情報開示は未定である。

3,なお、今回、公社の1974年設立以降の決算書を整理した別表を添付する。利息は、表では71億3,500万円になっているが繰り上げ返済をしているから実際のところは分からない。

次回以降の準備書面では以上の主張を、具体的に述べることになる。